◆読書記録No.16◆

 

今度の不思議の世界は 

鏡の向こうの 

チェスの国!

鏡の国のアリス/作:ルイス・キャロル 訳:河合祥一郎(角川文庫)

 

「不思議の国」から半年経ったある雪の日。

子猫のキティと遊んでいたアリスは、暖炉の上の鏡をくぐり抜けてしまう。

そこは、赤と白のキングやクイーン、ナイトたちが住むチェスの世界だった。

アリスもチェスゲームに参加し、女王を目指すのだが…。

今作も個性あふれる登場人物とともに繰り広げられる、アリスの物語。

 

『鏡の国のアリス』は、ティム・バートン氏監督の『アリス・イン・ワンダーランド』に多く影響を与えているように感じた。

 

前作の『不思議の国のアリス』はトランプの世界だったが、本書はチェスの世界の物語である。

 

ストーリーもチェスのルールに沿って進んでいくので、チェスをやったことがないと、少々理解するのが難しい…。

 

しかし、前作同様に言葉遊びがふんだんに使われているので、リズムよく物語を楽しめる。

 

私の推しのトゥィードルダムとトゥィードルディーが出てきて嬉しかったが、彼らの話し方が関西弁で翻訳されていたので、より一層面白かった。

 

中学校の英語の教科書に出てきたハンプティダンプティが、原作ではかなり面倒くさくて厄介なキャラクターだったとは…笑

 

本書は、ルイス・キャロルが“実在のアリス”に対して抱いた「アリスが少女から大人の女性へと成長していく寂しさ」を含んで書かれているので、前作と続けて読むとアリスの成長はもちろん、ルイス・キャロルの想いも感じながら読める作品となっている。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございましたスター

 

伊東早百合あしあと

◆読書記録No.15◆

ウサギの穴のその先は 

へんてこりんな 

不思議の世界!

 

不思議の国のアリス/作:ルイス・キャロル、訳:河合祥一郎(角川文庫)

 

ある昼下がり、アリスがお姉さんと土手で座っていると、チョッキを着た白ウサギが懐中時計を手に急いで走っており、生垣の下の穴にぴょんと飛び込みました。

アリスもウサギを追いかけて穴に飛び込むと、そこは…へんてこりんな不思議の国だった!

個性的な登場人物たちと、ユーモアあふれる言葉遊びで展開される、世界的児童文学の傑作。

 

私の知っているアリスといえば、ディズニー映画の『ふしぎの国のアリス』である。

 

ディズニー映画のアリスはミュージカル要素が溢れていて、色彩豊かでテンポよくストーリーが展開していく。

 

なので、「原作のアリスもそんな感じなのだろうなぁ」と思っていたが、

河合祥一郎氏訳の本書は原文の韻を踏んだ文や駄洒落といった言葉遊びを重視した翻訳となっている。

 

本書のあとがきにも書かれているが、

この物語は“実在するアリス”のために書かれた作品であり、

チェシャ猫や帽子屋、三月ウサギといった登場人物たちも、モデルとなった英語表現や実在の人物がいたというのだ。

 

大人になるにつれて忘れていってしまう、子どもの頃の無邪気で純粋な心。

 

あの頃の自分だったら、どんなに不思議なことが起こっても、アリスのように

「へんてこりん!へんてこりん!」

って言いながら楽しんでいくのだろうなぁ。

 

そんなことを考えさせてくれる不屈の名作。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございましたスター

 

伊東早百合あしあと

◆読書記録No.14◆

 

北海道の月浦で

優しいパンと珈琲と

月が待っている

 

しあわせのパン/三島有紀子(ポプラ文庫
 

北海道洞爺湖の近くの静かな町・月浦。そこに若い“夫婦”が営むカフェ「マーニ」がある。
失恋の勢いのまま月浦にやって来た女性、

去っていった母への想いから父に複雑な感情を抱く女の子、

生きる希望を失い最期の旅へ向かおうとする老夫婦。

マーニに訪れるさまざまな悩みを抱えた人々を、水縞くんが心を込めて作る温かいパンと手料理、りえさんが入れる一杯の珈琲が、優しく迎えてくれる。

2012年公開映画『しあわせのパン』を小説化した、心温まる物語。

10年ほど前、こちらの映画を母からおすすめしてもらった。

映画の主演が原田知世さんと大泉洋さんで、私も母も大泉さんのファンである。


北海道・月浦の実在のカフェがモデルになっており、ロケは全て北海道で行われた。


北海道の雄大な自然と、月浦に昇る美しい月が何とも印象的で、登場するパンや料理はどれも美味しそうで、見ているだけでお腹も心も満たされるのだ。


小説版でも北海道の自然美や食べ物の美味しそうな描写がしっかりと伝わってくるが、映画で表現しきれなかった登場人物の抱える悩みや葛藤、過去が細部に描かれている。恋愛、家族、喪失…。

 

これらの悩みはなかなか出口が見つからない。

 

でもそんなとき、心のこもった温かい食べ物を食べると、固まった心が少しずつ綻んでくる。


小説を読んだ後にもう一度映画を観ると、以前とは違った視点で深く観賞できる。


最後までお読みいただき、ありがとうございましたスター

 

伊東早百合あしあと
 

◆読書記録No.13◆

コンビニ店員の時だけ 

私は普通の人で 

世界の歯車になれる

 

コンビニ人間/村田沙耶香(文春文庫)

 

第155回芥川賞受賞作。

古倉恵子は36歳未婚女性で、コンビニでアルバイトをして18年になる。

日々、コンビニ店員として「いらっしゃいませ!」と声を張り上げ、コンビニを清潔に保ち、コンビニ食を食べ、コンビニの音を想いながら眠りにつき、コンビニで働く夢を見る。

全ては、“普通の人間”として、“世界の歯車”になるため…。

ある日、彼女が働くコンビニに、婚活目的の男性・白羽が新入りでやってくるが…。

 

この世における“普通”とは何なのだろうか?

 

主人公の古倉は、幼少期から周りとは違う行動や考えを持ち、家族など周囲の人々を困らせていた。

 

その事から彼女は、コンビニ店員として世界の歯車になり、世間的に普通であろうと人の話し方や服装を真似て、『普通の人間』として架空の生物になりきる。

 

しかし、婚活目的の白羽は彼女に「そんな生き方は普通ではない」と告げ、彼女の周りの友人も“就職せずにアルバイト暮らし”“結婚はおろか恋愛経験もなし”という古倉のことを、やんわりと「普通じゃない」と伝える。

 

誰しもが『普通』という言葉で傷つけられ、傷つけてきたことがあると思う。

 

『普通』であるということは、人によっては安心を与え、時に人を殺す凶器にもなりうる。

 

昨今は多様性が重視され、今まで普通じゃなかったことが普通になりつつあるが、本作品を読んで私は一抹の不安を覚えた。

 

昔の『普通じゃない』が今の『普通』になることで、昔の『普通』が攻撃されていくのではないだろうかと…。

 

ややこしくてごめんなさい…。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございましたスター

 

 

伊東早百合あしあと

◆読書記録No.12◆

ピエロの傘に誘われて 

リナがやってきた町は 

不思議にあふれていた

 

霧のむこうのふしぎな町(新装版)/柏葉幸子(講談社青い鳥文庫)

小学6年生のリナは、夏休みにお父さんに言われて「霧の谷」へ行くことに。

霧が立ち込める森を抜けた先には、ちょっと風変わりだけどかわいらしい町が現れた。

めちゃくちゃ通りに住んでいる、へんてこりんで心優しい人々との交流を通して、少しずつ成長していくリナのひと夏の物語。

スタジオジブリ映画『千と千尋の神隠し』にも影響を与えた、永遠の名作ファンタジー。

 

本作品も『千と千尋の神隠し』にインスピレーションを与えたというだけあって、心躍るような不思議と色鮮やかな魔法の描写が、子どもはもちろん、大人の童心をくすぐられる。

 

また、『千と千尋の神隠し』との共通点もいくつか感じられたので、映画を見たことある人はそれらを探しがてら読んでみるのも楽しいと思う。

 

本作品との出会いは今から20年ほど前で、私が小学生だった頃に祖父が読んでくれたのを思い出す。

 

祖父の影響を完全に受けた私は、1ヶ月に本を5~10冊ほど買ってしまうほどの本好きになった。

 

(おかげで実家の私の部屋は本まみれになった。夫にバレたら絶対小言を言われる)

 

最後までお読みいただき、ありがとうございましたスター

 

 

伊東早百合あしあと