小説「ハイスクール・ボブ」 15-10 | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~
 

15 定期カット

(10)

 5月7日
 ゴールデンウィークの最終日だ。

 また、1年生のカット指定日の最終日でもあった。

理奈「じゃ、学園美容室へ行ってくるね。」

有紀・倫・京 「行ってらっしゃい。」
 全体の朝食が終わり、理奈は身支度を済ませると、ジャージ姿で学園美容室に向かった。

 理奈は、寮棟から学園美容室のある食堂棟への通路を歩いて行った。
 理奈の少し前を同じように食堂棟へ向かって歩いている女子生徒がいる。
 後ろ姿の髪の伸び具合から理奈と同じように学園美容室に向かっている女子生徒のようだ。
 理奈は、その女子生徒の後を追うように食堂棟に向かった。
 食堂棟の2階に学園美容室がある。
 2階には学園美容室の他に購買店もある。
 理奈は食堂棟に入って階段を上がり、学園美容室の入口の前に着いた。
 学園美容室の中の照明は点いているが、まだ開店の3分ぐらい前なので入口は閉まっている。
 入口のガラスドアには「CLOSED」のプレートが掛かっている。
 入口の前には、すでにカットを待つ1年生の生徒が4人並んでいる。
 さっき理奈の前を歩いていた生徒も理奈のすぐ前に並んでいる。
 急いで出たつもりであったが、理奈は5番目だった。
 理奈の後ろにもすでに後から来た生徒2人が並んでいる。
 1番目と2番目に並んでいる生徒が話をしている。
「なんだかドキドキするわね。」
「そうね、初めて行く美容室ってなんか不安なんだよね。」
「希望どおりのスタイルになるか不安だよね。」
「でも、今回は希望も何も先月にカットした時と同じスタイルにするだけだからその心配はないよ。」
「たしかにそうよね。だったら不安はないか。」
 3番目と4番目に並んでいる生徒も話をしている。
「この学校に入学するまでずっとロングだったからカットなんて年に2、3回だったからカットしてたった1か月でまたカットするというのがすごく新鮮な感じだわ。」
「私もロングだったからたった1か月で次のカットに行くようなことはなかったわ。」
 3番目と4番目に並んでいる生徒の横の壁には各学年のカット指定日が書かれたカレンダーが貼られている。
 3番目に並んでいる生徒がカレンダーを見ながら言っている。
「今日カットしたら次は6月5日から11日なんだね。」
「5週間に1回だと本当にすぐって感じだよね。」
「なんだかこれからもずっとカットに追われるって感じだよね。」

「でも、カット代がかからないからそれはそれでいいかも。」
 9時ちょうどになり、中から入口のドアが開いた。
 美容師の後藤佳代は、「CLOSED」のプレートを裏返して「OPEN」にした。
 入口前の廊下に並んでいる生徒が順に店内に入っていく。
 理奈も前に並んでいる生徒に続いて店内に入っていく。
 理奈にとっては、学園美容室の中は、入学後のオリエンテーションの学校内の施設紹介の時に少し入口から中を見ただけだったので、美容室の中に入っていくのは初めてだった。
 美容室内には店長の天草をはじめ、4人の美容師が立って待っている。
美容師「おはようございます。」
生徒「おはようございます!」
 美容師の後藤佳代が店内に入っていく生徒を案内する。
 生徒たちは、学園美容室でのカットは初めてなので少し戸惑っている。
後藤「1番目に並んでいる方から順番に生徒証をカードリーダーに通してください。」
 生徒たちは、生徒証を取出して、並んでいた順にカウンターに置かれているカードリーダーに生徒証を通していく。
「ピッ」
 理奈も前に並んでいる生徒に続いて、生徒証を取出して、カードリーダーに生徒証を通した。
「ピッ」
 カードリーダーの上部の液晶画面には現在の時刻と理奈の生徒番号が表示されている。
「では、1226番、1227番、1134番、1138番の方、カット席へどうぞ。」
 カウンターでノートパソコンの画面を見ながら後藤が生徒番号で読み上げる。
 学園美容室の店内には4つのカット席が並んでいる。
 1番目から4番目までに並んでいた生徒がそれぞれカット席に向かって行く。
 4人の生徒はカット席に座った。
 5番目の理奈は待合の長椅子に座った。

 6番目、7番目の生徒も理奈の同じ長椅子に座った。
 学園美容室は生徒のためのような美容室なので、待合の椅子もソファではなく、レザー張りで三人掛けの長椅子が2つと座面が丸くなっているレザー張りで1人用のスチール製の椅子が壁際に数脚重ねて置かれている。
 生徒がカット席に座るとそれぞれの席に担当の美容師がやって来た。
 これからカットが始まる。
 理奈は長椅子に座って、カット席の方をじっと見ている。
 

つづく