それが悪いか chapter13 | infection  ~YooSu~

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「さむっ」

 

 

ついこの間までは真夏の暑さだったのに、突然秋の陽気になり、陽が落ちると冬の足音が聞こえてくる。

ハヤトは両手で自分の腕を包みこむようにして擦った。

今回のツアーは事務所もかなり気合が入っていると見えて、ホテルがワンランクもツーランクも上だ。

部屋の外にはバルコニーが付いていて、リゾートホテルのようにテーブルとイスも置いてある。

そこに座ると波の音が聞こえた。

深夜、誰もいない海岸はまるでハヤトのためだけのプライベートビーチのようだ。

波音を聞きながら、部屋で寝息を立てているルイを思った。

このグループが結成される時に出会った俺達は、あっという間に友達になった。

夢も目標も同じ仲間はすぐに仲良くなれる。

その仲間の中でもルイは特別で、何故こんなに気が合うのかと不思議になるほどだった。

それが特別な想いだと気付くのに、それほど時間は掛からなかった。

ただその気持ちを伝えることだけはどうしても出来なかった。

心地良い関係をわざわざ壊す必要などない。

普通の仕事ならば、ルイの横に誰かが寄り添うのを警戒しなければならないだろう。

でも、有難いことに俺達はアイドルだ。

アイドルはファンあってのもの。

まだ成長過程の俺達には、恋愛沙汰はご法度だ。

だから安心していたが、人の心はコントロール不可能だ。

もしルイが誰かに恋したとして、それを心から追い出すことは出来ない。

ハヤト以外の誰かを想うルイを想像するだけで、嫉妬で胸が焼け付くようだ。

そんなハヤトの唯一の慰めが「春カップル」として振る舞うこと。

その時だけは、思わせぶりな態度がかえってファンサービスになる。

今はそれで心を押さえ付けている。

ルイを想う気持ちが暴走しないように。

 

 

「俺も不毛な恋をしてるな」

 

 

びゅうっと海風が頬を叩く。

ハヤトは寒さにまた腕を擦った。

 

 

続く