「弓」
キムギドク監督


キムギドク作品は大好きです。
低予算、超短期製作ながら、
心に響く印象的な映像作りをコンスタントに続けていらっしゃる。
何ものにもおもねらない職人気質を
感じられる点もいいですね。


本作品は、船の上で10年以上暮らし続けている少女と、
その少女と共に生活し、近々結婚しようと考えている老人との
愛情と葛藤を描いたもの。

設定はいつも通り突飛なものながら、
映像美とシンプルな物語構成が、
観客をスムーズに作品世界へと誘ってくれます。

とにかく徹底的に削ぎ落とされた台詞と、
それを補うカメラワークと演技。
本当に痺れます。


若干本題からはそれますが、
「1Q84」のふかえりは、
実写化すればこの少女ような感じになるのではないか
と映画の半分ぐらいからずっと思っていました。
言葉数は少ないながらも、
表情と存在感で雄弁に自己表現し、
特殊で過酷な運命を一身に引き受けている点にも
共通項を感じる。
村上春樹作品を映像化するのであれば、
敢えてキムギドク風に言葉を削ぎ落としてしまうほうが
有効なのではないかと感じました。


ともあれ、
ギドクイズムにひさびさに触れることで
自分の表現したい作品世界が
少しだけ見えたような気がしたのでありました。


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「アキレスと亀」北野武監督


売れない画家の半生を描いた物語。

あらすじだけを想起してみると、
とんでもなく悲劇的な作品だと思います。

しかしながら、
温かい物語としての印象が
最後には残っている。

主人公真知須の純真な愚直さと
周りを取り巻く女性たちの母性愛、
カラフルな絵画の数々が
そう思わせるのかもしれない。

真知須が画家として才能が無いことは一目瞭然。
それは絵の上手い下手ではなくて
芸術家としての姿勢に見てとれる。

人間の内面や社会、世界について内向することなく、
あまり良質とは言えない画商のアドバイスに
右往左往してしまっている。
完全に自我というものを持っていない。


でも、この作品を見ていると
どうやら北野氏は真知須の生き方に憧れている
節があるように見受けられるのである。

真知須にとっては
「画家であり続ける」ことが幸福なのであり、
その点では彼は常に満たされている。
一方北野氏は、
その才能ゆえに多様なジャンルにおいて常にトップクラスで居続けることを強いられた人間であり、
常に幸福とは言い難いのではないだろうか。


そう考えると、
当初とんでもない悲劇だと
思われていたこの作品が、
人生についての様々な示唆に富んだ作品であることに思い至ったのである。
そして、この不思議なタイトルにも合点がいった。


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「スウィーニートッド」ティムバートン監督 ジョニーデップ主演


ビジュアルに着目して鑑賞しました。
専門学校の先生曰く、
NY系のビジュアルデザインはコントラストをよく効かせる傾向にあるようです。
この作品もご多分に漏れず、
モノクロに近いコントラストの効いた映像世界を表出していました。

ティムバートン作品は、
内容云々を語るとどうにも語りきれないものがあって、
その作品世界に浸り、
世界観そのものを受け止めるという感覚でいたほうが
いいのではなかろうか。


「コープスブライド」と
世界観はとても近接していると思います。
善悪の判断軸は物語の進行に合わせて大きく振幅し、
感情移入もあらゆる対象に見いだすことになる。
生と死に関する思考も一時的に止まってしまう魔力があるように思えます。

ミュージカル形式もこの世界観にはマッチしている感じがして、
不思議な余韻を残す印象的な作品でした。


cozy