丸く切り取られた景色に、ユチョンが写っていた。
運転席の窓を開けて、空を見上げている。
小走りに駆けより、助手席のドアを開けた。
「ただいま」
頭を突っ込むようにして言うと、ユチョンは穏やかに微笑んだ。
「お帰り」
胸がきゅんっと切なく鳴る。
久しぶりに会ったユチョンは、相変わらずの甘い声だ。
緊張を気取られないように、素早く助手席に滑り込んだ。
「何見てたの？」
「君を」
ユチョンはカーブミラーを指差した。
「当たり前だけど、ジュンスだって思って見惚れてた」
閉じられた空間は静かで、胸の鼓動まで聞こえそうだ。
僕らはカーブミラー越しにお互いを見ていた。
まるでこの数年間を象徴するようだ。
膨らんだ鏡面のおかげで、実体が歪んで見える。
実際に会えば手に取るように分かる君のことが、遠くに感じられることもあった。
でも、もう大丈夫。
「会いたかった」
ユチョンの顔が近付いて、唇にあの温かさが蘇った。
今、僕らの間から歪んだ世界は消えた。
