今邑彩 | Flog

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Frogの研究者の息抜きblog

--- since 01-06-07 ---

クリスマスから年末に掛けて、結構、本を読んだので、例によって、イキナリ書評(笑)。

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今邑 彩の『ルームメイト』。97年に先ずノベルス版で出版され、06年に文庫版で出版されたものが本書である。

「モノローグ1」、「第一部」、「モノローグ2」、「第二部」、「モノローグ3」、「第三部」と続いて行く。面白いのが、文庫版の『あとがき』が、「第三部」の後に挿み込まれ、ノべルズ版ではこの後に続いている「モノローグ4」を、文庫版の読者が読むか読まないかを、読者の裁量に任せる為の解説がある(が、明らかに、蛇足である)。

ノベルズ版から10年近い歳月を経ての文庫版、それを更に刊行後4年経ってから読んでいるので、作品中の記述が古臭くなっている場面が、結構、眼に付く。

例えば、作者自身が『あとがき』の中で触れているのが『パソコン通信』。他にも例を挙げれば、作中で携帯電話が使われている一方で喫茶店の中に『ピンクの公衆電話』が未だに登場し、それが連絡の手段に使われていたり。

恐らく、本作が書かれた当初は、最先端の流行が取り入れられた作品だったに違いないのだが、13-4年経った今では、何か時代遅れの記述が眼に付いてしまう。

だが、しかし、高が13-4年前なのである。逆に云えば、(私には)そう云う点が眼に付いてしまうと云うことは、本作が(発表当時は)そこそこ『読める』作品ではあったが、時と云う風雪に耐え得る深みがない(テーマも含めて、その当時の流行を取り入れただけの)表面的な作品だったのではないか?

ネタバレを承知で書けば、本作のキーワード、テーマは多重人格である。作品中にもしばしば登場する『24人のビリー・ミリガン ある多重人格者の記録』が最初に出版されたのは92年であり、作者がこれにインスパイアされて本作に繋がったのだろうと推測される。

登場人物が、何故、多重人格になってしまったのか、本来はそれ自体でひとつの作品になり得るぐらいのテーマであるはずなのに、辻褄合わせの表面的な記述に終わってしまっている。

読み物としては、ソコソコに、面白く読めない訳ではないが、全てが万事、この調子で、ミステリィとして、読者を如何に欺くかの叙述トリックに腐心のあまり、全てが表面的であり、物語を華やかにすべく道具として、当時の最先端の流行を取り入れているのも、裏を返せばそれだけの意味しかなく(尤も、トリックの一部に使われており、その意味では必須なのであるが)、時間が経てば、只古臭いだけである。

最も理解不能なのが、作者自身が「過去の遺物」と云い乍ら、『「パソコン通信って何?」と思う人は、お父さんかお母さんに聞くか、テキトーに読み飛ばしてくれていいです。』と云い切る態度である。作家としての良心があれば、文庫化にあたって、加筆訂正してその時代に合うべく努力すべきであろう。物語は、『現代の話』として書かれているのだから。

本作は、まさに、時間潰しに『テキトーに読み飛ば』すのには、ちょうど良いかもしれないが、それ以上を期待してはいけないし、繰り返し読むことはないであろう。

或いは、若しかすると、あと30年も経ち古典となってしまえば、気にならず読める作品に変わっているのかもしれないが。

Fri, Jan 07


  • 20:33  ぅ~ん、また、郵便事情が不便にならなければ良いが・・・・。 http://bit.ly/hTWrwX

  • 17:01  Now second DD donut, that's baaaadddd.....but yummmmmy (lol).

  • 15:04  久々のbrioche & coffee ちう

  • 03:28  久々に書くけど、相変わらずの中途覚醒中。