追記:獲得賞金基準(下の表)が降級ありの世代を多数含んでいたため修正しました。
はじめに
私は、一口馬主は利益を上げるためにやるものではなく、あくまで趣味として楽しむものだと思っています。
しかし、この趣味はとってもお金がかかります。
そのため、無限にお金がある人はともかく、我々庶民は、この趣味を続けていくためにも収支に向き合う必要があります。
しかし、一口馬主の収支は、単に馬代金だけでなく、維持費や保険料がかかってくること、獲得賞金は厩舎、牧場、騎手に分配され、さらに源泉徴収、クラブの取り分などが存在するため、丸々入ってくるわけではないので、非常に計算しにくいというのが実情です。
そのためか、私が調べた限りにおいて、個別の馬の収支を記載した記事はあっても、一般的な損益分岐点を論じた記事はほとんどありません。
そこで今回は、シルクHPで公開されている個々の馬の収支を元に、概ねどのぐらいの獲得賞金があれば収支が±0円になるのか概算してみました。
表作成後に検証しましたが、ずれても10%程度だったのでかなり実用的かと思います。
なお、レース中の競争能力喪失による見舞金等は考慮していません。
また、牝馬の売却金(10%分)も考慮していません。
損益分岐点一覧表
表の見方
一番左の列は馬代金。エサ代稼ぎとは、維持費をペイするために必要な獲得賞金
一番上の行は馬の年齢(引退時期)を示します。
5000万円、5歳12月末に引退 ⇒ 8800万円
1億円、4歳12月に引退 ⇒ 1億3500万円
がそれぞれペイラインということになります。
また、3歳8月に引退する馬は、獲得賞金が1300万円ないと維持費分も稼げなかったということを意味します。大多数の未勝利馬は獲得賞金で1300万円もいくことがないので、維持費割れすることになります。
また、下表の目安は条件戦から勝ちあがっていった馬がベースになります。
2歳重賞を勝った馬や2着に入った馬は、その後、重賞で通用しないと、条件戦でコツコツと稼いでOPまで上がった馬に獲得賞金を逆転される傾向にあります。後に例に挙げるリアアメリアが典型です。
リアアメリアの場合
世代別重賞2勝、その後は目立った活躍なし
表ベースでの計算
馬代金:7000万円
6歳1月引退(ほぼ5歳12月引退)
ペイライン:1億1000万円-売却金700万円
獲得賞金:1億1229万円
⇒ 若干プラス
実際額
出資金
馬代金 7000万円
維持費 約3000万円
保険費用 約850万円
合計 約1億0800万円
分配金
獲得賞金 約9900万円
見舞金等 約350万円
補助金等 約450万円
売却金 700万円
合計 約1億1400万円
⇒ 若干プラス
ブランノワールの場合
3勝C勝、その後京都牝馬S3着
表ベースでの計算
馬代金:3500万円
6歳3月引退(5歳12月引退+α)
ペイライン:7100万円-売却金350万円+α
獲得賞金:7573万円
⇒ 若干プラス
実際額
出資金
馬代金 3500万円
維持費 約3200万円
保険費用 約300万円
合計 約7000万円
分配金
獲得賞金 約7650万円
見舞金等 約140万円
補助金等 約350万円
売却金 350万円
合計 約8500万円
⇒ そこそこプラス
ウィクトーリアの場合
3歳限定重賞1勝、3歳で故障引退
表ベースでの計算
馬代金:2800万円
3歳9月引退(3歳8月引退とほぼ同等)
ペイライン:4500万円-売却金280万円
獲得賞金:9859万円
⇒ 大幅プラス
実際額
出資金
馬代金 2800万円
維持費 約1450万円
保険費用 約160万円
合計 約4400万円
分配金
獲得賞金 約7000万円
見舞金等 約180万円
補助金等 約280万円
売却金 280万円
合計 約7700万円
⇒ 大幅プラス
ブレーヴジャッカルの場合
2勝C勝。全26戦
表ベースでの計算
馬代金:4000万円
6歳7月引退(5歳12月引退と6歳12月引退の中間)
ペイライン:8000万円
獲得賞金:4680万円
⇒ しっかりマイナス
実際額
出資金
馬代金 4000万円
維持費 約3200万円
保険費用 約380万円
合計 約7600万円
分配金
獲得賞金 約4680万円
見舞金等 約160万円
補助金等 約300万円
売却金 0万円
合計 約5150万円
⇒ しっかりマイナス
結論(追記・訂正済)
①低価格帯の馬でも2勝Cを突破しないとペイしない
②4000万円以上の馬は3勝Cを突破or世代別重賞勝がないとペイしない
③6000万円以上の馬は3勝Cを突破した上でOPクラスで善戦する必要がある
④1億円超えの高額馬は条件戦を突破したうえで古馬混合重賞を勝つなどかなりの活躍が必要
⑤古馬重賞を2勝すれば高額馬でも概ね利益が出るが2億円越えはそれでも厳しい。
⑥牝馬は、買い戻し(募集価格の1割)があるため、見た目よりも少ない獲得賞金で回収できるが、出世のしやすさは、牡馬と牝馬で大きく異なる。
例1:牡馬の3勝C突破と牝馬の2勝C突破確率が同程度)。
例2:牡馬で獲得賞金7500万円以上を引ける確率は、牝馬の約2倍。それ以上の獲得賞金でも概ね同程度の比率。
⑦世代限定重賞1勝(その後鳴かず飛ばず)の価値は、3勝C突破(その後鳴かず飛ばず)と同程度。