彼の柔らかい髪に顔を埋め、深呼吸した。
花のような芳しい香りが鼻孔をくすぐり、心が揺らぎそうになる前に言葉を紡いだ。
「ありがとう。今はその言葉だけで十分だよ。きっとまだ早いんだ。頑張ってやるってことでも無いと思うし、そのうち自然にそうなれると思うから。だから、今はもう少しこうしていてくれる?」
彼はほっと息を吐くと、僕の腰に手を回し抱き付いた。
「本当にいいの?」
「うん。今はね」
僕の胸の中でくすっと彼が笑う。
生温かい息が欲望を煽りそうになるが、その欲さえも今は心地良い。
「いつかさ、いつか、絶対しようね」
「やだって言われてもやっちゃうよ」
くすくすと笑う彼の揺れる髪にキスをすると、彼が顔を上げて微笑む。
ああ、好きだ。
彼の全てが。
この世界の中で、君に出会えた奇跡を思うと、胸が苦しくなる。
誰でもいい。
世界中の人に伝えたい。
愛しい存在こそが、自分を強くしてくれる。
これからも辛いこと、苦しいことがたくさんあるだろう。
でも、僕は誓う。
この切ないほど愛しい想いがある限り、必ず乗り越えて見せると。
「キス、してもいい?」
こくんと頷いた彼の潤んだ唇に、未来への希望を乗せて、自分のそれをそっと重ねた。
終わり
皆様。
「切ないほど愛しい」終了でございます。
単発で終わるはずだったこの小説に、長々とお付き合い頂きましてありがとうございましたm(__)m
10年以上ブログを続けているじゅんじゅんとしても、初の誰と誰と言う設定なしのBLを書かせて頂きました。
皆様の好きなカップルを想定して読んで頂けるように、あえて名前も付けないまま書きましたが、これが相当に難しかった(^▽^;)
名前があるって大切なんだと改めて思いました。
この話の中の彼らに、ぜひあなたが名前を付けてあげて下さい。
そうすればきっと彼らは命を持って動き出してくれるでしょう。
コロナ禍でライブなどの楽しみが制限される中、色々な方達が精一杯楽しませようと頑張ってくれています。
そんな方達の頑張りがきっと未来を拓くと、そう思って最後を締めくくらせて頂きます。
最近、こんなに続けて小説を上げたことがなかったじゅんじゅんも、まだ自分には余力が残っていると思いました。
同じような話ばかりかも知れませんが、少しでも皆様の笑顔の支えになれれば幸いです(・∀・)
どうか、これからもこのじゅんじゅんブログをよろしくお願い致します。
感謝を込めて
じゅんじゅん