白石遼太郎ちゃん=当時(2)=と同じ胆道閉鎖症で苦しむ子供たちに渡航移植の道を開いてきた「遼太郎ちゃん基金」は国内での移植医療が発展したことで、役目を終える。残された約1700万円の善意は研究機関などに託され、子供の命を救う新たな糧になることが期待されている。

 1万人に1人の割合で発症する胆道閉鎖症は、肝臓と十二指腸の間にある胆道が詰まる難病だ。かつては手術で治らない場合は海外で移植手術を受けるしか助かる方法はなく、基金は数千万円と高額な渡航移植費用の一部を支援してきた。

 しかし、その後国内の生体肝移植技術が確立。脳死肝移植の道も開かれ、保険適用も可能になった。現在家族が多額の費用を負担して渡航手術をすることは極めてまれなケースという。

 遼太郎ちゃんの父、和敏さん(52)は基金終了にあたり、「遼太郎のかわりに小さい子供の手助けになればと基金を始めました。今後も病気で困っている子供のために生かされるよう期待します」と話す。

 その意向を受けて約1700万円の残余財産を託すのは、長年にわたり胆道閉鎖症治療の研究にあたってきた「日本胆道閉鎖症研究会」と、かつて遼太郎ちゃんが入院治療を受けていた順天堂大学だ。

 約1千万円を託す胆道閉鎖症研究会では、患者の登録・追跡調査の推進を検討しているほか、若手研究者を表彰する「遼太郎ちゃん賞」の創設など、何らかの形で「遼太郎ちゃん」の名前を残す意向という。同会事務局代表で東北大大学院小児外科学分野の仁尾(にお)正記教授(55)は「胆道閉鎖症の原因究明や予防策を見つけたい」と語った。

 約700万円を託す順天堂大学は、日本の胆道閉鎖症治療で高い実績を誇る。遼太郎ちゃんの主治医だった順天堂大学医学部付属練馬病院の宮野武院長(69)は「胆道閉鎖症をはじめとする病気の研究に使わせていただきたい」という。

 遼太郎ちゃん基金の志は、今後も形を変えて受け継がれていく。(油原聡子)

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【用語解説】遼太郎ちゃん基金

 胆道閉鎖症の治療のため、全国から集まった募金で平成元年に渡豪、肝臓移植手術を受けた後に亡くなった東京都北区の白石遼太郎ちゃんの両親と「遼太郎ちゃんを守る会」から、産経新聞が1576万9955円の寄託を受けて作られた基金。平成4年に渡豪し移植手術を受けた岐阜県山県市(旧高富町)の小学4年、山田晴香ちゃん=当時(10)=ら、胆道閉鎖症の子供の渡航移植費用の一部支援などを行ってきた。寄せられた善意の残余財産は25日現在1739万4104円。

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