謬説? | Flog

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Frogの研究者の息抜きblog

--- since 01-06-07 ---

先日のasahi.comに『国内在来種、初の発症例 カエル・ツボカビ症』 (cacheはこちら )と云う記事が出ていたが、正直、何かなぁ、って感じ。大騒ぎし過ぎなんじゃなぃ?

では、ちょっと真面目に。

以下は、私が伝え聞いた、上述の記事中の研究会で発表されたdata:

1)日本各地から野生のカエルから採集した523サンプルのスワブにツボカビが7%の率(解析中の値)で検出された。スワブの検出感度が低いことを考える と実際は数倍の感染率と考えられる。rRNA遺伝子のスペーサー領域(変異率が高い領域)の塩基配列からタイプAからEに分類された。まだ例数は少ない が、アフリカツメガエルはタイプCが、沖縄のカエルはタイプA、C、Dが、ウシガエルはタイプEが、とカエルごとに違うタイプのカエルツボカビが感染して いる可能性が示された。

つまり、『ツボカビの感染源とされているアフリカツメガエル』とタイプの違うツボカビが、国内のカエルに感染している可能性を示唆している。このdataを素直に解釈すると、日本国内で見付かっているツボカビの感染源は、(必ずしも)アフリカツメガエルではない、と云うこと。

2)麻布大学の感染実験では、ツボカビに感染して発症しているベルツノカエルとパジェットカエルの飼育水(ツボカビ飼育水)で日本のヌマガエルとコガタハ ナサキガエル等を飼育した。予備実験で、飼育水を頻繁に替えると発症しているベルツノカエルも症状が軽減する(場合によっては治癒する)ことより、また感 染効率を上げるためツボカビ飼育水は1週間替えずに飼育した。その結果、感染群で16匹が死亡、対照群は8匹死亡。感染群で死亡したカエルは前日まで元気 であり、ツボカビ症状は現れていなかったが、皮膚の切片観察でにツボカビが検出されたことから急性発症と考えている。 しかし飼育水を頻繁に替えると症状 が緩和する事実も含め、ツボカビの高感染性と高死亡率は確認できず、従ってパナマでの2ヶ月間で起きたカエルの大量絶滅の結果と合致しなかった。

つまり、『 飼育水を頻繁に替えると』と云う通常の飼育をする限りに於いては、ツボカビに感染して『発症している』カエルですら、『 症状が軽減する(場合によっては治癒する)』訳だ。 これを、わざわざ、『 飼育水は1週間替えずに飼育した』結果、漸く対照群の(わずか)2倍の死亡率が見られた(私が得た情報では、飼育総数が判らないので、そもそもの死亡率の 絶対数が不明)に過ぎず、結局、『ツボカビの高感染性と高死亡率は確認でき』なかった訳だ。そもそも、『 飼育水は1週間替えずに飼育』するなどと云う状況は、動物虐待以外の何物でもなく、何にも感染していなくても、死ぬ確率は可成り高いんじゃないだろうか。ツボカビに感染して死んだと結論するには、余りにも杜撰な実験のように思う。


どうやら、アフリカツメガエルの人為的放散に伴って南アフリカから世界にツボカビが広がり、そのカエルツボカビは両生類に対して高感染性で高死亡率であ る、と云う説が、日本の(因にアメリカで、このような話は聞いたことがない) 世の中の一部に、広まりつつあるようである。しかし、現時点では、科学的根拠に余りにも乏しい謬説であり、それを権威ある新聞社が流布させ、いたずらに世の中の不安を煽るのは如何なものかと。もちろん、そう云う可能性を100%否定出来ないというのも、科学的に正しい判断であり、それを見極めるべく基礎研究を進めることは必要であろうし、注意を怠るべきではないのは、当然である。

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