君の名前を呼びたくて ~34~ | infection  ~YooSu~

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「立って」

 

 

「あっ、うん」

 

 

気分を害したんだろう。

咲也は突き詰めた顔をして、俺に立ち上がるよう促した。

 

 

「砂まみれだな」

 

 

立ち上がった俺の背中についた砂を優しく払うと、顎をしゃくった。

 

 

「ついてきて」

 

 

「どこに?」

 

 

「いいから来る」

 

 

先に歩き出した咲也を慌てて追い掛ける。

追い付き並ぶと、咲也の顔を盗み見た。

涼しげな瞳で真っ直ぐ前を向いて歩いていく。

でもその涼しさとは別に、瞳の中に決意の光が垣間見えた。

足元が不安定な砂の上から、固いコンクリートの感触に変わって数分、今度はふかふかした感触に変わった。

毛足の長い絨毯が引かれたエントランスは、開放感溢れる全面ガラス張りだった。

海岸沿いに建つ瀟洒なホテルは、明るさに満ち満ちて俺達を迎えた。

 

 

「咲也、あの・・・」

 

 

「ここで待ってて」

 

 

咲也は手振りで俺を制すると、一直線にフロントへ進み、しばらくしてから戻ってくると俺の手にカードキーを押し付けた。

 

 

続く・・・