石田真理子(2018)「デュアルランゲージで行うTOK授業のケーススタディーPCK(授業実践のための教科内容知識)と意識したバイリンガルクラスー」『国際バカロレア研究』第2巻 pp46-53
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本論文を読む目的は、TOK授業の導入と展開の例を知りたいと考えたからである。そして、生徒の内容理解を促すために、TOKの教科観を踏まえて生徒の背景知識を生かした教材を開発することに力点をおく必要性を理解した。というわけで、本論文の価値はTOKの教科観を「自分自身の価値観を問い直す機会を設ける科目であり、知識を批判的(クリティカル)に吟味することで『信念に基づく知識』とでも呼ぶべきものに到達しようとする」科目と自分の言葉で整理し、明示したところにあると感じた。その根拠については、よく読み取れなかった。
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まず、石田(2018)が標題に掲げる PCK(授業実践のための教科内容知識)とは何か。これは項目立ての4番にあるが、少し先取りして確認すると、基本となる考え方は、教員は「授業展開の中には、単なる教科の知識だけでなく」、それ以外の知識も含めた知識が必要であり、その枠組み全体に対する考え方を指す。
後者の知識は「授業を想定した教科内容知識」として示される。具体的には、「教科内容の知識」とは「一般的な内容知識」「全体を展望する知識」「専門的な内容知識」であり、「授業を想定した教科内容知識」とは、「教科内容と生徒の知識」「教科内容と教え方の知識」「カリキュラムの知識」である。たとえば、ボールら(2008)は「教師は授業に関してどのくらい準備しておけばいいのかではなく、何に焦点を当てるか」を重要視する。また、石田(2018)は「教授内容を学習段階に応じて配列した教育課程の知識も求められる」とする。
ところが、TOKについてはそれが整備されているとはいいがたい。そこが本論文の問題意識となっている。
本論文に関連して、 PCK(授業実践のための教科内容知識)における「全体を展望する知識」という視点から見たTOKの特質は「自分自身の価値観を問い直す機会を設ける科目であり、知識を批判的(クリティカル)に吟味することで『信念に基づく知識』とでも呼ぶべきものに到達しようとする」科目であると筆者は説明する。一方、横断的な科目でもあるため、「専門的な内容知識」については、「授業を学ぶ知識は教科あるいは学問によって性質が異なるため、知識の組み立て方も異なり、それぞれの教科には限界があることも学ぶ」と説明がなされている。
➡「外国語」における「専門的な内容知識」となる「教科の見方・考え方」は、論文には書かれていないが、外国語によるコミュニケーションの中で,どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのかという、物事を捉える視点や考え方であり「外国語で表現し伝え合うため、外国語やその背景にある文化を、社会や世界、他者との関わりに着目して捉え、コミュニケーションを行う目的や場面、状況等に応じて、情報を整理しながら考えなどを形成し、再構築すること」 『高等学校学習指導要領解説 外国語編・英語編』とされている。その小項目として文法がある。
➡また、これも論文には書かれていないが、TOKでは、「専門的な内容知識」として教科を「知識の領域」(数学・自然科学・人文科学・芸術・歴史・倫理・宗教的知識の体系、土着の知識の体系)として分類し、それを見る「見方・考え方」として「知るための方法」(言語・知覚・理性・創造・信仰・直観・記憶)が示されている。
論文自体の趣旨はこうした授業をバイリンガルでおこなうことの意義にあるので話はつづくが、とりあえず、読み始めた目的は実践方法なのでまとめると、TOKを教えるには、TOK自体の理解もさることながら、「授業を想定した教科内容知識」である「教科内容と生徒の知識」「教科内容と教え方の知識」「カリキュラムの知識」が関係し、担当教員が現場に合わせてコンテンツも調整する必要があることが分かった。特に、ボールら(2008)による「教師は授業に関してどのくらい準備しておけばいいのかではなく、何に焦点を当てるか」を重要視する、という引用は単元の設計と通じると考えた。
参考資料
Ball, D. L., et al (2008) Content Knowledge for Teaching, Journal of Teacher Education. vol.59, pp389-407