1973年5月4日ジョージア州アトランタのアトランタ・フルトン・カウンティ・スタジアム公演を皮切りに,6月2日カリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラム公演まで,18公演を行ったファースト・レグ.
 約1ヶ月間のオフを間に挟み,7月6日イリノイ州シカゴのシカゴ・スタジアムを皮切りに,7月29日ニューヨーク州ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン公演まで,18公演を行ったセカンド・レグ
 この北米ツアーの最後に行われた,マディソン・スクエア・ガーデン 3連続公演(7月27日~29日)では 『 The Song Remains The Same [永遠の詩 (狂熱のライブ)] 』 の映像およびサウンド・トラアックが収録された事で有名です.

 また,この北米ツアーからは,記録用として収録していたサウンドボード音源が,相応の数流出しており,色々なタイトルで,数々のメーカーからリリースされているのは,ファンならばご存知の事と思います.

 今回,リリースされたのは,サウンドボード音源ではありませんが,ツアー終盤に当たる 7月20日マサチューセッツ州ボストンはボストン・ガーデン公演を,オーディエンス収録した 『 Boston 1973 (No Label) 』 です.
 
 1973年北米ツアー音源はかなりの数出回っている関係で,お腹一杯感もあるのですが,購入してしまうのは,コレクターの性なのでしょう.(苦笑)

 メーカー情報では
 『1973年のアメリカ・ツアーは二回のレグに分かれて間に一か月近いオフが設けられるほど長期に渡っています。5月から6月にかけてのファースト・レグはスマートな名演が多く生み出されて比較的スムースに進行したのに対し、7月のセカンド・レグはトラブルに見舞われながら進行したことで知られています。
 何しろ初日の7月6日シカゴからしてプラントが絶不調。喉の調子が悪く、歌うのが苦しそうな様子は皮肉にもサウンドボード録音にて克明に記録されてしまいます。結果として惨憺たる幕開けとなってしまったのですが、その後しばらくはツアーが穏やかに進行します。そこで生まれた名演が7月17日のシアトル公演であり、オーディエンス録音バージョンを収録した当店からのリリースが Sold Out したことも記憶に新しいところではないでしょうか。
 ところが、その日でまるで燃え尽きてしまったかのように、ここからプラント受難の日々が始まるのです。これまた当店がリリースした翌日の「VANCOUVER 1973」では、ショーがいつもの調子で始まったにもかかわらず、プラントの変調によってショーが終盤に差し掛かる前で切り上げられてしまうというハプニングが起きています。そもそも17日のシアトルから21日のプロヴィデンスまでは5日連続というハードなスケジュールであり、セカンド・レグの開始当初から喉の調子が思わしくなかったプラントにとってよい訳がありません。そうした状況の中で20日のボストン公演において、プラントはもとよりZEP全体にも災難が降りかかってしまいます。

 そもそもボストンという土地はZEPにとって忘れられない良い思い出がありました。1969年の1月にボストン・ティー・パーティーで演奏した際には、あまりの盛り上がりから4時間半も演奏し続け、駆け出しだったグループの成功を確信できたという重要なステージがあったのです。
 ところがZEPの人気が爆発して会場が一気に大きくなってからというもの、彼らがボストンでライブをやる度に厄介ごとへと豹変していってしまいます。まず1970年はボストン・ガーデンの過剰警備に手を焼きながらライブが行われました。それ以上に決定的だったのは71年に同所でライブを行った時のこと。またしても会場の警備が巻き起こした混乱にプラント以下のバンドが手を焼かされたに始まり、爆竹は鳴りまくり。おまけに「Dazed And Confused」では演奏が中断させられてしまうほどの有様でした。
 1972年のアメリカ・ツアーでも序盤でボストン・ガーデンのコンサートが行われていましたが、残念ながらこの日の音源は発見されていません。しかし後のZEPのボストンに対する対応からすると、この時も平穏なショーに収まらなかったであろうことが想像できるというもの。それまでの経験からだけでもZEPがボストンやボストン・ガーデンで公演を行うことに対する抵抗心が芽生えていたこともまた容易に想像できるのですが、アメリカでの絶大なる人気を獲得した1973年のツアーにおいてボストンを外す訳にはいかなかったのでしょう。

 とはいえ、73年のボストン公演が行われたタイミングがあまりに悪かった。既にプラントが調子を崩してコンサートが切り上げられてしまったバンクーバーのすぐ後。実際に今回限定プレスCDにてリリースする音源を聴いたところからも、オープニングからプラントの調子は非常に悪い。この音源は距離感のある音像の録音状態なのですが、それでも絶不調なプラントの様子がはっきり伝わってきてしまう。もしかしたら7月6日のシカゴよりも調子が悪いのでは?と思えてしまうほど。あの時よりも酷いのは、73年当時のプラントが歌いこなしていた通常のメロディすら、ここでは歌えていないということ。いやはや、これは調子が悪い。

 それ以上に厄介なのが、悪い意味で頂点に達したと言えるボストン・ガーデンに集まったオーディエンスによるマナーの悪さ。71年も相当に騒がしい状態だったのですが、この日はもう暴動かと錯覚しそうになるようなレベル。皮肉なことに、この状況によってプラントの不調がカバーされたのではないかと思えてなりません。彼は「Over The Hills And Far Away」が終わるやいなや、あまりにも騒がしいオーディエンスに向かって注意を促しています。いつものプラントなら必ず発する「good evening!」が一切聞かれないところからの、かなり緊迫した状況が伺えます。
 あまりの騒がしさから、ショーの序盤にて早くも「Misty Mountain Hop」と「Since I’ve Been Loving You」を省くという決断が下されてしまいます。確かにスロー・ブルースの後者をこの混乱の中で演奏するのは難しい。しかし一方でプラントの不調からも数曲飛ばして長い演奏で彼が休憩できる「No Quarter」に向かったのは得策であったのではないでしょうか。
 ここでのプラントの調子がまた良くない。それほど強烈なシャウトを必要とする曲でないにもかかわらず、彼は歌いこなすのがやっとといった感じ。しかし演奏の方は白熱しており、ペイジとボンゾの間でトリッキーなリズムの駆け引きが聞かれます。9日のセント・ポール辺りから、この曲でボンゾが仕掛けるプレイが目立ち始めており、そこからさらに発展したような二人の演奏が聞かれたのです。これが75年や77年であればさらに引き伸ばされたことは間違いありません。
 この曲や「The Rain Song」の中盤以降にもたらされたプラントの休憩パートが功を奏したのか、「Dazed And Confused」からはプラントが明らかに復調し始め、演奏のボルテージが一気に上がっているのも面白いところ。ここでもペイジやボンゾのプレイが閃きを見せている点も聞き逃せません。とは言っても観客はそれまで以上に騒がしくなってしまい、プラントは「San Francisco」パートが始まる前にたまらず「take it easy」と語り掛けながら歌っています。
 それに復調したプラントは「Stairway To Heaven」でもショー前半とは別人のように気合の入った歌を聞かせてくれました。そんな熱唱をもってしても、もはや手の付けられない状況となったのは明白で、遂には「Moby Dick」も飛ばされてしまい(ボンゾが演奏したがらなかったとしても当然のことかと)、一気にライブ終盤へと向かってしまいました。面白いことに、それでも演奏は非常に気合が入っているところがさすがはプロといったところなのですが、メンバーからするともうたくさんだ、という気持ちで一杯だったことが容易に想像できてしまう。アンコールが行われることはなく、代わりに不満を表わすオーディエンスからの爆竹が空しく鳴り響く。実際にZEPはこの日を最後にボストンで公演を行うことは二度となかったのです。
 
 そんな緊迫の一夜は二種類のオーディエンス録音が存在するのですが、今回リリースされるのは「recorder 2」と呼ぶべきジョー・マロニー録音の音源。音像のオンな度合よりもクリアネスと臨場感が際立つ音質で、例えば「ZEP VS BOSTON」などで以前から出回っていた「recorder 1」とは比べ物にならない聴きやすさを誇ります。その点においてはヘッドフォンよりもスピーカーからの再生が圧倒的に引き立つ音質だと言っておきましょう。
 今回のリリースでは過去のアイテムのようなイコライズは一切施さない代わりに、高かったピッチと、テープの劣化から周期的に起きていた左チャンネルでの音のこもりを緻密にアジャスト。これによって、あくまでナチュラルな味わいを保ちつつも過去のアイテムとは比べ物にならないほどの聴きやすさを実現させています。この安定した状態で聴いてみてこそ、ボストンでの一大騒動ショーがこんなに面白い内容だったのか?と再確認させられること間違いなし。73年アメリカ・ツアーの中でも特異な一日のリアルなドキュメントをお楽しみください!』

Boston 1973 (No Label)
 
 Live At Boston Garden,Boston,MA.USA 20th July 1973

 Disc 1
  1. Intro.
  2. Rock And Roll
  3. Celebration Day
  4. Black Dog
  5. Over The Hills And Far Away
  6. MC
  7. No Quarter
  8. The Song Remains The Same
  9. The Rain Song 
  TOTAL TIME (50:17)

 Disc 2
  1. MC
  2. Dazed And Confused
  3. Stairway To Heaven
  4. Heartbreaker
  5. Whole Lotta Love
  TOTAL TIME (68:22)

 No Quarter 
  
 The Song Remains The Same 
  
 Stairway To Heaven 
 
 Whole Lotta Love 
 

[参考]
1973 North American Tour Dates
 May
  04 Atlanta–Fulton County Stadium,Atlanta,GA,USA
  05 Tampa Stadium,Tampa,FL,USA
  07 Jacksonville Coliseum,Jacksonville,FL,USA
  10 Memorial Coliseum,Tuscaloosa,AL,USA
  11 St. Louis Arena,St. Louis,MO,USA
  13 Municipal Auditorium,Mobile,AL,USA
  14 New Orleans Municipal Auditorium,New Orleans,LA,USA
  16 Sam Houston Coliseum,Houston,TX,USA
  18 Dallas Memorial Auditorium,Dallas,TX,USA
  19 Tarrant Country Convention Center,Fort Worth,TX,USA
  22 Convention Center Arena,San Antonio,TX,USA
  23 University Arena,Albuquerque,NM,USA
  25 Denver Coliseum,Denver,CO,USA
  26 Salt Palace,Salt Lake City,UT,USA
  28 San Diego Sports Arena,San Diego,CA,USA
  31 The Forum,Inglewood,CA,USA

 June
  02 Kezar Stadium,San Francisco,CA,USA
  03 The Forum,Inglewood,CA,USA

 July
  06 Chicago Stadium,Chicago,IL,USA
  07 Chicago Stadium,Chicago,IL,USA
  08 Market Square Arena (Unconfirmed),Indianapolis,IN,USA
  09 St. Paul Civic Center,Saint Paul,MN,USA
  10 Milwaukee Arena,Milwaukee,WI,USA
  12 Cobo Hall,Detroit,MI,USA
  13 Cobo Hall,Detroit,MI,USA
  14 Buffalo Memorial Auditorium,Buffalo,NY,USA
  17 Seattle Center Coliseum,Seattle,WA,USA
  18 Pacific Coliseum,Vancouver,BC,CANADA
  19 The Spectrum,Philadelphia,PA,USA
  20 Boston Garden,Boston,MA,USA
  21 Providence Civic Center,Providence,RI,USA
  23 Baltimore Civic Center,Baltimore,MD,USA
  24 Three Rivers Stadium,Pittsburgh,PA,USA  
  27 Madison Square Garden,New York City,NY,USA
  28 Madison Square Garden,New York City,NY,USA
  29 Madison Square Garden,New York City,NY,USA











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