鳴らない電話



夫がいつも握り締めて話さなかったスマートフォン。あれは、会社の社用スマホだった。



だとすると、私がいつも電話していた電話番号。



そう、夫の私用の携帯はどこに?。



そのことに気がついた私は、夫の部屋から出てきた端末全てを充電してみて、夫に電話をする。



6月に夫が亡くなって以来、はじめて発信する夫の名前の電話帳。



なぜだか、すごくドキドキする。

不思議。



『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません。』



何度やっても、繋がる端末がない。



結局夫に繋がることはなく、

夫の携帯が見つかることはなかった。



夫の死後、夫が残した謎が多すぎて、

そして、難しすぎて、残された私たちは、日々驚くことばかり。