コンピュータの定義を辞書で調べると次のようになっている。
スーパー大辞林より
電子回路を用い,与えられた方法手順に従って,データの貯蔵検索加工などを高速度で行う装置。科学計算事務管理自動制御から言語や画像の情報処理に至るまで広範囲に用いられる。電子計算機。
そのコンピュータが、なぜカメラの自動化に必要かというと、写真が、光による化学反応を利用しているからだ。
当時のカメラは、フィルムという透明な膜の上に、光に反応して黒くなる素材を塗布したものを使って、レンズを通した光景を写し取っていた。
撮影したフィルムは、後処理によって、光がより沢山当たったところはより黒くなり、当たらなかったところは透明になる。これがネガフィルムと呼ばれるもの。
このネガに光を当てて、ネガを通った光を、フィルムの代わりに紙の上に反応材を塗布した印画紙に当てて化学反応させると、ネガの透明なところがより多く光が通過するので印画紙は黒くなる。
これが完成した写真プリント。
カラーフィルムも原理は同じ。
↓詳しく知りたい人はここを読もう
http://web.canon.jp/technology/s_labo/light/003/01.html
当たる光を適切な量にするには、光の取り入れ口の大きさを調整するか、光をあてる時間を調整するしかない。
取り入れ口の大きさを調整するのがレンズの絞りで、光をあてる時間を調整するのがシャッター速度だ。
どのシャッター速度を使うかは、シャッターダイアル、どの絞りを使うかは、絞りダイアルで選択する。
絞りとシャッター速度、どちらを調整しても、適正な光量がフィルムに当たるのだが、絞りはボケ具合に影響し、シャッター速度はブレ具合に影響する。当時のカメラマンは、絞りとシャッター速度、どちらを優先するかを先に決めて、残りで光量を調整するようにしていた。
自動化では、このカメラマンが決定していた調整をカメラが代行する必要があるのだ。
最初に適切な光量がいくらなのかを測定し、これに見合った絞りとシャッター速度を決定することになるのがフルオートなのだが、AE-1ではそこまでのことはできずに、シャッター速度だけはカメラマンに決めてもらうことになっていた。残りの絞りを自動調整するわけだ。
ちなみに、この年にさくらカラーが24枚撮りフィルム缶を、従来の20枚撮りフィルム缶の値段で発売。CMでの、欽ちゃんが言う「どっちが得かよーく考えてみよう」というキャッチコピーが流行語になった。
適切な光の量は直射日光の下、曇りの日、室内、電灯の下というように、写真を写す場所で変化する。
そのため、シャッター速度優先の自動化では、測定した光量と、決められたシャッター速度から絞りの量を計算する必要があった。
この計算を含め、光量測定、シャッター速度確認、絞り値決定、決定した値にレンズ絞りをを調整、シャッターを指定された時間で開閉する、といった各ステップを、AE-1ではマイクロコンピュータを使って集中管理したということになる。
ただし、2年後に発売されるCanon A-1が完全デジタル制御カメラとして完成したと書いたように、AE-1はコンピュータによる中央集中制御といってもデジタル制御ではなかったようだ。
AE-1はシャッター速度データをデジタルで記録していた以外は、基本アナログ制御という内容がアサヒカメラのニューフェース診断室で書かれているらしい。
参照)https://www.ssplusone.com/canon-collection/フィルム一眼レフ/canon-ae-1/
その点では、ホーム・ブリュー・コンピュータ・クラブの連中が熱中していたコンピュータとAE-1のそれは大きく異なる。
Altair 8800にせよ、Apple Iにせよデジタルコンピュータだ。
そして日本のTK-80もそうだ。
そもそも1976年当時でも、コンピュータといえばデジタル方式だった。戦後すぐの1946年に発表されたコンピュータENIACにしたってデジタル方式だ。
↓ENIAC
多分、ここら辺のチカチカするイメージが、〜80年くらいまでの映画やTVで登場するすっごいコンピュータのビジュアルとなってる。
じゃあ、そのアナログコンピュータとデジタルコンピュータの違いって何なのか?