2011年 イースト・プレス刊
歴史を語るうえで戦争は避け得ないと気がついたので、ナポレオンの同時代の軍師クラウゼヴィッツが書いた古典「戦争論」に興味をもった。とりあえずの内容が分かればよいと考え、いちばん易しそうな「まんがで読破」シリーズを選んだ。
目次
戦争の本質
2種類の戦争
軍事編成
防御の優位性
戦争計画
以下、目次にもとづいて内容を要約する。
戦争の本質・2種類の戦争
クラウゼヴィッツは戦争を「相手に自分の意思を強要するための暴力行為である」と定義する。つまり、戦争は目的のための手段であり、目的が果たされれば終結する。そして、目的達成の手段は「敵戦力の撃滅」「講和条約の締結」「防御」を挙げる。いずれも「武力による決定」で成立し、戦況は「政治的目的」、「軍隊の才能」、「国民の支持」で決まるとする。
これは、ナポレオンが戦略として敵戦力の完全な撃滅を圧倒的な軍事的才能を以ておこなったのと符号する。一方、敵戦力の完全な撃滅は他の要素を考慮に入れないため現実的ではなく、概念に過ぎないことを確認する。
軍事編成
戦争は人的資源・物資を効率的に配置、活用すると有利にはたらく。そのため、全体計画=戦略が重要となる。ナポレオンの強みは戦略にあった。
戦略の5要素は「戦力の数量・割合(兵力差)」「作戦の計算(将軍の力量)」「地理的要素(高地など)」「物資の補給」「精神的要素(軍の武徳・愛国心)」である。
また、ナポレオンは徴兵して国民をよく組織し、迅速かつ柔軟に対応する「兵の機動力」を訓練した。ナポレオンは想定外の事態への判断力にも聡く、兵の信頼を得ていた。これがナポレオン軍が強かった理由である。
防御の優位性(戦争理論)
ナポレオンが進軍を始めたのは、革命後のフランスは絶えず侵攻される側だったからである。彼は敵が侵攻の意欲をなくすまで戦わなければ意味がないと考え、勝利してもなお追撃の手を止めない戦争をおこなった。
さて、戦争理論であるが、
・「防御」は戦力の消耗が少ない。「攻撃」側は物資を補給しながら攻撃と防御の両方をおこなう上に「ゲリラ戦」のような非正規軍による襲撃も受けうるので不利である。一方、「攻撃」側は、首都の占領や指導者の攻撃など重心を崩すことで勝利を収めることができる。
・「追撃」は、敵の退却を追って内地へ進軍することによって物資補給を断たれて最終的に敗走に転じる危険がある。敵軍の要塞を占領することである程度防ぐことができる。
・「戦う場所」は、平地が一般的だが、防御側は山地や森林、沼地、河川などを利用できる。渡河は難しく、必ずしも突破する必要はないので優先順位をつけて取り組む。地形による有利不利のない行軍では、前衛・本軍・側衛で布陣し戦闘するなどの理論がある。
戦争計画
・第一次世界大戦、第二次世界大戦は、絶対的戦争(敵戦力の完全な撃滅)のために兵器の破壊力を増大させた。それをうけて、戦争の定義に立ち返り、効率的に目的を達成する戦争計画に目を向けなければならない。
・目的➡目標(戦略)➡軍事行動(戦術)
・そして、戦略には、「戦術」、「兵数」、「時間」を計上し、調子づいて予定外の行動をしないことが重要である。戦後のことも視野に入れる必要がある。
・ベトナム戦争後、アメリカ軍は「ワインバーガードクトリン」という原則を定め、軍事介入の条件を整理した。「戦闘の実行は最終手段である」などがクラウゼヴィッツの戦争論に近い。
・現在は失うものをもたない「ならず者国家」への対応が無策である。
・核兵器が開発され、実際に世界を殲滅させることができる技術を手にした今、それを使わない「政治的叡智」と「戦争観」を冷静に考察していくことが求められている。
感想
ナポレオンもチャーチルも(あるいはヒトラーも)彼らなりの平和を求めている。一方、奴隷制度のある社会がいくら安定していても、それを平和とは呼びたくない。争いは避け得ないといったん認め、目を逸らさずにいかに賢く利害関係を整理させていくか、政治の力が問われる理由が理解できた。