香取 一昭,大川 恒
日本経済新聞出版社
発売日:2009-11-13
ワールドカフェの存在を知ったのは去年、大学の卒業生室が企画してくれているイベントでした。残念ながらその回は出張で参加できなかったのですが、それ以来ワールドカフェ自体に興味を持ち、この本を手に取りました。

ワールドカフェの利点は、大勢の参加者がいる中でも、少人数のグループで議論を重ねることで、あたかも全員と意見を共有して一つの想いを共有できた気になれること。
それは、講演を聴くだけとも違い、個々のディスカッションとも違う、新しい『参加』の仕組みだと思います。

では何故今ワールドカフェが流行っているのか。
それは、世の中がピラミッドのようにコントロールされた世界から、個々がコラボレーションして相互依存関係を複雑に結ぶ、蜘蛛の巣のような体系に変化しつつあるから。
その要因は様々だが、本書で述べられているのが大きな価値転換。知識のサイクルが短く多様化し、さらにネットワークを通じて誰もが様々な情報に触れられる今、もはや一握りのリーダーが己の知見のみで戦略を下す時代ではなくなりつつある。一方で、スピードと効率を追求してきた結果、人々は人間味を失って孤立してしまった。
このような背景の中、コミュニケーションの必要性は益々高まっていると思います。

その中でワールドカフェは程よい距離感とリラックスした雰囲気により、様々分野の人が、立場、主張を越えて自由に議論できる、今の時代にまさに”ちょうどよい”コミュニケーションスタイルです。

具体的には、4~5人のグループを作り、予め設定されたテーマについて議論をし、アイデアや意見をテーブルに置かれた模造にに書き込んだり結んだりしていく。そしてホストを残して次のテーブルに旅立ち、この議論を数回繰り返して再び元のテーブルに戻る。その時、それまで書き上げられた模造紙の中から、参加者の共通意識がぼんやりと見えてくる。
それを最後全体ダイアログでまとめ上げていくことで、あたかもその場の参加者全員と会話をし、意識を共有できた気になる。

具体的には本書の中に本当に丁寧に書かれているので、これ一冊読めば誰でも開催できる。
そして何よりも、カフェ=リラックスした雰囲気が大事だ。

ワールドカフェは現代のコミュニケーションツールとして、非常に可能性を感じる。
まだ卒業生室のワールドカフェには参加できていないけど、先に自分達で開催してみようと思ったのでした。





本のタイトルがインパクト強いので、そのままブログタイトルにひらめき電球
photo:01


先日ライブドア事件で収監されて世間を賑わしたホリエモン、実は宇宙開発をしているって知ってました?それもかなり本気です。この本を読めば本気度がわかります。
色々と宇宙開発について勉強になる一冊なので、ご紹介します~

堀江 貴文
講談社
発売日:2011-04-19
本書によると、IT起業家には宇宙開発に投資をする人が多い。ホリエモンもしかり?で、かつて宇宙へ行くカプセルの開発に投資し、現在は北海道赤平にある植松電機(詳しくは『NASAより宇宙に近い町工場』にて)の土地で小型衛星用のロケットを開発している。

そんなホリエモンが本気で宇宙開発の現状にメスを入れたのが本書。公共事業からの脱却から、ビジネスベースへの転換を提唱し、豊富な裏付けに基づいた主張は納得いく事も多かった。

その主張は、ロケット・衛星の開発は民間で行い、ビジネスに乗らない宇宙科学分野を国家機関で実施するという事。
民営化を促すポイントとしては、①開発補助金②制度面の優遇③運用サポート。
開発初期を資金面でサポートし(キーワードはアンカーテナシーとコストアンドアワード)、衛星の電波や飛行に関する優遇をし、発射台の提供や信頼性の低い打ち上げ初期の衛星発注を約束する(EVの補助金みたいなもの)。
また新規ベンチャーが開発を成功させるポイントとしては、アポロ時代など予算が青天井の時代に確率された技術をシードマネーで安く買い取り、確実にステップアップしていくやり方だ。

このモデルは既に民間のスペースX社で実現されている。この会社はアポロ時代のエンジン技術をベースに、短期間でのロケット開発を成功させ、現在はファルコン9という、日本のH2-Aと同等の打ち上げ能力を持つロケットを、その半額のコストで実現させており、さらにドラゴンXでペイロードの大気圏再突入も果たしている
この事実はショッキングだった。

また宇宙開発が公共事業となった例が、スペースシャトル開発。固体ロケットのSRBは打ち上げ後回収して燃料を詰め直すのだが、政治的な力が働いたのか、それを発射場から遠く離れたユタ州で行い、電車で往復させる為に効率が悪い。運搬する為に構造は4分割となっているのだが、86年にはそれに起因したチャレンジャー号の爆発事故が発生している。公共事業となっている故に効率が悪いという主張だ。

そして宇宙開発のビジネス化を促進させるキーが、超小型衛星、むしろ携帯電話。携帯のような、小型かつ高度な電子機器の集積物を衛星として安価に大量に打ち上げる事で、補完した通信網の構築や、低価格空撮サービスといった新たな宇宙ビジネスの商品が生まれる。
そしてホリエモンは小型衛星を専門に打ち上げる低コストの小型ロケットの開発を先の北海道で行っている。

この本は宇宙開発に関する知識が膨大かつ新鮮で活き活きしている。特に民間における宇宙開発の現状をざっと知ることが出来る。ホリエモンの宇宙への熱意、そして開発への意欲が伝わってきた。
ビジネスベースで開発を行う一番のメリットは時間的効率の良さだと思う。過去を振り返ると、開発計画が長期にわたる為に、途中で開発方針が転換したり、プロジェクトが頓挫することが多過ぎる(本書のNASAの有人火星計画も然り)。その度にエンジニアは翻弄されてきたのだと思う。一方でスペースXやスケールドコンポジットなどの開発はスピード感に富んでいる。
先の例のように、民間の活力・ビジネスの仕組みと、国家の蓄積・サポートを上手く組み合わせて、宇宙開発を加速させていけばよいのでは無いだろうか。





iPhoneからの投稿

今日は立て続けに電力問題の話題が舞い込んできました。


まず訪仏中の菅総理の演説。自然エネルギーをエネルギー政策の第4の柱と位置付け、住宅に太陽光パネルを普及させることで2020年までに20%まで引き上げる予定であると。
次にソフトバンクの孫正義社長の自然エネルギー協議会設立のニュース。各県から休耕地を提供してもらい、そこにメガソーラーを建設する。孫さんの話では、①全国の休耕地の20%に太陽光パネルを設置するだけで、関西電力の発電量を超える電気が作れると。
最後に大阪府の橋下知事の話で、家庭やマンションのソーラーパネル設置義務化といった言葉も飛び出しました。

日本の技術を考えよう! 日本の技術を考えよう!

どれもキーワードは”太陽光発電”ですね。そんな折ちょうどこの本を読んでいたので、その内容も絡めながら少し議論してみたいと思います。

第4の産業革命/藤原 洋
¥1,470
Amazon.co.jp

まず孫さんの①の発言ですが、実際どうなの?と。
世界規模で考えると、本著によれば太陽からの輻射エネルギーは174pW(pぺタ=10^15=1000兆)。それに対して人類の必要なエネルギーは1pWでよい。およそ170分の1をエネルギー変換すればよく、それは砂漠の4%の面積に変換効率10%のソーラーパネルを設置すればよい計算になる。


ではソーラーパネルメーカーの実力は?現在1位はQ-Cells(ドイツ)、2位はファーストソーラー(アメリカ)、3位はサンテック(中国)、4位にようやく日本のシャープ、6位に京セラ、10位に三菱電機。日本メーカーは一昔前から徐々にシェアを落としています。


そんな中シェアを伸ばしたのが、1位でもあるドイツのQ-Cells。その裏にはドイツ政府のフィードインタリフ制度があります。この制度は電力会社が、家庭や工場の太陽光発電を全て買い取る制度で、さらに政府の補助金もあります。電力会社は買取による負担を電気料金の価格に上乗せできます。確かに賠償負担を電気料金に上乗せされるより、よっぽど納得できます。
太陽光パネルのメインは一般家庭向けで、日本メーカーは足元での需要が伸びず、輸出に頼っている。現在の輸出比率は8割にものぼるとか。
その点、孫さんの構想でもし国内に需要が創出できれば、日本メーカーの生産量も伸び、価格競争力をつけてさらに世界に打って出る、という流れも作れます。
さすがコンスタントに数千億の利益を生み出す孫さんの英断ですね。企業の内部留保を溜め込むより、その数%でも「きっかけ」として太陽光発電に投資することで、供給のスパイラルを生み出せるのですから。さらにビジネスベースに載せると言っているのも、凄いですね。

日本の環境エネルギー関連技術は世界的に見ても進んでいます。この優位性を生かすために、このような民間のビジネスベースも大事ですが、官(菅)のリーダーシップも発揮してもらいたいものです。


本著では、これからのエネルギー革命の骨子を次のように述べています。まず太陽光発電の普及による太陽経済の実現。太陽光の不安定さは、スマートグリッド電気自動車の電力貯蔵機能とあわせて補完する。さらに、グリッド同士では超伝導による高効率送電を実現させ、ゆくゆくはGENESIS計画=地球電力ネットワークを構築させ、全人類が必要なエネルギーを全て太陽光で賄い、お互いに需給できるシステムを構築する。


実際実現しようとなると、いろいろ問題があると思います。例えば太陽光パネルも、砂漠に放置しておくだけでは砂塵で汚れて効率が落ちるという話も聞いたことがありますし。
それでも今回の原発危機の一件から、「どうせ無理、原発一辺倒」という流れから、「いや、出来ることから始めよう、自然エネルギーも柱に!」という変化が確実に起きていると思います。
そんな勢いを確実に感じ取れた今日一日でしたし、ちょうどこの本を読んでいたというのも何かの縁だったのでしょう。


ブクログのレビューを載せておきます↓




藤原 洋
朝日新聞出版
発売日:2010-07-07
今日ソフトバンクの孫社長が、メガソーラーに関する協議会を立ち上げた話題でもちきりでしたが、そんな日に読んだこの本。
太陽光発電についてとてもしっかりと書かれている本です。

まずタイトルについてですが、世界はこれまで動力革命、科学変化、デジタル情報と3つの革命を経験し、その間エネルギー消費を拡大してきた。特にデジタル革命によるITは「増エネ」であり、消費を引き上げている。そこで、太陽光発電を中心とした第4次産業革命=エネルギー革命が必要な時代となっている。

ショッキングだったのが、IT=「増エネ」という事実。パソコンの高速化や、データセンターの巨大化で、IT消費電力は現状全体電力の5%に対し、2025年には40%を占める予想。ITが進めば移動が少なくなり、交通分野のエネルギーが減るかと思いきや、意外にも現状で乗用車800万台分のCO2排出量に相当するとのこと。
筆者はこの現状を打破するために、石炭、石油経済から、太陽経済への変換を勧めています。太陽光発電の抱える問題は、安定性の乏しさ。昼間しか充電できませんから。
それを埋めるテクノロジーとして、スマートグリッドと電気自動車の普及。さらにグリッド間の高効率送電手段として、高温直流超伝導の必要性も論じています。
そしてそこに絡んでくる日本の存在。日本はこれらの技術でかなりの先行優位を保持している。それを有効なものとするためにも、官のリーダーシップが問われますね。
特に太陽光発電についての情報は質・量ともにかなり高度で充実したものとなっています。

著者の藤原さんは先日郵便EV事業で破綻したゼロスポーツの事業引き受けを表明した、京都のナノオプトニクスエナジーの社長で、実際に本著で論じている内容を実現しようと一線で活躍されている方です。
学術的なバックグラウンドもしっかりしており、これからのエネルギーを考える上で是非読んでおいて間違えのない本でしょう。

エンジニアというキーワードでこの本を読んでみました。

椎木 一夫
日本実業出版社
発売日:2005-10-20
エンジニアはよく不遇な扱いを受けていると思われがちです。薄給、多忙、出世出来ない。
しかし、「お客様に満足して頂く製品を自ら作る」という、他の仕事では得られない魅力がある職業。

先の文理格差の問題は改善しつつあり、逆にエンジニアの論理的思考やプロジェクトのマネジメント能力が見直されている。

あとは国際競争の視点。日本は安く大量生産で外貨を稼いできたが、今は賃金が高くなり、日本人一人雇うお金で中国人やインドの方を何人も雇えてしまう。
ここめ、日本は労働集約型から技術集約型の製品にチカラをいれていかなければならない。頭が痛い話。

本全体としては、かなりエンジニアに有利な話だったり、話題が細切れだったりしてあまり残らないが、エンジニアを志す就活生が読むにはいいかも。
特に最後の知的財産権の説明が詳しくて真理をついていて、製造業での特許の仕組みを知りたい人にもオススメですかね。





iPhoneからの投稿

今日はパシフィコ横浜で開催された自動車技術会の春季大会に参加してきました。

事前に気付かなかったのですが、プログラムを見るとホンダの伊東孝紳社長のキーノート講演があるではないですか!

生ではお話を聞いたことがなかったので、喜んで聴いてきましたよ。



日本の技術を考えよう!

↑ホンダ・伊東孝紳社長


開口一番、「話し方が上手い!」と感じました。声の響きや抑揚が聴衆を惹きつけます。おそらく社長職に就くにあたり、相当なトレーニングを行なったのでしょうが、伊東社長の想いがストレートに伝わってきます。エンジニアでも話が上手くないといけませんね。


テレビなどでホンダの方の話を聞いていると、エンジニアでも話が面白いなと思うことが多いです。今日の講演を聞いていて、おそらくその原点は、技術に対する確固たる想いを内に秘めていて、それがそのまま口に出ていることにあるんだ、ということ。



ホンダの代々の伝統の通り、伊東社長も技術畑出身で、長年車体設計でNSXのフルアルミボディを提案した当人であります。当時の苦労話を実話で話して頂けました。

面白いと思ったのが、伊東社長の原点が私と同じ航空工学だったこと。航空機設計を希望して入社したようですが、自動車の設計になったということでした。

アルミボディは航空機設計の王道。そんなバックグラウンドがあって、他に類を見ないあのボディが生まれたんだ、と初めて知りました。

日本の技術を考えよう!

↑世界初フルアルミボディ採用のNSX


また、先日より量産型の飛行成功のニュースが発信されているホンダジェットの話もされていました。

ホンダジェットを開発・生産するホンダエアロスペース社長の藤野道格さんは私の研究室の大先輩だったりします。開発当初は大学の専攻の図書室にもよく資料を借りに来ていたようです。

以前藤野さんの講演を聞いたことがありますが、日本のメーカーとしてオリジナルの航空機開発にかける熱い想いが非常に伝わってきました。

今日のお話の中で、藤野さんは逆に入社当時は小型スポーツカーの設計を希望していたとか。伊東社長と逆のパターンですね。


日本の技術を考えよう!

↑ホンダジェット。エンジンが主翼の上面に搭載されているのが特徴的。


携わる技術が変わっても、変わらない技術への想いをしっかりと抱き、それをきちんとモノにして世の中に出していく


今自分のやっている仕事がそんなダイナミックで、世間をあっと言わせてそして変えていける、普段の仕事に埋もれそうなそんな想いを再認識させて頂きました。