いつから・・・・
たぶん出会った瞬間から。
俺がユノに初めて会った時、てっきり年上だと思っていた。
女姉妹の間で育った俺は、男らしいユノに一目で憧れた。
1年間ほど気付かず、年上として話していた俺がユノが同じ年だと知った時、驚きよりも喜びが先に来た。
友達として付き合える。憧れのユノと気軽に話せる。
それまでも仲が良かったけど、益々ユノに傾倒していく俺。
その気持ちが恋だと気付いた時、俺は逆にユノから離れようとした。
俺達はデビューしていて、ユノはリーダーとしてグループをまとめるのに必死だった。
マンネのチャンミンは天使のように純粋で俺達が守ってあげなくてはいけなかったし、アメリカからやってきたユチョンは、どこか不安定で危なっかしく目が離せなかった。
ジュンスは明るく振舞っていたが、終わらない変声期に悩んでいた。
やっと叶った夢。
仕事では気持ちを隠して振舞わなければならない。
馴れない仕事の連続と緊張。
俺自身の悩み。
ユノに頼りたい、ユノを独占したいという気持ちが沸き上がるのを抑える事が出来なかった。
ユノが大変だってことは分かっている。
俺がサポートしなければいけないことも。
分かってはいるが、寂しくて、俺を見て欲しくて・・・。
連日連夜、遊びまわっていた。
夜中に帰る俺を心配そうに待っているユノに、俺のことを気にかけてくれているという喜びを感じていた。
何を言われても、夜遊びを止めない俺に、ユノはいつも悲しそうに微笑む。
そんなある日、ユノと喧嘩した。
真夜中に帰ってきた俺を、やっぱりいつものように待っていたユノ。
俺が黙って通り過ぎようとすると、軽く腕を掴まれた。
「ジェジュン、話がある」
「離せよ、痛いだろ。説教なら聞きたくない!」
「ジェジュン・・・何故・・・」
突然、ユノが俺を抱きしめた。強く。
ユノの匂いが俺を包む。
この気持ちに気付くまでは無邪気にしがみ付いていたユノの腕。
その腕の中にすっぽりと包まれている。
「ジェジュン。頼む、悩みがあるなら言ってくれ。俺達、親友だろ?」
その言葉に頭に血が上る。
友達。親友。
俺とユノはその関係でしかない。
ユノの腕を振りほどく。
「ほっといてくれよ!」
言い放った俺にユノが切ない顔で問う。
「ジェジュン・・俺じゃだめなのか」
ユノがいい!ユノしかいらない!
喉元まで出かかった想いを飲み込む。
「もう俺にかまうな」
言い放つ俺を、どうしてそんな傷付いた顔で見るんだよ。
傷付いてるのは俺の方だ。
この想いが叶わない事を、ユノの言葉ひとつひとつから思い知らされる。
俺はそのままユノに背を向けて、リビングを後にした。
ユノの目に光るものがあったことなど気付かずに・・・。
部屋に戻るとベットに倒れこむ。
”痛い。痛いよユノ。心が叫んでる、ユノが好きだって”
何をしても、ユノからいくら離れようとしても、この想いは絶えず俺を捕えて離さない。
「ふっ・・・くっ・・・」
声を殺して泣く俺の頭をそっと撫でる手があった。
「ジェジュン・・・・・ユノの事・・・好きなんだろ?」
ユチョンはそう言って俺の頭をゆっくり撫でる。
「俺、何もしてあげられなくて・・・でも、気持ちは分かるから」
ユチョンには必ず彼女がいた。
ただいつも長続きしたためしがない。
「寂しがり屋だから」
前にそう言っていた。
それだけ?お前はまだ気付いていないの?俺と同じようにある人を見つめていることに。
「ジェジュン、もう自分を傷つけないで・・・見ててつらいよ」
ユチョンの言葉に堪えていたものが溢れ出す。
「俺達、家族だろ?ユノが言ってた。ジェジュンがいるから安心して頑張れるって。自分に足りないところは必ずジェジュンが補ってくれるからって。それってすごいことだよね。信頼ってそう簡単に手に入るものじゃないよ」
ユチョンは俺が泣き止むまで側にいてくれた。
不安定で危なっかしいとばかり思っていたユチョンと、よく話すようになったのはそれからだった。
俺は自分の気持ちを素直に話せる相手が出来たせいか、大分落ち着いて夜遊びも止めた。
ユチョンと話すのは他愛ない話だったが、俺が辛くなると黙って話を聞いてくれた。
ユチョンがたまにある人をじっと見つめている事に気付いてはいたが、俺は気付かないふりをしていた。
ユチョン自身、まだそれがなんなのか分かっていないようだったから。
俺が問いかけることで、ユチョンがそれに気付き俺と同じ想いを味わうくらいなら・・・気付かないほうがいい。
そう思っていた。
そのうち、ある人の方もユチョンを特別な目で見ている事に気付くまでは。
そんな日々で、ユノはすっかり俺が元に戻ったと思ったらしく、普通に親友として接してくる。
俺も親友として付き合った。
心を隠して・・・。
でも、そんな日々は長く続かない。
やはりつらい想いに押し潰されそうになった俺は、また夜遊びを始めた。
ユチョンはそんな俺を苦しそうに見つめていた。
この頃、ユチョンもある人への想いがただの友情じゃないことに気付いたようで、俺の行動を自分の気持ちに重ね合わせて理解してくれていたようだった。
また、ユノが俺を待つ日々が始まった。
解決したと思っていたばっかりに、今回の方がよりユノを苦しめていたようだった。
ユチョンが、俺が帰るまでリビングで1人悩むユノを見かけて、どうしたらいいか分からないとつぶやく。
俺達はまるで出口の見えない迷路を歩いている気分だった。
自分でもどうしたらいいのか分からず、心配そうに見守る弟達に申し訳なく、何より最愛の人を苦しめていることに心が引き裂かれそうだった。
そしてついにその日が来た。
俺がやはり朝帰りした時、一睡もせず待っていたユノに激しく叱責された。
どうしていいか分からず、売り言葉に買い言葉的に俺は叫んでいた。
「ユノが好き。好きなんだよぉ・・・」
その日、俺達は結ばれた。
ロマンチックとはかけ離れた告白ではあったけれど、
ドラマチックではあった・・・な。
と、そんなことを思い出していたのは、さっきたまたま見たファンサイトのせいだった。
今、リビングでは弟組がゲームに勤しんでいる。
ユチョンは、やっとある人に心を告げて、想いが叶って今は片時も側から離れない。
チャンミンは、そんな2人を見ていつも「うっとうしい」と文句を言っている。
あの後もいろんな試練が俺達家族を襲ったけれど、そのたびに俺達の絆は強くなった。
今では誰にも負けないっていう自負さえある。
その絆を守ってきたのは5人全員の力だけど、ユノがいなかったらっていつも思う。
ユノがいなかったら、俺はここまで頑張れただろうか?
「あーもう、うっとうしい!ユチョン!!いいかげんジュンスから離れて下さい。ゲームに集中できません!」
「えー、やだよー。ここが俺の居場所だもん」
チャンミンはジュンスを見て苦々しげに言う。
「ジュンスからも言って下さいよ!そんなに巻きつかれたらゲームの邪魔だって」
「チャンミン、僕に勝てないからって、ユチョンに当たらないでよ」
「当たってません!!!」
くすっ。
あの天使のようなマンネが今ではこの家族一の権力者だ。
「おっ皆、楽しそうだな」
ユノがテーブルをはさんで俺の向かい側に座る。
「ユノ、コーヒー飲む?」
「うん、ありがとう」
コーヒーのいい香りが2人を包む。
ああ、なんか幸せ。
「ねぇ、ユノ知ってる?」
「んっ?」
「ファンサイトに俺達の事、夫婦って書いてあった」
ユノがにっこり笑う。
「ファンも知ってんじゃないの?」
「何を?」
「俺にはジェジュンが必要だって事」
ユノ。
俺、信じるよ。
ユノの言葉だけを。
周りからどう見られても、どう言われても、もういい。
真実は俺達の中にあるから。
Fin