小説「ハイスクール・ボブ」 13-(2) | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~

13 入学式

(2)
 まもなく入学式が挙行される。
 理奈たち新入生は、体育館の入口で、1組から順に1列に並んで待っている。
 理奈の前には40人の1組の生徒と、その後に9人の2組の生徒がいる。
 体育館の中には、すでに2年生、3年生の在校生とその後ろには、新入生の保護者たちがパイプ椅子の座席に座って入学式の開始を待っている。
 入り口から正面の舞台方向を見て、右側が1組で左側が2組だ。
 体育館内は、保護者などの外部の人が入るため、フロア全体に薄緑色の土足用シートが敷き詰められている。
 なので下履きのローファーのまま体育館に入ることになる。
 入口前で並んで待っていると、首から一眼レフカメラを掛けて、制服の左腕には「広報」の腕章が着けられている広報委員会の委員が新入生の写真を撮っている。
 
「ブーーーーーーーー」
 大体育館内に定刻のブザーが鳴った。
 司会進行は、放送委員会の委員の生徒が別室から放送している。
放送「それでは新入生が入場します。拍手でお迎えください。」

 1組担任の松原美夏を先頭に1組の生徒が大体育館へ入っていく。

 大体育館内に拍手が沸き起こる。
 先頭を歩く1年1組担任の松原 美夏は、黒色のフォーマルのスーツにベージュのストッキング姿で足元は黒色のパンプスを履いている。胸には白色のバラの飾りを着けている。
 松原の髪型は、前髪を作らないあごラインで前下がりワンレングスのボブヘアで、後ろ髪は、襟足を作らず、サイドからのラインがそのまま反対側のサイドまで続いている。
 後ろは、生え際のところでパツンと真っすぐに切り揃えられていて、襟足の生え際部分が少し剃り込まれていて青白くなっている。
 入学式に合わせて、この土日のうちにカットしたようだ。
 1組の入場に続き、1年2組担任の三原 雪を先頭に2組の生徒が入っていく。
 2組担任の三原 雪も、黒色もフォーマルのスーツにベージュのストッキング姿で足元は黒色のパンプスを履いている。
 三原の髪型は、前髪のある、あごラインの前下がりのボブヘアで後ろは、理奈たちと同じように綺麗に刈り上げられている。
 理奈は、前の生徒が歩き出すと、続いて歩き出し、大体育館の中に入っていった。大体育館の中央の通路が新入生入場の花道となっている。
 理奈は、まっすぐ前を向いて歩いていく。
 体育館に入って一番出入口に近いところが保護者席だ。
 保護者席の横を歩いていると香水と化粧と防虫剤の合わさった匂いが漂っている。
 防虫剤の匂いは、多くの保護者がクローゼットやタンスの中から今日のためにとっておきの服を出してきたからなのだろう。
 保護者席の横を通り過ぎると、その前は3年生の席だ。
 そしてその前が2年生の席だ。
 理奈たち新入生は、体育館の中央部の1組と2組が座っている間の花道を歩いて、一番舞台側の新入生の座席に向かって歩いていく。
 2年生、3年生の在校生の席を見ると、スクールボブにカットされた生徒が並んで座っている後ろ姿が視界に入ってくる。
 2年生と3年生は、始業式前カット指定日の規則で、今年は4月1日から4月9日までの間にカットをしていなければならなかった。そのため、どの生徒の髪も切りたてといった感じだ。
 理奈は、自分の席に着き、椅子に座った。
 理奈は、第体育館の中を見渡した。
 正面の舞台上には、演台があり、演台の上には、鉢植えの松の盆栽が置かれている。
 舞台の後ろには、学校法人の学園旗と尼曽根学園高校の校旗が掲げられている。
 その上には「祝 尼曽根学園女子高等学校 入学式」と書かれた横断幕が掲げられている。
 向かって左側の一番舞台側に進行用の演台がある。
 向かって左側は、学校関係者の席となっている。大体育館の中央部に向かって2列に並んでいる。
 そして、前列の最上席に校長、次いで教頭、事務長、各学年の主任、担任等の順に教職員等の学校関係者が座っている。
 生徒寮の寮母や調理員等の関係者は二列目に座っている。
 向かって右側には、来賓側の席となっている。理事長を最上席に、副理事長、理事等の法人としての学園関係者、保護者会代表、同窓会代表などが座っている。 

 寮監も来賓側の席に座っている。
 小倉美容室の社長も来賓として招待されていて来賓席に座っている。
 本来だとこういう式には行政機関の関係者、教育長、議員などが来賓として参列するところだが、尼曽根学園ではそういった者は一切呼んでいない。
 学園関係者と法人や高校に深い関わりのある方だけを来賓として呼んでいたのだった。
 新入生全員の入場が終わり、新入生たちは席に着席した。
 最終的に、新入生は、1組40人、2組39人だ。
 出席番号が理奈の次の佐山春香は、入学しなかったのだ。

放送「開式宣言」
教頭「只今から、2023年度、尼曽根学園女子高等学校、入学式を開式します。」
 教頭の久我 武光が舞台下左側の演台で開式を宣言する。
放送「入学許可宣言」
 校長の尼曽根が壇上に上がり、原稿を読み上げる。
校長「入学許可 尼曽根学園女子高等学校 全日制課程 普通科 第103回生第1学年に79名を入学を許可する。2023年4月11日 尼曽根学園女子高等学校校長 尼曽根 雅志」
 ここで正式に79人の新入生の入学が許可されたことになる。
 この時点でスクールボブになっていなければ入学許可はされないのだ。
放送「学校長式辞」
 校長が引き続き、壇上で話を始める。
 理奈たちは、起立した状態で校長の話を聞いている。
 校長の話が終わった。
放送「理事長祝辞」
 校長が降壇し、理事長の尼曽根 恵子が登壇した。
 理事長が壇上に上がると、左側の教職員席が張り詰めた空気に変わった。

 教職員たちはピンと背筋を伸ばして理事長に注目した。
慶野「礼」
 理事長の尼曽根 恵子が原稿を読み上げる。
 校長の尼曽根 雅志と理事長の尼曽根 恵子は夫婦で、夫の雅志は婿養子だ。
 校長は高校のトップではあるが、学校法人のトップは理事長だ。

 なので校長より理事長の方が格が上だった。

 理奈は理事長の祝辞をじっと聞いている。
 理奈は、校長や理事長を見るのはこれが初めてだし、理事長と校長のどちらが偉いのかということもまだよくわかっていない。

 おそらく他の新入生たちも同じ状態なのだろう。とにかく上の偉い人だという認識だ。ただ、話をじっと聞いているという感じだ。
 張り詰めた空気の中、入学式は粛々と進んでいった。

 

つづく