消えゆく世界 ~14~ | infection  ~YooSu~

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ビクッと震えるユチョンの手をなだめるように、ゆっくりと指を交差させる。

ピアノを奏でるために存在するかのような、長くすらりと伸びた指。

この指が奏でる音に、何度心を掻き乱されただろう。

ユチョンの歌声もそうだが、ピアノの音も深く心に入り込む。

多くの哀しみを体験したものの音。

どこまでも深く優しい音色を奏でる指先が、躊躇いつつも僕の手を包みこんだ。

 

 

「ユチョン」

 

 

「ん?」

 

 

「ごめんね」

 

 

「えっ?」

 

 

「僕、我儘ばかり言って」

 

 

「いいんだ。ジュンスが俺に我儘言ってくれるのは、特別って感じがするから」

 

 

「うん。特別だよ」

 

 

「えっ?」

 

 

「ユチョンは僕の特別なんだ」

 

 

どういう意図でそう言っているのか図りかねたように、ユチョンが黙り込む。

ここで真意を告げてしまったら、僕の日常は消える。

穏やかで安定したのどかな日々。

そこは失うもののない世界。

もしこの気持ちを告げたら、消える世界。

でも、新しい世界の幕が開くだろう。

僕はごくんと唾を飲み込むと、強くユチョンの手を握った。

 

 

「僕の好きな人だから」

 

 

カーテンの隙間から一筋の光が差した。

柔らかい月の光が部屋の隅に溜まった闇を払い、新しい世界への扉を開いた。

 

 

続く・・・