図書館にあったので偶然手に取ったのだけれど、まさに聖地巡礼にぴったり、至れり尽くせりのガイドブックであった。
これまで読みながら、地名が出るたびに 地味にGoogle Map で調べていた場所が、エピソードとともに分かりやすい地図となっている。それが、「矢三郎と赤玉先生の不毛の師弟関係を辿るルート」や「偽叡電による偽寺町通爆走ルート」などちゃんと整理されてツアーとして掲載されているのだ。これは便利!
そして、森見さんによる制作プロセスの解説もおもしろい。狸と人間は出そうと思ったが、天狗はバランスを取るために入れた、とか、キャラに役割を分散させて無駄のないようにした、とか、無理のある設定は「狸の阿呆の血のしからしむるところにより!」で強気で押し切った、とか。各章においた伏線や登場人物を最後に余すところなく再集合させてフィナーレにするとか。ずいぶん考えて構成されていたんだと知ることができた。
特におもしろかったのは、彼自身を以て、第一章はイントロダクションであって何の物語にもなっていないと言い放っているところである。文字が連ねられていればそれは物語なんじゃないかと思っていたけれど、その定義としては、何かが起こり、主人公が行動を起こさなければならないのだった。
わたし自身はそういう枠組みを作るところまでで満足する風があるのだけれど、それが動いて物語なのだというのは新発見だった。それを書きながら学んでいったというのだから、作家は決して一夜にして作家になったのではないのだった。もしも方法があるのなら、自分もやってみたいかもと思わず朝日新聞のカルチャークラブを検索しちゃったよ!
そこでも、よい小説を読んで書き手の技法を吟味し、そこから学ぶような説明が書いてあった。そうなのだとしたら、いまこうして図らずもモリミーの本をインテンシブに読んでいるのもよい訓練になっているかもしれない。
京都へ行く日が近づいて、すべての森見作品を読むに至らないことが明らかになってきたが、厳選しつつ、テンションを上げていって、学べるものはばんばん学んでいこうという気になった。
