では、概要をまとめる。

 

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H・リン・エリクソン、ロイス・A・ラニング、レイチェル・フレンチ(2020)「思考する教室をつくる概念型カリキュラムの理論と実践: 不確実な時代を生き抜く力」北大路書房

 

目次

序文

1章 思考する教室

2章 「知識の構造」と「プロセスの構造」

3章 概念型の指導単元を設計する

4章 概念型の授業における探究学習

5章 概念型教師の成長と自己評価

 

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本日は序文と1章の概要をあつかう。

 

 

序文にはいくつかの問題の背景が箇条書きで示されている。「必須内容を教えながら、なお批判的、創造的、概念的思考を持った生徒を育てるにはどうすればよいか」「時間的成約があり、生徒のニーズも多様ななかで、学力基準を満たすにはどうすればよいか」等。

 

また、序文にはこの問題を解く鍵となる重要な点が先取りして書かれている。

1.知力の発達の鍵は、事実レベルと概念レベルにおける思考の相乗作用にある。

3.どの教科も教科特有の概念構造をもっている。この概念構造は、情報量が増大すればするほど、情報のパターン化、分類、処理においていっそう重要なものとなる。「事実情報の量が多くなるほど、情報を整理、処理するため、より高次の抽象化が必要になる」

5.理解の転移は、概念レベルで起こる。事実とスキルで裏づけされた一般化と原理によって、生徒はパターンを見出し、同じ概念を使った新しい例を以前に学んだ概念的理解と結びつけられるようになる

6.「従来のカリキュラムモデルでは、事実に関する学習内容やスキルの習得量がふえるにつれ、概念的な知的活動が低下し、その結果、学習意欲も低下する」

 

1章は、「概念型のカリキュラムと指導(CBCI)」の概要が述べられている。

 

考える力を養う授業で使われるCBCIは、従来の「知る(事実)」「できるようになる(スキル)」の2次元構造の間に「理解する(概念)」をおく。➡「理解する(概念)」とは、「…ということを理解するために◯◯をする」の「…ということを理解するために」の目的音部分にあたる。

 

そのほか、理論的に補強する材料として、「カリキュラムを教科の重要かつ転移可能な理解を中心に構成すれば、考え(理解)を実証する関連事実やスキルの選別が用意になる。」➡「近年の研究では、ワーキングメモリの容量、つまり一度に保持することのできる情報の数は(中略)約7項目から5項目に減少していることが示唆されている。したがって、教師は授業で扱う項目を少なくし、代わりに、生徒の記憶に残るよう、取り上げた項目についてより詳しく話し合うように指導すべきだ」(Sousa, 2011a, p40)という考え方、ロン・リチャートによる「指導の重要な目標は、内容理解を深めることとあわせ、思考を発展させることにある」(Ron Richhart 2015)という考え方が示されている。

 

思考を発展させるための仕掛けとして、CBCIは「概念レンズ」を利用する。

 

また、指導全般にわたり「思考をうながす問い」をもちいる。すなわち、「事実に関する問い」「概念的な問い」「議論を換気する問い」である。ここには、「概念レンズを使った授業では、生徒はより深いレベルで知的に処理を行わければならないため、事実情報を脳内で長く保持することになる。さらに、生徒は事実についての学習においてみずからの力で思考するよううながされるので、より個人的な意味づけをすることができる。こうしたはたらきかけにより、生徒は感情的に引きづけられ、みずから努力し、結果的に学習意欲が高まる」という機序がある。概念レンズは、生徒の理解を一般化に導く。「国際バカロレア(IB)では、これらを「中心的アイデア」や「探求テーマ」とよんでいる」。

 

また、事実レベルと概念レベルにおける思考の相乗作用を引き起こすとは、生徒に「体験を掘り下げて具体例を見つけたり、実例を想像したりする」ことを求めることで得られる。

 

育成すべき知的性向は「創造的思考」「批判的思考」「内省的思考」にもとめられる。

 

特に、「創造的思考」については、Sir Ken Robinson が「創造性はリテラシーと同じくらい重要で、学校において同じ地位で扱われるべきだ」と述べ、「間違う覚悟がなければ、私たちは独創的なものにたどり着くことはできない」として、「間違うことがあたかも最悪の事態であるかのようにとらえられている」現状を憂えていることを引用した。そして、答えが唯一の事実に関する授業だけではなく、「処理、統合、議論を行い、間違う機会を提供する」必要性を訴え、「創造的思考とは、個人が意味を構築することである」とまとめている。

 

「批判的思考」については、リチャート(2015)をひいて説明をしているが、先日まとめた赤坂(2017)に詳しいので割愛する。

 

「内省的思考」については、ポールとリンダ・エルダー(2014)をひいて、彼らが開発した「知力の基準に焦点を当てた質問」が思考を深めることに役立つことを示した。

 

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以上、序章と1章で気になるところをまとめてみた。中心的な背景、目的、言葉をまとめた導入の部分にあたり、次の2章、3章で具体的な内容が語られることになる。なんだかきりがない感じになってきたので、実際にシラバスを書いて、余裕ができたら続きを書こうと思う。

 

Sousa, D. (2011a) Commentary - Mind, brain, and education:  The impact of educational newroscience on the science of teaching. LEARNing Landscapes 5(1), 37-43.  Retrieved from http:// www.leaning landscapes.ca/images/documents/11-no9/dasousa.pdf.