小説「ハイスクール・ボブ」 15-4 | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~
 

15 定期カット

(4)

 2023年5月4日
 ゴールデンウィークの5連休2日目。

 理奈は、この日から6日までの2泊3日、実家に帰省する予定だ。
 303号室の4人は朝食を食べ終え、寮室に戻った。
 理奈は、帰省のため私服に着替えている。
理奈「じゃ、地元に帰って中学の時の友人に会ってくるわ。」
倫・京「気を付けてね。」
有紀「おみやげ忘れないでね。」
理奈「わかってるって。」
有紀「じゃ、行ってくるね。」
有紀・倫・京「行ってらっしゃーい。」
 理奈のファッションは、長袖のトレーナーにひざ丈スカート、白のクルーソックスだ。
 昨日の有紀と同じようなかわいい系のファッションだ。
 理奈のこのファッションもスクールボブが意外とマッチしている。
 理奈は、寮室を出て、麓の市街地行きのスクールバスに乗るため、学園正門前ロータリーにある送迎バス発着場に向かった。
 バスの発車10分前、ロータリーにはすでにバスが止まっている。
 バスの側面には「学校法人尼曽根学園 尼曽根学園女子高等学校」と書かれている。
 尼曽根学園の関係者専用の大型のバスだ。
 理奈は、このバスに乗るのは初めてだ。
 バスに乗る要領は入学直後のオリエンテーションで生活指導の大河内から聞いていた。
 制服の時は、制服と髪型で本校の生徒だとわかるから顔パスで乗車できるのだった。
 私服の時は、本校の生徒であることを証明するため、乗車の際に生徒証を運転手に呈示しなければならなかった。
 とはいえ、私服でも髪型がスクールボブなので学園側から乗る時は、髪型であきらかに本校の生徒であることがわかるのだが。
 理奈は、バスの前の乗車口からバスに入り、運転手の前で生徒証を運転手に見せた。
理奈「お願いします。」
 ワイシャツに制帽姿の運転席の男性運転手は、会釈をして返答した。見た目60代前半ぐらいのようだ。

 この運転手は元々バス会社で大型観光バスの運転手をしていたのだ。定年後に尼曽根学園に再就職してスクールバスの運転手をしている。
 理奈は、バス内の通路を後方に向かって歩き、空いている2人掛けのシートに座った。
 バスの中には、外出目的の私服姿の生徒がすでに10人ぐらい座っている。また、部活のジャージ姿の生徒も5~6人位座っている。対外試合なのだろう。
 発車時刻が近づき、外出目的の私服姿の生徒、部活のジャージ姿の生徒たちが次々に乗車してくる。
 いつの間にか、バスの座席の9割ぐらいに生徒が座っている。
 定刻になり、バスの乗降用扉が自動で閉まった。
運転手「これより、駅前行きのバスが発車します。山道を走るのでシートベルトを締めるようお願いします。」
 バスはゆっくりと動き出し、ロータリーを回って校門を出た。
 バスは山道を走り、ふもとの駅前に向かっている。
 入寮の時に父のアルファードで通った道だ。
 あれから約1か月が経ち、道路の両側の木々の新芽は緑色の若葉になっている。
 また、道路の両側のあちこちには濃いピンク色のツツジの花が咲いている。
 学園を出て45分ぐらい走ると、ふもとの平地に入り、バスは駅前を目指して走っている。
 平地に入ってからさらに10分ぐらい走り、バスは駅前に着いた。
 所用時間約1時間弱のバス旅だ。バスは駅前のターミナルで停車した。
 もっともターミナルと言っても都会にあるような大掛かりなものではなく、ただ駅前が車両の回転用に広くなっているだけのところだ。
 いちおう地元の路線バスの停留所にもなっているので大型バスでも十分転回できる広さになっている。
 運転手「駅前到着しました。忘れ物のないようお願いします。お疲れさまでした。」
 バスの前左側の乗降用扉が自動で開いた。
 前の方の席に座っている生徒から順にバスを降りていく。
 降りる時は、特に生徒証を見せる必要はなかった。
生徒「ありがとうございました。」
 生徒たちは、運転手にお礼を言ってバスを降りている。
 これも暗黙の決まりなのだろう。
 理奈も運転席前を通る時に
理奈「ありがとうございました。」
と言ってバスを降りた。
 バスから降りるとすぐ前に駅舎がある。
 田舎なので小さな駅だ。
 駅の周りにはバスから降りたばかりの尼曽根学園の生徒があちこちにいる。
 地元の高校生も混じっているようだが、髪型で尼曽根学園の生徒だということが一目でわかる。
 学園以外の場所でスクールボブの生徒を見るとよく目立つようだ。
 もっとも地元の住民たちからは、スクールボブの髪型で尼曽根学園の生徒だということがわかっているから、休日には普通に見られるため、見慣れた光景のようだ。
 それだけに悪いことをすると、尼曽根学園の生徒ということがばれてしまうのだ。
 なのでスクールボブが生徒の非行防止に一役買っていたのだった。
 理奈は、列車に乗るため、駅の改札を通り、ホームに向かった。
 理奈は、ふもとの駅のホームで列車が来るのを待っている。
 ローカル線なのでホームも一つしかない。
 ホームにいる人のうち、高校生と思われる年代の女子の8割ぐらいが尼曽根学園の生徒だ。
 私服姿でもスクールボブの髪型で尼曽根学園の生徒だということが一目でわかる。
 残りの2割の高校生女子は他校の制服であったり、髪型がロングヘアだったりするので地元の女子高校生なのだろう。

 ホームのあちこちにスクールボブの髪型の尼曽根学園の生徒が電車の到着を待っている。
 もっとも理奈もその一人だ。

 理奈は、ホームで隣の乗車位置で列車を待っている他校のブレザーの制服を着た肩下のロングヘアの女子高校生を遠目にじっと見ていた。

 セーラー服にスクールボブの髪型の尼曽根学園の生徒とは対照的だったからだ。

 連休中の午前中にも関わらず、一般の利用者は少ないようだ。
 ホームでしばらく待っていると2両編成のディーゼルの列車が入ってきた。
 理奈が行く方面行きの列車だ。
 ローカル線なので電車ではなくディーゼル車だ。
 理奈は、その列車に乗り込んだ。

 

つづく