英語ディベートの指導にあたり、生徒(自分)の論理立てをよりスムーズにおこなうために論理学を学ぶことが有効でなないかと考えた。まえがきにも、「数学・科学の立場から自然言語、日常の会話を見つめることができる」ことが本書の目的と書いてある。
本書を読んで、both の否定は either (どちらか一方)を含み、either の否定は neither (どちらでもない)であり、日常会話では見落とされがちであることを学んだ。それを知らないと、たとえば、「消費税を上げれば社会福祉は充実する。逆に、消費税をげなければ社会福祉を充実できません」とディベートの対戦相手に言われても、正しく反論できない。他にも、いろいろと学ぶことがあったので、職場で向かいの席に座っている数学のキクチ先生に英語と数学は連携しうることを興奮して報告したら、本書の内容は、数学Ⅰで学ぶ「集合と命題」の内容であり、すべて高校時代に習っていたらしい。
今回、理解した気になれたのは、本書が実際の会話ではどのように使用されているのかまで説明していたからだと思う。その、最後の落としどころに向かって、一生懸命、順を追って論理を丁寧に読み進めた。自分が高校で習った記憶がないのは、∈や∩、∪などの数学界の文字が直感的に理解できるまで自分に落とし込めていなかった(読むのに時間がかかった)ため、先生の説明についていけなかったからだったようだ。
貸してもらった数学Ⅰの教科書は、問題を解くために必要な説明と問題で構成されていて、∈などの定義についての説明は一箇所しかないし、「それが現実ではどのように使われうるのか」についても説明がない。これは、授業では先生が口頭で補足してくれたところなのだろうが、質問文を理解することで精一杯だった自分には、おそらくその説明を容れる余裕がなかったのであろう。
本書の目的はもうひとつ、「論理を武器に議論に強くなろうというもの」ではなく、「会話の内容をより正確に判断し、心にゆとりをもてるようにする」と書いてあった。つまり、数学もコミュ力の向上を目的とすることに感じ入った。
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以下、気になったところについてのメモを箇条書きにする。
プロローグ
p20 「前提条件が間違っていたら、結論が正しいかどうかにかかわらず、判断そのものは正しいとするのです」
→徳川家康は幕末の志士であれば彼は剣術ができた=彼は幕末の志士ではないので剣術はできたことになる
p21 「消費税を上げれば社会福祉は充実する」の逆は「社会福祉が充実すれば、消費税は上がる」
p27 「必要条件」「十分条件」「必要十分条件」
p32「論理について着目するとき本書では『時の前後関係』は度外視します」
第1章 論理を表で考える
p40 否定は「〜」であらわす
&は「∧」、or は「∨」であらわす
p42 「命題 p が偽のとき〜p は真」⬅上の家康問
題
p48 「論理的に同値」=表現や見た目は違うけれど、論理の中身は同じ 例えば、二重否定
ら
p50 「∧(∧)」はカッコなしで大丈夫
「∧(∨)」は分配法則が起きる
p56 ド・モルガンの法則
both の否定は either となる
not either の否定は neither
第2章 論理を図形で考える
p123 空集合は任意の集合の部分集合
→分からない(怒
p128 「必要条件」は広い
「十分条件」は狭い
「必要十分条件」は2つが重なっている
p137 全称命題、特称命題の否定
ベン図も数式もさっぱり読めないが、要するに第一章で学んだド・モルガンの法則と考えれば即座に全問正解。
p141 ちょっと複雑な全称命題、特称命題の否定
残念ながらここはギブで。直感的に解答を出せるのだが理屈の展開が数式であるため、不慣れな自分の頭はもうついていかない
p144 推論の有効性をベン図で判定
三段論法の有効性を数式ではなく、図で視覚的に確認できるという試み。ベンさんが発明したときにはさぞかし画期的だともてはやされたことだろう。しかし、私にはすでに第一章で学んだ数式による確認がインプットされてしまっており、容易にベン図にシフトできない。ベン図の集合∈などの記号が直感的に理解できないからだ。とりあえず理屈と数式で問題は解けるので、またいつか復習することにして今回は斜め読みでこの章を読了とする。
第3章 論理雑学
ようやく本書を読みはじめた理由である、ディベートの論理構成の参考になりそうなパートに入った。
p 160 数学は「公理主義」で構築されている。「推論を出発点とした最初の前提の真については、残念ながら、誰もそれが真であることを判定することはできません。それゆえ、推理の立脚点となる最初の前提については、私たちは、これを承認するしかありません」
→ディベートも前提となる世界の構築から議論を始める。これについての真偽はもう問わないというのは、実際そうなんだと共通性を見つけた。
p170 「風が吹けば桶屋が儲かる」について
→「…ならば…である」という判断の中には説得力の乏しいものがあり、冷静に考えれば受け入れがたい論理である、ということは、ディベートではこの真偽について問うていくことになる。「プロセスを説明してください」で It's not always true. で反論というやつだな。
p175 「帰納とは、いくつかの特殊な命題から普遍的な命題を導き出す推論のこと」で、たとえば、A町のカラスもB町のカラスもC町のカラスも黒いから、きっとすべてのカラスは黒い、と結論づけること
→「たぶん…であろう」ということで、「機能的な考えで得た結論は絶対正しい…わけではない」ということは、ここもディベートでつっこみどころとなりうる。
以上