小説「ハイスクール・ボブ」 8 | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~

8 生活指導
 10時40分になり、理奈たち303号室の4人は、寮生集会所の中で最も広い部屋のホールに集まった。
 ホールには二人掛けの長テーブルとパイプ椅子が並べられている。

 正面にはホワイトボードとプロジェクターが準備されている。「席は自由」とプロジェクターの画面がホワイトボードに映し出されている。
 理奈は、同じルームメイトの河田倫と同じテーブルの席に座った。
 前から4番目の席だ。
 前3列のテーブルにはすでに生徒が2人ずつ座っている。
 理奈のすぐ前の生徒は後ろの髪をポニーテールにしていて、黒色のシュシュで束ねられている。
 机と机の前後の間隔が狭いので、前の生徒のポニーテールの束ねた髪が理奈のすぐ前に見える。
 前の生徒の頭が動くたびに、ポニーテールがブラブラと理奈の前で揺れている。
 さらにその前の生徒は、肩にギリギリ着く長さで、束ねることなくそのままたらしている。
 最前列の生徒は、後ろで左右に分けておさげ髪にしている。
 テーブルの各自の席の上には、生活指導の説明のための資料のプリントが置かれている。
 理奈は、テーブルの上に置かれている資料のプリントを手に取って、確認した。
 「生徒心得」
 少し厚めの冊子だ。中には校則について細かく書かれている。
 プリント類として
 「日課時限表」
 始業から放課後の部活動終了時刻までの時間の区切りが書かれている。
 「年間カット指定日予定表」
 各学年のカット指定日が書かれているカレンダーだ。
 その他、生活指導関係のプリントが数種類・・・
 理奈は、資料をひととおり確認すると、資料をテーブルの上に置いた。

 定時になり、学年主任、1組担任、2組担任、学年副担任、生活指導の先生らが集会所に入ってきた。
 まだ、入学式を経ていないので、今はまだ生徒はお客さんだ。
「起立」「礼」の号令はなく、生徒はそのまま着席したまま生活指導の先生から説明が始まった。
 生徒たちの正面に立って説明を始めたのは、生活指導教諭の大河内 五月だ。生活指導教諭は2年の副担任と掛け持ちしている。
 女性で年齢は40代後半、身長は160センチ前後で普通の体型で、髪は黒髪で、前下がりのショートボブにしている襟足は綺麗に刈り上げられている。
 ホールの前方の両端には、新1年の学年主任の慶野淳子、1組担任の松原美夏、2組担任の三原雪、学年副担任の柳涼子らが立っている。
 大河内は、これからの学校生活における規則などをプロジェクターに映して説明を始めた。
・学校内の施設について
・一日の日課時限について
 など、学校生活における細かいことについて説明していた。
 そして、制服についての説明が始まった。
 生活指導教諭の大河内五月が説明を始めた。
「本学園では、制服は伝統を重んじたセーラー服を採用しています。スカートはプリーツスカートです。スカートの丈はひざの高さです。長すぎても短すぎてもいけません。」
「ソックスは、冬服時は黒色、夏服時は白色の学校指定のハイソックスです。ふくらはぎの所に尼曽根学園のイニシャル『A』のオールドイングリッシュ体の刺繍がワンポイントで入っています。」
「4月から5月末までと10月から翌年3月までの間は、冬服になります。冬服時は黒色のハイソックスです。」
「6月から9月末までの間は、夏服になります。夏服時は白色のハイソックスです。」
「12月から2月までの厳寒期は、ソックスの代わりに黒色のストッキングを着用します。」
 大河内は、プロジェクターで制服姿の生徒のサンプル画像を映しながら説明をしている。
 スクリーン代わりのホワイトボードにプロジェクターの画面が映し出されている。
 画面には、ホームページの生徒専用ページの制服紹介で使用されている画像が表示されている。
 冬服での前からの写真と後ろからの写真
 夏服での前からの写真と後ろからの写真
 コート着用での前からの写真と後ろからの写真
 これらが順にスクリーン代わりのホワイトボードに表示される。
 モデルはどれも同じ生徒だ。風紀委員長のだ。
 理奈にとっては、すでに自宅のパソコンで観たことのある画像だった。
 ここで、自宅のパソコンでこの画像を観たことのある生徒や勘のいい生徒は気づいていることがあった。
 冬服、夏服、コート着用での後ろからの写真では、モデルの伊達花凛の襟足の刈り上げの長さが違っていた。短い順に、夏服、冬服、コート着用となっている。
 これは、この後の髪型についての説明でわかることだった。
 制服についての説明が終わった。
 次に、髪型についての説明が始まった。
 プロジェクターの画面には、ホームページの新入生用ページの髪型チェックポイントで使用されていた冬の制服姿の生徒の正面からと、右横からと、真後ろからの写真が映し出されている。
大河内「本学園生徒は、次に規定する髪型『スクールボブ』とします。」
大河内「前髪は、眉毛にかからない長さで、眉毛の端から反対の眉毛の端までの幅で横一直線に切り揃えます。」
大河内「両サイドは耳穴が見える高さで水平に後ろの髪まで横一直線に切り揃えます。」
大河内「後ろ髪は、上の髪は両サイドから水平に切り揃えて、その部分から下の襟足部分は刈り上げます。」
 生徒たちは小声で周りの生徒と話をしているため、あちこちからひそひそと話声が聞こえてくる。
 どの生徒も、スクールボブにしなければならないこと、
 スクールボブに定期的にカットしなければならないことに不安を感じているようだ。
 理奈も例外ではなかった。理奈も隣に座っている倫と小声で話をしていた。二人ともスクールボブにしなければならないことに不安を感じているようだ。
 大河内は、さらに細かく髪型の説明を続けた。
大河内「襟足の刈り上げの長さは、通常は6ミリですが、6月から9月末までの夏服着用期間は3ミリです。また、12月~2月のコート着用期間は9ミリです。」
 ホームページの髪型紹介のチェックポイントのところで伊達花凛のアバターが説明していた内容と同じだ。
 ここで、理奈は、先ほどの制服紹介で冬服、夏服、コート着用と、時期によってモデルの襟足の刈り上げの長さが違っていたことが納得できた。
 しかし、理奈は写真の雰囲気から同じ時期に撮影したと思われるのにモデルの襟足の刈り上げの長さが違っていることが不思議に思えた。
 実はこの時の撮影には、裏話があった。
 この撮影は、実は1日で済ましていたのだ。
 風紀委員長の伊達花凛は、最初に、学園美容室で襟足を9ミリに刈り上げて、コート姿の写真を撮影した。
 コート姿の撮影後すぐに学園美容室で襟足を6ミリに刈り上げ直して、冬服姿の写真を撮影した。
 冬服姿の撮影後またすぐに学園美容室で今度は襟足を3ミリに刈り上げ直して、夏服姿の写真を撮影していたのだ。 
 ホームページに正確な情報を掲載するため、自らが見本となって制服と髪型の関係を規定どおりにあわせてモデルになっていた。まさに風紀委員長の鑑だ。

 

つづく