「いい曲だな」
リーダー格の兄が、箸を止めてドアを振り返った。
ピアノ室から溢れでたメロディーは、廊下を流れ、ダイニングテーブルを囲む家族の元へやってきた。
すうっと心に染み入るようなバラードは、彼の優しさを表しているようだ。
胸に込み上げるものがあって、目から溢れ出そうになるものを、慌ててまばたきで誤魔化した。
「あっ、俺、何か駄目」
しかし、僕より先に、さっきは僕の涙を心配した、料理上手な兄の涙腺が崩壊した。
「あいつ・・・切なっ」
ポロポロとこぼれ落ちる涙は、象牙のような滑らかな肌を滑り落ち、テーブルに小さな水溜まりを作った。
リーダー格の兄が、その兄を心底愛しそうに見つめ、優しく頭を撫でた。
「君達は感性が似ているから、曲を聞くだけで、秘められた想いが伝わるんだろうな」
頭を撫でられて、余計に気持ちが動いたのだろう。
頭を撫でて貰いながら、その肩に頭を預けた。
「うん、俺が君に片思いしてた時の切ない気持ちみたい」
「俺も切なく君を思っていたよ」
二人が見つめあい、二人だけの世界に浸ると、冷静な末っ子がフンッと鼻を鳴らして、食べ掛けのチキンにガブリと噛み付いた。
流れ来る曲は更に切なさを増し、僕はこっそり涙を拭った。
To be continued.....
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「亀が桃を思う時」←台無し