「あの・・・」
飲み込んだ言葉は、そのまま胸を苦しめる。
何度も言う機会はあった。
でも、いつも誤魔化す僕。
今日こそはと、口を開いたのに。
もじもじとする僕を、君は厭きれて見ているだろう。
本当に伝えたい言葉ではないが、君とどこかに隠れたい。
あの頃のように二人で夜通し語り明かすんだ。
煌めく夏の日。
海風とまばゆい光。
何もかもが輝いていた。
心に芽生えた想いに気付かない振りをしながら、君と肩を組んで歩いた。
時は永遠と思い込んでいたんだ。
一緒に遠くに行くと約束してくれた彼は、まだ姿を現さない。
僕の想いが叶わなくても、君との絆は揺るぎないものだと信じていたのに。
あの約束は幻だったのか。
僕の想いが見せた真夏の夢だったのか。
海面を躍る光の束に目を細めた。
彼は来た。
そして僕が想いを伝える前に言った。
その言葉が、青い水面を光らせた。
僕の瞳に君の姿を焼き付けるように。
「好きだよ」
ずっと、ずっとね。



