「立って」
「あっ、うん」
気分を害したんだろう。
咲也は突き詰めた顔をして、俺に立ち上がるよう促した。
「砂まみれだな」
立ち上がった俺の背中についた砂を優しく払うと、顎をしゃくった。
「ついてきて」
「どこに?」
「いいから来る」
先に歩き出した咲也を慌てて追い掛ける。
追い付き並ぶと、咲也の顔を盗み見た。
涼しげな瞳で真っ直ぐ前を向いて歩いていく。
でもその涼しさとは別に、瞳の中に決意の光が垣間見えた。
足元が不安定な砂の上から、固いコンクリートの感触に変わって数分、今度はふかふかした感触に変わった。
毛足の長い絨毯が引かれたエントランスは、開放感溢れる全面ガラス張りだった。
海岸沿いに建つ瀟洒なホテルは、明るさに満ち満ちて俺達を迎えた。
「咲也、あの・・・」
「ここで待ってて」
咲也は手振りで俺を制すると、一直線にフロントへ進み、しばらくしてから戻ってくると俺の手にカードキーを押し付けた。
続く・・・