小説「ハイスクール・ボブ」 17-2 | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~

 

17 インナー刈り上げ
(2)

6月27日
 その日の6時限目の授業が終了した。
 終業のショートホームルームの時間だ。
 担任の三原雪が教室に入ってきた。

学級委員「起立」、「礼」、「着席」
三原「このプリントを後ろの人へ回してください。」
 三原は最前列の席の生徒にプリントを渡した。
 そして、一番後ろの生徒までプリントが配られると生徒たちに連絡事項を伝えた。
三原「今配ったプリントを見てください。すでに校舎の入口や廊下の掲示板にも掲示していますが、最近、スクールボブのサイドの内側を刈り上げている生徒を見かけます。」
 プリントにはサイド内側刈り上げについての扱いについて書かれている。掲示板に貼られている内容と同じだ。
三原「サイドの内側を刈り上げることについて、それを認めるかどうかは現在生活指導部と生徒会本部と風紀委員会で協議中です。」
三原「今現在、1年2組の生徒の中で、サイドの内側を刈り上げている生徒はいませんか。いたら手を挙げてください。」
 教室内はシーンとしている。
三原「別に叱ったりしません。参考でどれぐらいいるか聞いてるだけです。いませんか。」
 サイドの髪に隠れているのでわからないが、実際には刈り上げている生徒もいるかもしれない。しかし手を挙げる生徒は誰もいない。」

三原「1年2組には誰もいないようですね、結果が出るまでは、サイド内側刈り上げをしないようにしてください。」

 実際、1年2組にはサイドを刈り上げている生徒は一人もいなかったのだ。
 三原からの説明を聞いて、教室内にざわめきが起きる。
「えーっ、クラブの先輩がやってたから、私も今日、部室で先輩に刈ってもらう約束だったのに。」
「えっ、内側刈り上げたらだめなんだ。私はそんなの知らなかった。今初めて知った。」
「上級生がやってるのを見たけど、サイドの髪を耳に掛けてて、カッコいい感じだし、涼しそうだったわ。」
「これから暑くなるし、部活やってるから熱中症対策にもなると思うんだけど。」
「私もひそかにしようと思ってたのに・・・」
三原「はいはい、みなさん、静かに。」
 ざわついている教室内を三原が静かにさせようとしている。
三原「次の連絡事項は・・・」
 三原が連絡事項を話している間も、教室のあちこちで生徒たちの私語が聞こえる。
三原「はい、みなさん、私語はやめて、静かに。」
 生徒たちは、私語をやめて、教壇の三原に注目した。
三原「では、今日の終業のホームルームを終わります。」
学級委員「起立」、「礼」、「着席」
 終業のホームルームが終わり、理奈たち2組の生徒たちは、教室を出ていった。

 この件はすでに生活指導部と生徒会本部と風紀委員会で案件に挙がっていて、生活指導部と生徒会本部と風紀委員会は連日協議を重ねていたのだ。
 生徒指導部は、「尼学生の品位を損なう恐れがある」といってサイド内側刈り上げに反対していた。
 生徒会本部は、「内側を刈り上げることで頭部が涼しくなり熱中症対策にもなる。」といってサイド内側刈り上げに賛成していた。
 風紀委員会も、「サイドの髪を耳に掛けなければ外見上は規定のスクールボブと変わらない。だから尼学生の品位を損なうことにはならない。」といってサイド内側刈り上げに賛成していた。
 生徒会本部と風紀委員会は、生徒側の立場でサイド内側刈り上げのメリットをアピールしていた。
 そして、生活指導部と生徒会本部と風紀委員会、オブザーバーに学園美容室も交えて協議に協議を重ねた結果、最終的に次の条件で合意に達したのだ。
 スクールボブのサイド内側刈り上げを認める条件
1 サイド内側刈り上げは、夏仕様カットの期間(6月~9月)に限り認める。
2 サイド内側刈り上げの範囲は、耳周りの一番上部の生え際から上におおむね3センチまでの水平のラインとする。
3 サイド内側刈り上げは、片側サイドのみでも両サイドでも可とする。
4 授業中や職員室内では、サイドの髪を耳に掛けてサイドの内側の刈り上げを露出させてはいけない。

 生徒側の意見が認められたのだ。
 なお、今回の件は、校則の改正ではなく、運用の変更という形となった。

 

つづく