ひめゆりの塔までは、那覇空港から車線変更は一切ない。車窓には椰子の木と、右手に時折キラキラ光る海が顔を見せる。正確に言うと、見せているような気がする。上り坂、下り坂、上がっては下がり、そんな道が海岸線に沿って右に左にくねるのでよそ見をする余裕がない。


「目的地デス」とカーナビがしゃべったときには入口そばの駐車場を通り過ぎてしまって戻ってこなければならなかった。カーナビの目的地は駐車場にしなければならないのだな。大型バスも止まるような広い駐車場に先入れ、突っ込んで止まる。ゴールデンウイークだというのに駐車の車は3台のみ。これなら不慣れでも余裕のバックで出てくることができる。


誰もいない駐車場で肩出しヘソ出しの夏の衣装に着替える。生徒を引率して修学旅行で来るときには、まさかこんなお衣装は着れまいて。これもお忍びの旅の醍醐味。無事に運転できた達成感のワクワクもあって勝手にテンションが爆上がりする。


さて、ここで良識的な読み手のみなさんのツッコミを甘んじて受けさせてもらいたい。てか、ここは是非ともツッコんでやってください。


「貴様、戦時中、吉永小百合に似た罪のない幼気な少女たちが命を落とした悲劇の場所に、よくも能天気にヘソ出してワクワクして訪れておるのか、失礼きわまりないこと甚だし!」


わーーーーーごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ちょっと考えれば非常識と分かるようなことを、経験の足りない若輩でもないのにすみません!!!そーなんです頭が残念なんです、だから!!粗相のないように下見が必要なんです!!(ゼーゼーハーハー)


ひめゆりの塔の敷地は、ヘソを出しているオネーサン(もとい、オバチャン)にはどんだけ不似合いなくらい重かった(涙涙)。昼下がりの時間帯もあってか、観光客もほとんどいない真面目な空間にあまりにも耐えがたい自分の存在の軽さ(涙涙)。


OKINAWAは!!!軽薄な気持ちで近づいたらひっぱたかれる、とっても重い場所だったのだよ!(いまさらかよ!)


この場合、恥を知れば両の手でヘソの穴を隠してコソコソと撤退しかないでしょう。ま、また来る。本番の修学旅行ではちゃんと!スーツ姿で!!あばよ!!(服装の問題なのかよ!)


と、ひとりツッコミをいれつつ車に退却。


今日の目標は、運転がまだできることを確かめてとりあえずの目的地に行くことだったから、やることはもうぜんぶ終わっちゃったよ!!おかげで今度は時間が妙に余っている。せっかく借りたマーチちゃんがいるのに間がもたないよー。


しょーがない。そこからあとも朝と同じ展開、「るるぶ」に掲載されている道のわかりやすそうな目的地を探す。たとえば、斎場御嶽とかとか。此の地では駐車場で入山権を売っていて、本土なら階段になっているだろう山道に敷かれた石畳を8分ほどかけて上ることになる。神さまの住むところなので今度こそ羽織モノを着るよう注意され、蒸し暑さのなかウインドブレーカーを着用して(暑かったよ!!)。


無知ゆえに折角の名物玉子焼きを食べはぐり(後から思えば人が並んでた)。帰途は助手席の左が海だったのでビーチがキラキラしちゃって、これは足をちょと付けてみよかとフラフラ幹線道路からはずれたものの途端に空港に帰れなくなる恐怖のが勝って諦めた新原ビーチ(これも後から知れば穴場スポットということだった)。


その後も予習の足りない自分は穴場を華麗にスルー、道の分かりやすいことだけを優先に、鍾乳洞の入場時間の終わっていた沖縄ワールドと、平和記念公園に寄って帰りました。平和記念公園は、キャッチボールなどして遊ぶ親子たちがキャッキャするすぐ向こうにある、戦没者の人の名前を刻んだ石碑が一面に広がって、戦争を忘れない、というより、罪のないこんなにたくさんのあなたを、犠牲にされてしまった/なってくれた家族を忘れない、という静かな場所で、その静謐さを以て恥を突きつける場所でした。


こうして初日の観光をほぼ終えました。この日覚えたことは、沖縄は明暗が極端にある複雑な場所で、無意識に誰かを傷つけてしまわないように配慮ある行動が求められること。それにしても、浮かれた自分の弁護をしたいのですが、南国ビーチリゾートでバカンスに来る場所が、世界でもっとも重い場所のひとつって、あんまりじゃないですか?なぜ、リゾートを作ること自体、不謹慎とされなかったのか(責任転嫁)、とにかく、人間というのは見た目では推し量れないことを肝に命じていかなければならないですね。


とご挨拶は終わりましたが、この地域の観光で覚えておいたほうがいいことをもう一度、念を押しときます。大事なことだから2回言うよ!うっかりとヘソを出しちゃう危険に備え、くれぐれも羽織りモノをお忘れなく!


ではまた!


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今日のおまけ

「沖縄の隠れ家リゾート 後編(南部)」

新原ビーチ周辺の観光案内。新原マリンセンターのガラスボートから、その上の道沿いにある個性派アーティストが住むという地域にあるカフェが紹介される。窓から見下ろす水平線がまぶしい。バスケット制作体験をしてからドライブ、斎場御嶽を訪ねて一泊。船で座間味島に渡ってハイライトとなるダイビングを体験する。