「はあ・・・」
ああ、うっとおしい。
「まだ・・・だよな・・・」
知るかそんなこと。
「我慢しなくちゃ」
いちいち口にするなよ。
「でも・・・たまらないんだよ」
だから何だって言うんだ。
「愛してるんだ・・・愛してる・・・」
「やかましい!」
読んでいた本をばんっと音を立てて閉じた。
「こんなところで告白するな!」
きっと睨み返すと、ユチョンは泣きそうな目で僕を見た。
「だっ、だって・・・好きなんだよ。好きで好きで好きで、どうにかなりそうなんだよ」
「さっさと部屋に帰れ」
「何でそんなに冷たいんだよ」
「うるさいからに決まってるでしょう。とっとと部屋に戻って押し倒せばいいじゃないですか」
「そんな、相手は天使なんだぜ。そう簡単にはいかないよ。ああ・・・天使なんだよな。あの天使の微笑で俺をこんなに苦しめるんだ。好きだ、好きだよ、ジュンス・・・」
ユチョンは、さっきから告白を繰り返しているジュンスの写真を胸に抱き締めて、目をうるうると潤ませた。
ああ、本当にうっとおしい。
そうだ、兄達に押し付けよう。
「僕よりもユノとジェジュンに相談すればいいじゃないですか。先輩なんだから」
「さっき部屋を覗いたら『ゆのぉ~♪俺を食べなきゃいたずらしちゃうぞ♪』って盛り上がってた」
僕は頭を抱えて大きな溜息を吐いた。
そういえば一週間くらい前に、ジェジュンがハロウィンにはどうやってユノを誘えばいいかって騒いでたから、ついこんな馬鹿なこと言わないよなと思いつつ俺様が知恵を授けてしまったんだ。
んっ、待てよ。
確かあの時ジュンスも・・・。
「ユチョン、俺様の忠告の通りに出来ると言うなら、必ず上手くいく名案を授けて差し上げましょう」
「やる。絶対やる。教えて」
深刻な表情で顔を上げたユチョンに、僕は片方の口の端だけあげてにやりと微笑んだ。
「簡単です。今すぐ部屋に戻ってジュンスにこう聞きなさい。ハロウィンには何を食べたらいいって」
「何だよ、それ。愛の言葉でも何でもないじゃないか」
「別に言わなくてもいいんですがね。さあ、ここまでです。とにかく出て行って下さい。世間ではハロウィンかも知れませんが、僕にとってはイブニングスター記念日なんです」
「何だ、それ」
「僕の愛するものと過ごす記念日です。ほら、さっさと出て行く。俺様のいいつけを守れば絶対上手くいきますから」
僕はユチョンを邪険に部屋の外に追い出すと、鍵を掛け、この記念日の為にかねてより用意していた綺麗にラッピングされた大きな袋を机に乗せた。
「やっと祝えるね。愛してるよ」
僕は待ち焦がれたそれを、びりびりと破いた。
「チャンミンの奴、もし上手くいかなかったら覚えてろよ」
俺はぶつぶつ言いながら、やっと部屋に戻った。
ジュンスがさっきシャワーを浴びに行ったのは知っている。
今頃ほかほかの体で・・・。
「息子よ、早過ぎる」
思い描くだけで元気になる息子を諌めると、覚悟を決めてドアを開けた。
「ユチョン、どこにいたの?」
薄紫のシフォンのパジャマに身を包んだジュンスが振り向いて走り寄ってくる。
かっ、可愛い。
どうしよう。
ええい、ままよ。
「ジュンス、今夜はハロウィンだね。俺は何を食べたらいいの?」
「あっ・・・」
ぽっと頬を染めたジュンスが、上目遣いに俺を見て信じられない言葉を呟いた。
「ぼ・・・僕を・・・食べて、ユチョン・・・」
「ああ・・・一年後だね」
僕は少しだけ切ない気持ちで呟いた。
机の上には食べ散らかしたお菓子の包装紙が山になっている。
そう、イブニングスター記念日とは、制限せずにお菓子を食べる日のことだ。
10月31日ハロウィンの日の誕生花、イブニングスター。
別名、紫千振(むらさきせんぶり)。
センブリは胃薬として有名だか、実は薬効はなく、その苦味が舌を刺激して食欲増進に寄与すると言われている。
そう、俺様の食欲記念日ってことだ。
机の上の包装紙をゴミ箱に放り込むと、窓辺に立って夜空を見上げた。
ハロウィンの夜は、街中のお祭り騒ぎとは正反対のように密やかな睦言が聞こえてくるほど静かだ。
戻ってこないところを見ると、ユチョンも首尾よくいったらしい。
一週間前、騒ぐジェジュンに俺様が冗談のような知恵を授けている横で、ジュンスがぼそぼそと呟いた。
『僕も食べられたいな』
食べてって言えばいいじゃないですかと言う僕に、何かきっかけがないと言えないよと顔を真っ赤にしていたジュンス。
これは時間が掛かるなと思っていたが、ユチョンが俺様の大切な記念日を邪魔したせいで、ジュンスの望みまで叶えてしまった。
「やはり今日は俺様の為の記念日だ。俺様の力でこの世はすべてよし!」
今日がハロウィンだって?
違う。
今日は10月31日。
天才の日だ!
Fin.
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
皆!
「ハッピーユス菌ハロウィン
」
突然思いついて書いたので、どうも細部がいまいちですが、まあそれもハロウィンのおばけにたぶらかされたと言うことにして、適当に楽しんで下さいな(^ε^)♪←だって数時間で書いたんだもん
実は昨夜、愛しのくまちゃんから電話を頂きまして、
「じゅんじゅんさ~ん、クリスマス短編小説が読みたーい」
と可愛くお願いされまして、そういえばハロウィン小説も前に書いたなと思い出して急遽書いてみた次第です(;´▽`A``
最近、短編を書いてなかったので、ちょっとリハビリも兼ねてハロウィンに書こうと思ったのはいいのですが、
と、検索開始←これがいかん
すると、10月31日の誕生花がイブニングスターと呼ばれる紫千振だと言うことが分かりました。
しかも千振に薬効はなく、その名の由来、千回振り出しても苦いと言われる苦味が舌を刺激して食欲増進には効果があるのではないかと言うことが分かり、
と、チャンミン語りで書いてみようと思い立ち、こんな話が出来ました(^∇^)あはははは
イブニングスターの花言葉は「すべてよし」
ハロウィンでも、イブニングスター記念日でも、天才の日でも、
天才の日とは自分の中のユス菌に気付き、誇り高いユス病患者であることを再確認する日よーヽ(゜▽、゜)ノ←ユス菌は天才




