「はあ~」
あれからジュンスが気になって、普通に接するのさえ緊張する。
あんな夢を見たばっかりに、自分でも分かってしまうほどよそよそしく振舞ってしまう。
ジュンスはあいかわらず普通に接してくる。
「ゲームしよう」とか「遊びに行こう」と声を掛けられるたびに、わざとらしく用事がある振りをした。
なるべくジュンスの近くに行かないようにしている。
そんなことしても何の解決にもならないのに。
避けているくせに、視線はいつもジュンスを追っている。
冗談だろ、ユチョン?
俺が好き?
あのお子様を?
そんな不自然な態度が続いたある日、ジュンスがまた「ユチョン、ゲームしよう」と声を掛けてきた。
俺が言葉を濁して、その場から逃げようとするとジュンスが俺の前に立ちはだかった。
「ユチョン・・・僕、何かした?」
ああ、したさ。
無断で人の心に入り込んで全て占拠してしまった。
君に四六時中苦しめられているよ。
俺に「恋」という病をくれて。
恋?
俺・・・・・ジュンスに恋してる!
何も言わず立ち尽くす俺に、淋しそうな顔をするジュンス。
「ユチョン、言ってくれないと分からないよ。僕、悪い事したなら謝るから。だから・・・こんな・・・ユチョンに避けられてるのっていやだよ」
「避けてなんか・・・」
「避けてるよ!」
「ジュンス・・・」
「何で?僕のこと嫌いなの?」
「そんなことない」
「じゃあ、何で?」
まっすぐに俺の目を見て問い詰めるジュンス。
”君が好きだからだ。恋してるんだ、ジュンス。君に。”
伝えられない思いを飲み込むしかない俺。
「もういい!ユチョンは僕と話したくないんだ」
くるりと踵を返すジュンスの腕を掴んで抱き寄せる。
ジュンスの匂いが胸一杯に広がる。
「ユチョン?」
”好きだ、ジュンス!好きなんだ!”
心が叫んでいる。
「ごめん」
「ユチョン?」
「ごめん、ジュンス」
「何があったの?ユチョン」
「何も」
「嘘。ユチョンは何もなくて僕を避けるの?」
「避けてない」
避けてないよ、ジュンス。
ただ側に居ると苦しいんだ。
ジュンスの体をそっと離す。
そして精一杯のおどけた表情を作る。
「ごめんごめん。ジェジュンと賭けてたんだ。ジュンスの誘いを断り続けたら何時ジュンスが怒りだすかってね」
ジュンスが目をしばたたかせる。
「俺は怒らないって賭けたんだけど・・・・怒っちゃったね」
ジュンスがぷーっと頬を膨らませる。
「もうー、心配したんだからね。でも、良かった・・・ただの賭けごとだったんだ。じゃあ、もう賭けは終わりだね」
やっぱり、怒らないんだジュンス。
「うん。もう終わり」
「じゃあ、もう僕のこと避けたりしない?」
「しないよ」
「良かったー。ユチョンに避けられるのって辛かったんだからね」
にっこり微笑むジュンス。
俺は君のその笑顔が好きだ。
もう、その笑顔を失くすようなことはしないよ。
どんなに苦しくても、どんなに切なくても、君の笑顔の側に居られるなら。
「ユチョン、ゲームしよっ♪」
俺の手を引いていく君。
この手が永遠に繋がればいいのに。
そうしたら言葉にできない俺の気持ちが伝わるかも。
いつか。
伝わるならば・・・・・。
「ジュンス、好きだよ」
「うん、僕もユチョン好きー」
今はその言葉だけで十分だ。
そうだろ、ユチョン?
ジュンスを感じられる距離に居られるだけで。
それだけで・・・・・。
なぁ、ユチョン。
終。
戀(こい)・・・旧字体。恋の意。糸(愛しい)糸(愛しい)と言う心と書きます。