ウォリアーズ 歴史を動かした男たち(字幕版)Prime Video のエピソード1 BBC製作
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映画「ナポレオン」はあまりにも基礎情報が少なくて理解不十分だったため、それを補う目的で視聴。トゥーロンの戦いのみに焦点化されていて、コルシカ島出身の若造がいかに認められるに至ったのか、そのプロセスが描かれていた。

トゥーロンの戦いは、革命後の混乱に乗じてイギリス軍に占拠された砦を奪還し、撃退することを目的として行われた。侵略の拠点になりかねない危険性をいかに取り払うか、革命政府から任命されてきた官吏たちは作戦を考える。しかし、招く軍の指揮官は革命前は文官であり、実戦については戦法どころか戦略も持たず、現場の生々しい鮮血に怯えて撤退しかできない。見かねたナポレオンが現場から実現可能性の高いプランを出しても、序列をわきまえよと幾度もその意見は理不尽に潰されるばかりである。

それを支えるのが、母親の叱咤激励である。気品のある母親は周囲の醜悪に怒りを覚え、「どうせ俺なんか」と弱気の風に吹かれるナポレオンの自己憐憫を叱り飛ばす。邪魔なものは消しなさい、できないなどとつべこべ言う間に何とかしなさい、なんとかするのよ!

ナポレオンは知恵を絞り、自分を生かさなければ相手もともに亡きものとなるような計略を捻る。民衆が引退させた王党派の軍人を雇用させて陣を執らさせる。プロから見れば実際に運用可能な策など一目瞭然、なかでもナポレオンの戦術はひときわ異彩を放つ優れた作品で、二人にだけ通じる会話が成立する。

再度、ナポレオンはいかに世に出たかと問うならば、この、自分を正しく評価できる人間を上司にさせたことも理由のひとつに数えていいと思う。ナポレオンの意見は通るようになり、権限は増し、名を知らしめて出世への階段を登ることになる。

リドリー・スコットの映画の方は、このへんの確執はすっぱりと飛ばして、「彼が適任だと思います」「やるなら口を出さないでください」とトントン拍子に成功する。そちらのレビューにも書いたが、ある意味仕方がない、2時間半で描ききらなければならないのだ、こちらのBBCはこれだけでもう60分費やしている。だが、その甲斐あって、テーマ(問い)があり、それなりの答えを用意して、どう見ても見る人が納得する人生の一局が描かれた。

この映像が埋める、リドリー・スコットの映画のモヤッとする部分は、先方の映画で言及されたけれど登場することのなかった母親と、そう簡単に話は進まないだろと思う心のツッコミへの同意ではないかと思う。続きが見たいところだが、このシリーズは列伝で、エピソード2は徳川家康になっている。関ヶ原の戦いが、BBCの手によって、「ときは17世紀、イギリスでいえばエリザベス一世の時代」と英語で語られるのもまた乙なものであるが、今はナポレオンに集中しているので、またあとの機会にとっておきたいと思う。

ともあれ、これはよき作品であった。