眩しいというよりも、目を貫くような日差しで目覚めた。
「9時か・・・」
壁に掛けられた時計を見て呟くと、上半身を起こした。
「寒い」
一糸まとわぬ体に、即座に冷気がまとわりつく。
日差しは強いのに、気温は低い。
久しぶりの逢瀬に、いつもより燃え上がった体を包み込むものを探して、ベッド脇の床へと視線を彷徨わせた。
だが昨夜、荒々しく剥ぎ取られ、床に散乱した服は、まるでプレスされたようにきちんとたたまれ、椅子の座面に置いてある。
彼は几帳面だ。
あんなに我を忘れて求め合ったことを忘れたかのように、整然と片付けられた服を求めて、体を震わせながらベッドから這い出た。
愛し合った後が残る体を、午前9時の光が滑る。
自分の体を美しいと思ったことはないが、彼に愛された後の体はどこか淫靡で妖しい美しさを醸し出す。
恋をすると綺麗になる。
その言葉を朝の光の中で実感した。
「いい眺め」
低く甘い声に振り向くと、彼がマグカップを手に立っていた。
全裸の体を隠しもせず、まっすぐに彼に向き合った。
「ねえ、喉乾いた」
彼以外の誰にも聞かせたことのない猫なで声で言うと、彼はくしゃっと顔を崩し、僕に近付く。
「飲ませてあげる」
マグカップを傾け、液体を口中に留めると、それを口移しで与えられた。
冷たくもなく熱くもない液体が喉を潤す。
それはまるで媚薬のように、僕の体に火を点けた。
「ねえ、もっと熱いの飲ませて」
手を引いてベットへと誘うと、彼は無我夢中で僕を愛し始める。
午前9時。
恋人達の熱を祝福するように、日差しが更にその熱を強めた。
Fin.
久しぶりの表小説。
コロナでお疲れの皆様へのプレゼント。
ちょっと息抜きして頂けたら幸いです(・∀・)