p168 「イギリスの公園で寝転びながら遠い日本を傍観しているというのは、誰も代理してくれない自分の人生を傍観しているということだ」

 

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「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」収録。

 

よい意味で「夜は短し歩けよ乙女」と世界観や舞台が重なっていて、「夜は」の余韻を楽しむことができた。

 

主には偏屈な高偏差値国立大学男子の美意識が説明される。元ネタがあるので何を描こうとしたかが分かりやすく、なおかつ、元ネタのほうが分かりにくい場合には読み解くためのガイドとすることもできる。

 

「山月記」は「働いたら負け」の高学歴ニートの話。ちなみに、「働いたら負け」は 2004年に広まったそうで時代の価値観にもほんのり合う。2023年の5080問題が顕在化するご時世、今でも通用する言葉なのかは知りたいところ。ちなみに、自分は結構好きなタイプ(友達として)。

 

「藪の中」はネトラレ心理を仔細に描く。NTR属性については、ニコニコ大百科の説明は 2009年と日付が書いてあるから、市民権を得た言葉(概念)となったのもこの頃なのではないかと思う。当然ながら、三角関係のなかで NTR 男子の心理は他の2人には理解されない。

 

「走れメロス」は、友情とは何かを説明する。決して助け合う関係が友情なのではない。是。それは単なる功利主義。本当の友情は、同じ熱量を持つものへの畏敬であると思う、というわたしの気持ちを裏書きしてくれた。

 

「桜の森の満開の下」がいちばん考えさせられた、というか、怖い話だった。女は見込みのある男子を見出して取り憑き、自分を養わせる。オトコは馬鹿だ、と自嘲気味に言うのを聞いたことがあるが、まさしく、エロの本能で外見で女子を選ぶとこのような目に遭う(女子の側にも不幸になる別の陥穽はあるがここでは触れない)。

 

「百物語」の、裏方にまわる先輩の存在もなんか賢いアート系男子ありがちかもと思った。顕示欲が強くない男子も底力がありみで好き。というか、あちらはあちらさまでできあがってしまっているので世界は重ならないのだけれど。

 

以上、なんか、こちらも初期のオトコ汁したたる空気感の楽しめる小品たちだったと思います。好きなヒトには「よき」のはず。まちがいなく。