2)水を燃料にするエンジン | 沈黙こそロゴスなり

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次世代燃料として注目されているのは水の利用です。
ご存知、水はH20と記述されるように、水素2個と酸素1個の化合物です。
水素も酸素も燃える気体です。
この水素と酸素が結合すると水になる不思議。
水の不思議についてはまた別の機会にお話しするとして、この水を燃料に変えてしまおうというわけです。
さて、この地球上には約14億(キロ立方メートル)もの水があると考えられています。
この大量の水を燃料にできたら?

というわけで、古くから研究している人たちがいるわけですが、よく知られている方法としては次のものがあげられると思います。

1)燃料電池
今一番実用化に向けて研究されているものです。水を電気分解して得られる水素を燃料にして発電し、それでモーターを回そうというアイデアです。
※燃料電池には、水素の他に天然ガスや石油ガス、バイオ燃料を用いた方法もあります。

2)水素エンジン
水を分解して得られる水素を直接燃やして使うエンジンです。
マツダがロータリーエンジンを使って研究してました。

上記の方法の課題は、水素をどのように安全に運搬するかということです。このあたりはまだまだ研究中のようです。

3)ハイドロジェン・オン・デマンド
ドクター中松が特許を取得した(?)と噂されているシステムです。水に水素化ホウ素ナトリウムを混ぜて金属触媒によって水素を取り出す方法です。使い方としては燃料電池と同じ。

これの特徴は水素を必要な時に必要分だけ、すぐに水から取り出せるという点です。ですから、燃料の運搬は水という形でOKなのでとても安全。ただし、問題点は水素化ホウ素ナトリウムの価格が1kgあたり5,000円~7,000円もすること。
これではいくら安全な水を使った燃料電池が出来ても、燃料の単価が高すぎます。

4)HHOガス(ブラウンガス)エンジン
いろいろなところでトンデモ系扱いされているHHO(ブラウン)ガスですが、調べてみると実用化に向けた研究もされているそうで、今後期待できる技術の一つです。
これは水を電気や電磁パルスなどを利用して電気分解しガス化させたものです。
水素と酸素を混合させると爆発するのではないかという指摘がありますが、水素と酸素の爆発限界は、酸素に対して水素濃度が63~64%でこれ以下になると爆発するそうなのですが、密閉された容器の中で水から発生する水素の濃度は酸素に対して約67%なので爆発することはありません(資料映像の中にHHOガスの発生を実際に行っているシーンがあります)。これは水が爆発しないのと同じことです。
このHHOガスを燃焼させると、また元の水にもどるだけですので安全です。
HHOガスのもう一つの特徴は燃焼させると、爆発(エクスプロージョン)ではなく爆縮(インプロージョン)することだそうです。燃えながら水に戻っていくので、エネルギーが周囲に拡散せずに内側に向かうということらしいです。その為、熱も拡散しないので、炎の温度は280度ぐらいなのだそうですが、1cmぐらいまで手を近づけても熱くないのだそうです。不思議ですね。
このようなクリーンなエネルギーですが、問題点もあります。
それは、いろんなものを溶かしてしまうという特徴です。HHOガス自体の温度はそんなに高くないのですが、金属や鉱物に触れると、反応して一気に温度が上がり(反応する物質によって温度は変わります)、ほとんどのものを溶解させてしまいます。金属を加工したり切断したりする時にはとても便利なのだそうですが、エンジンのような内燃機関のエネルギーとして使用するには大問題です。
というのも、普通の金属製のエンジンでは容易に解けてしまうからですね。
それでHHOガスを燃やすには特殊な炉が必要になるそうです。
この辺が実用化にこぎ着けないポイントのようです。
というわけで、資料映像に登場するスタンレー・メイヤーは、HHOガスに何か別のものを混ぜながら、燃料として使用していたみたいです。

でも水をそのまま燃やして走れる車ができたら凄いですね。

以下、資料です。

-----[資料]----------------------------------------------

スタンレー・メイヤーの水で走る自動車

http://wiredvision.jp/archives/200404/2004042605.html
より引用
燃料電池、船舶にも進出
2004年4月26日
David Snow 2004年04月26日

 水素燃料電池は、自動車用のエンジンなど陸上用途の代替エネルギーというイメージが強い。しかし、このいっぽうで、公海にハイブリッド式動力源を導入するための取り組みが、静かに、そしてゆっくりと、進行している。

 燃料電池システムの設計と構築を手がけるカナダのハイドロジェニックス社(本社オンタリオ州ミシソーガ)は4月8日(米国時間)、米ハブブルー社(本社カリフォルニア州ベンチュラ)に10キロワットの電源モジュール(写真)を供給する契約を結んだと発表した。ハブブルー社は、海洋で利用する水素関連の特許技術を開発している。

 ハブブルー社の設立者であり社長でもある、クレイグ・シュミットマン最高経営責任者(CEO)によると、ハイドロジェニックス社の電源モジュールはハブブルー社のデモンストレーション用船舶『X/V-1(写真)』号――全長12.8メートル、『カタリナ42マーク2』モデルのヨット――を推進させる回生型燃料電池システムの主要部になるという。この電源モジュールは、X/V-1号の照明や航行装置、調理器具への電力供給も補助する。

 ハイドロジェニックス社によると、この電源モジュールを7月までにハブブルー社に納品する計画だという。これをX/V-1号に組み込み、夏のあいだ試験航海(写真)に入る。ハブブルー社では2005年に、燃料電池を動力源としたヨットを、30万ドルから50万ドルの価格で売り出す予定だとシュミットマンCEOは述べている。

 「われわれの顧客は、水素燃料補給所が作られるまで待たなくてもよい」とシュミットマンCEOは述べ、自動車業界が直面しているインフラストラクチャー整備の問題(日本語版記事)に言及した。

 シュミットマンCEOが発明し、特許を取得したハブブルー社の技術では、水を水素と酸素に分解する電解装置を利用しており、精製した海水あるいは淡水から、リニューアブル(持続的利用可能)なかたちで水素を生成する。さらに、帆船ではすでに広く普及しているソーラーパネルや風力発電機(写真)といったクリーンな電力源も併用する。そして、ハイブリッド車のブレーキシステムと同じように、回生型の電気駆動式モーターがプロペラを回し、電力を回収して供給するとシュミットマンCEOは説明している。

 ハイドロジェニックス社のピエール・リバード社長兼CEOは、「現段階では、内燃エンジンと価格面で競争することは考えていなかった」と語る一方、ヨットの所有者をいら立たせる騒音、振動、ディーゼル燃料の匂いなどがない点で、燃料電池が「完全に勝っている」という。

 しかし、燃料電池が民間の海運業界で勝ち残れるかどうかはまだわからない。帆船はモーターボートなどエンジンを利用する船に比べると、推進に電気エネルギーを要する率ははるかに少ない。モーター駆動の船に適する燃料電池の開発は課題が大きい。それでも、取り組みは進められている。

 米ミレニアム・セル社(本社ニュージャージー州イートンタウン)は、米シーワージー・システムズ社、米アヌーブ社、米ダフィー・エレクトリック・ボート社など複数企業と協力し、米海事局(MARAD)のプログラムに参加しており、船舶や港湾施設への電力供給を目的とした水素燃料の有用性を調査している。船舶と港湾施設は、環境汚染の主な発生源とされている。プログラムに参加したチームは2003年10月に開催された『ワールド・マリタイム・テクノロジー・コンファレンス・アンド・エクスポジション』において、燃料電池を動力源とする水上タクシーをサンフランシスコ湾で披露した。

 シーワージー・システムズ社のマーティン・トイエン社長は次のように述べている。「われわれは水素を船に積んだり、炭素燃料から取り出すのではなく、水素の生成そのものを船上で行なおうと考えた。そうすることで、(燃料)電池の小型化がはかれる」

 水上タクシーには、ミレニアム・セル社が特許を取得した『ハイドロジェン・オン・デマンド』システムが搭載されていた。このシステムでは、水素化ホウ素ナトリウム(ホウ砂から加工)を水に溶かし、金属触媒に通すことで、純水素を発生させる。トイエン社長によると、副産物は水とホウ砂だけで、これらは化学変化させて再利用可能だという。

 シーワージー・システムズ社は現在、このシステムの2年間にわたるテストと、船上で化学物質を混合するさまざまな方法の実験を実施するため、資金提供を募っているとトイエン社長は述べている。また、水素化ホウ素ナトリウムの価格は現状のところ高額なため、システムを大規模なスケールで応用することが困難だという。

 「われわれは、このシステムが港の排出物質を減らす手段になると考えた。(船が)必要とする電力を得ようとすれば、巨大な規模になる。大規模な生産設備を作ることができれば、大幅なコスト削減が実現できるかもしれない」

 実現されるのはいつごろかと質問したところ、「おそらく私が生きているうちは無理だろう」と57歳のトイエン社長は答えた。

 いっぽう、米海軍研究局はディーゼル燃料から水素を取り出す方法をテスト中だと述べている。未来のハイブリッド軍艦に燃料電池を搭載することが目的だ。

 「海軍は将来的には間違いなく、ガスタービンと水素燃料電池を併用した総合的なハイブリッドシステムを完成できると思う。燃料電池はガスタービンより効率が高い」と海軍研究局のプログラム責任者アンソニー・ニケンズ氏は述べている。

 ニケンズ氏によると、海軍研究局は2004年2月から、燃料電池に対応した500キロワットの統合型燃料処理装置の試験を開始しており、アイダホ州アイダホフォールズにある米エネルギー省の国立工学環境研究所で6月まで続けられる予定だという。

 ニケンズ氏は2000万ドルをかけたこのプログラムの目標について、海軍がすでに保有しているディーゼル燃料のインフラを利用し、ハイブリッドの選択肢を早期に提供することだと説明している。

 「艦船に搭載される推進装置の大部分で、ディーゼルが使用可能でなければならない。コスト的なスケールメリットがあるためだ」

 海軍研究局の統合型燃料処理装置はまず、ディーゼルを加熱して気化させ、中に含まれる硫黄を硫化水素に変換する。さらに、硫化水素を酸化亜鉛にさらすことで、硫黄を酸化させ(二酸化硫黄となり)、水素から分離させると、海軍研究局の声明は述べる。

 トイエン社長は、燃料電池に使用するために化石燃料から水素を取り出そうとする場合の大きな課題は、どんな工程であれ、汚染物質を排除することにあるという。小さな不純物が時間とともに蓄積され、燃料電池の効率を低下させてしまうのだ。

 この問題は、ニケンズ氏も認識している。

 「燃料電池が燃料を分解して、硫黄を除去する形にしなければならない。一酸化炭素は燃料電池を劣化させるので、一酸化炭素を酸化させて二酸化炭素に変える必要がある」

 複数の情報筋によると、海軍が海軍研究局の研究成果を艦船設計に採用すると決定した場合、民間の燃料電池メーカーと契約を結ぶことになる見込みだという。

 現在開発中の技術のなかで、陸上の電力源に頼らず、海上だけで独立して稼動できるシステムはハブブルー社のものだけだ。

 「他社のシステムは、すべて消費モデルに立脚している。そういったモデルでは、まだ実在しない水素インフラを作り出さないと機能しない。水素化ホウ素ナトリウムを使ったシステムの場合も、ホウ砂を船上に積みこまなければならない。結局、卵が先かニワトリが先かという問題に突き当たってしまうのだ」とハブブルー社のシュミットマンCEOは語った。

[日本語版:米井香織/湯田賢司]