何と,珍しい年代の ジェフ・ベック(Jeff Beck)の音源が登場しました.

 その年代とは,1986年.
 この年は,前年にリリースされた 『 Flash (フラッシュ) 』 のプロモーションを兼ねて来日し,6月1日に 「 軽井沢100記念 」 事業の一環で,長野県軽井沢町協力の元 サントリー・ビール主催で開催された 「 Suntory Beer Sound Market ’86 In Karuizawa 」 出演を皮切りに都合 7公演を行っていますが,日本以外では,殆ど公演は行われていない状況なのです.

 今回,登場したのは,来日公演の 1ヵ月半前の 4月19日カリフォルニア州ロサンゼルスはグリーク・シアター公演のオーディエンス録音を収録し Uxbridgeレーベルからリリースされた 『 Greek Theatre 1986 (Uxbridge 1824) 』 で,日本以外で唯一行われた公演の音源となります.

 音像は近めで,各パートのバランスも良く,会場は屋外なのに,当日の天候含めて録音状況が良かったのでしょう,風の影響で音が回るような感じも殆ど無く,非常に高音質のオーディエンス録音と言えます.
 
 メーカー情報
 『伝説の“サウンドマーケット:ロック・イン・軽井沢”も思い出深い1986年のジェフ・ベック。日本以上にレアだった海外公演を現場体験できる貴重録音が登場です。
 そんな本作に吹き込まれているのは「1986年4月19日ロサンゼルス公演」。名会場“グリーク・シアター”で記録された極太オーディエンス録音です。『FLASH』時代の録音と言えば日本公演ばかりが目に付きますが、それもそのはず。実は『FLASH』に伴うワールド・ツアーは行われておらず、数公演固めてライヴを行ったのは日本だけだったのです。その一方で、「日本でしかライヴをしてない」わけでもない。移動とステージを繰り返すいわゆる「ツアー」はありませんでしたが、来日の約1ヶ月半前にウォームアップ的なショウを1回だけ実施した。本作に詰まっているのは、そんな唯一無二のステージなのです。
 それだけ貴重なライヴだけに、サウンドは聴けるだけありがたい貴重度優先……と思いきや、さにあらず。とにかく極太な芯が距離感ゼロで耳元に轟き、それに伴ってディテールも超細やか。セパレート感も絶大で、アンサンブルがどれだけ苛烈に重なり合っても混じり合わないのです。カンタンに言えば「まるでサウンドボード」ですし、何の予備知識もなかったらFM放送と信じたことでしょう。
 それほどの極太サウンドとなった要因は恐らく……いや、間違いなく環境でしょう。“グリーク・シアター”はロサンゼルスの名所でもある円形劇場で、壁も天井もないオープンスペース。そのため、PAから吐き出された出音が何の反射もなくダイレクトに吸い込まれている。もちろん野外には野外の欠点があり、音が流されやすかったり、実際の距離以上にスカスカになることも珍しくありません。しかし、本作にその心配は皆無。よほどPAの近くで録ったのか周囲の喧騒も小さく、野外録音のうま味だけが最大限に活かされているのです。
 そんな超タイト&極太サウンドで画かれるのは、貴重な『FLASH』ナンバーも美味しいフルショウ。メンバーは日本公演と同じ5人で、ジェフ&ヤン・ハマーに加え、サイモン・フィリップス、ダグ・ウィンビッシュ、ジミー・ホールという布陣。セットも日本と通じるもの同じですが、良い機会でもありますのでここで整理しておきましょう。

 ●フラッシュ(5曲)
 ・Escape(★)/Gets Us All In The End(★)/Ecstasy(★)/Ambitious(★)/People Get Ready
 ●その他(12曲)
 ・70年代:Cause We've Ended As Lovers/Freeway Jam/Goodbye Pork Pie Hat/Blue Wind/Going Down
 ・ゼア・アンド・バック:The Pump/Star Cycle/You Never Know
 ・その他:Miami Vice New York Theme(★)/Love Will(★)/Miami Vice Theme(★)/Wild Thing
 ※注:「★」印は1986年の限定曲。
 
 ……と、このようになっています。

 その後定番化する「People Get Ready」以外の『FLASH』ナンバーはすべてレア物ですし、ヤンが参加した『特捜刑事マイアミ・バイス』のサントラ曲や来日後にシングル・リリースされた「Wild Thing」も披露しています。
 そして、その演奏ぶりは6年ぶりの日本公演に向けて練度を上げていくかのよう。何しろ、当時のジェフにとってはライヴそのものが久しぶり。まとまった回数をこなすのも1983年の“ARMSツアー”以来ですし、ソロ・ツアーとなれば1980年/1981年の“THERE & BACK Tour”以来でもある。破綻をきたすような事はないものの、カンを取り戻す為に鍛え上げていくような集中力も滲んでいるのです。
 ジェフのキャリアでも激レアで知られる『FLASH』時代。その中でも唯一無二となる海外公演を極太サウンドで現場体験できるライヴアルバムです。セットも演奏も比類ない特別感で溢れ返った銘品。どうぞ、存分にご体験ください。

 ★「1986年4月19日グリーク・シアター公演」の極太オーディエンス録音。
 壁も天井もない野外の円形劇場で、反響ゼロのうま味がたっぷり。とにかく極太な芯が距離感ゼロで耳元に轟き、それに伴ってディテールも超細やか。「まるでサウンドボード」を地で行く凄まじい名録音で、貴重な『FLASH』ナンバーも美味しいフルショウが楽しめます。』

Greek Theatre 1986 (Uxbridge 1824)
 
 Live At Greek Theatre, Los Angeles, CA, USA
 19th April 1986

  Disc 1
   01. Escape
   02. Gets Us All In The End
   03. Ecstasy
   04. Ambitious
   05. Goodbye Pork Pie Hat Intro / Stop, Look And Listen
   06. The Pump
   07. Star Cycle
   08. Cause We've Ended As Lovers
   TOTAL TIME (44:17)

  Disc 2
   01. Miami Vice New York Theme
   02. You Never Know
   03. Love Will
   04. Miami Vice Theme
   05. Blue Wind
   06. People Get Ready
   07. Freeway Jam
   08. Wild Thing
   09. Going Down
   TOTAL TIME (47:00)

 Jeff Beck : Guitar
 Jan Hammer : Keyboards
 Simon Phillips : Drums
 Jimmy Hall : Vocal, Saxophone
 Doug Wimbish : Bass

 The Pump
 
 Cause We've Ended As Lovers
 
 Wild Thing
 

[参考]

 1986 Tour Dates
 April
  19 Greek Theatre,Los Angeles,CA,USA
 
 June
  01 Karuizawa Prince Hotel,Karuizawa,JAPAN
  03 Osaka Kousei Nenkin Kaikan,Osaka,JAPAN
  05 Fukuoka Sunpalace,Fukuoka,JAPAN
  06 Festival Hall,Osaka,JAPAN
  08 Nagoya-shi Koukaidou,Nagoya,JAPAN
  10 Nihon Budokan, Tokyo,JAPAN
  11 Nihon Budokan, Tokyo,JAPAN









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#2023-01‐25