「ジュンス・・・冗談なんだろう?」
震える声が月の光を揺らすように響く。
まるでユチョンが歌うバラードのように、その光は柔らかく闇を包みこんだ。
新しい世界の幕開けは、劇的ではなく、静かに訪れる。
今までの世界も素晴らしい世界だった。
でも、これからの世界もきっと素晴らしいだろう。
だって、僕の側にはいつもユチョンが居る。
ユチョンと共にある日々は、驚きと発見と優しさに満ち溢れている。
僕がここで踏ん張れているのも、ユチョンが居てくれるからだ。
僕は横になっていた体を起こし、ユチョンを見下ろした。
月の光がユチョンの顔を照らす。
僕の大切な人。
僕のすべて。
僕の世界を作る人。
世界は自分の心で出来ている。
感じるものすべてを、自分が生み出している。
それならば、僕はユチョンと共に、この世界を愛で満たそう。
僕らには歌がある。
愛を伝える歌がある。
それは何かに立ち向かえる刃ではないかも知れない。
でも、いつでも心に光を灯す希望にはなり得るだろう。
ユチョンの告白が僕の世界を変えたように、苦しみや悲しみそのものを変えられなくても、月の光のように優しく心を包み込み、歌で闇に沈む世界を照らそう。
消えゆくのは、昨日までの自信のない自分。
何も出来ないと震えていた自分だ。
僕は出来る。
僕には出来る。
何故なら、僕には守りたい人が居るから。
ユチョンも体を起こし、僕と向かい合った。
僕達は微笑みあう。
言葉にしなくても伝わるものはある。
でも、言葉にすれば、それは世界を変える。
ユチョンの頬を両手で包む。
ほのかに温かいそれに、ゆっくりと近付いた。
「ユチョン、好きだよ」
僕の想いのすべてを込めて、ユチョンの唇に唇を重ねた。
消えゆく世界が目蓋の裏に走馬灯のように走り、僕は悲しみではない涙を流した。
ユチョンと開く新しい世界を、どんなことがあっても守り抜く覚悟と共に。
終わり