1971年8月,当時 ニッポン放送 が主催し,国内外のアーティストを招いて,8月6日と7日に神奈川県箱根町 芦の湖畔 の 成蹊大学所有 の 広大な敷地(:乗風台)で行われた野外ロック・イベント『箱根アフロディーテ』.

 このイベントは演奏する場所として高台にあるメイン・ステージ以外に,少々低いところにあるサブ・ステージがあり,海外からピンク・フロイドの他に 1910フルーツガム・カンパニー,バフィー・セントメリーが,国内から 成毛滋&つのだひろ,モップス,ハプニングス 4+1,渡辺貞夫セクステット,菊池雅章クィンテット,佐藤充彦トリオ,かぐや姫,長谷川きよし,トワ・エ・モア,赤い鳥 他,ロック,ジャズ,フォークと幅広いジャンルで多数のバンドが出演しました.

 当然,両日ともメイン・アクトはピンク・フロイドで,フロイドはこの他にも.8月9日に大阪フェスティバル・ホールでの単独公演(ブログ下部の [関連記事] 参照)を行います.
 ピンク・フロイドのステージは,当時まだ日本では珍しかった大規模な舞台音響装置(PAシステム)を駆使して演出された音響や、ステージでの演奏中に霧がかかるといった,自然の演出もあり,非常に神秘的なものとなった故に,伝説となっています.

 この当時,一年前にリリースされたオフィシャル『Atom Heart Mother (原子心母)』が最新のアルバムであり,未だ『Meddle (おせっかい)』は未発表であった事から,当然 "Echoes" も未発表曲であった訳ですが,この演奏を聴いて観客はどのように感じたのでしょうか.野外ステージで霧の演出の中で演奏される "Echoes" 等,フロイドの曲は本当に神秘的だったでしょうね.

 メーカー情報では
 『フロイドの伝説の初来日・箱根アフロディーテが最新マスタリングで登場!
 現存する複数のオーディエンス録音を駆使した、まさに偽りのない過去最長バージョンにて、ステレオ・マスターメインのバージョンを 1枚目に、モノラル・マスターメインのバージョンを 2枚目にそれぞれ収録した現状ベストと言える内容に仕上がった箱根アフロディーテの決定盤。
 1枚目のステレオ・マスターをメインに欠落部を補てんしたアイテムとしては、少し前に Godfather盤から同じコンセプトで出ておりますが、今回 2枚目に収録したモノラル・マスターをベースにした疑似編集盤はこれまで一切リリースされておらず、本タイトルが初の試みとなります。
 まず 1枚目の解説です。
 1枚目でベースとなった音源は、「APHRODITE」(Sirene/2CD) で初登場し、その後「MEMORIES OF THE EAST」(Sigma/2CD) などにも収録された、現時点では音質的にも収録内容的にもベストのステレオ・マスターで、これに「APHRODITE」(Dynamite Studio/CD)と、さらに「APHRODITE」(Sirene/2CD)・Disc2に収録されていた 2種類のモノラル・マスターで補てんし最長盤を再現。
 メインのステレオマスターは元々左右の音量バランスに若干の難があるものでしたが、各チャンネルに緻密な調整を施し(安易なコンプはかけてません)、バランスを若干ながら改善、なおかつ今回に限りヒスノイズを僅かに除去しました。ただしあくまで控え目なノイズリダクションであり、空気感が損なわれる事はありません。例えば出だしのバフィー・セントメリーの演奏部分を旧Sigma盤と比べて頂ければ、演奏は若干大きめに聞こえながらも、ヒスは比例して大きくなっているわけでない事を確認できるでしょう。
 補てんに関しては原子心母演奏直前のMC、ユージンの中間部、エコーズ後半、そしてシンバライン丸ごととなっております。このうち原子心母演奏前のギルモアのMC「Ok, here we go!」のみ「APHRODITE」(Sirene/2CD)・Disc2のモノラル・マスターで補てん。それ以外は全て「APHRODITE」(Dynamite Studio/CD)からの補てんで、今回は長めにクロスフェードを施しスムーズなソースチェンジを心がけました。ユージン中間部の補てんは既発Godfather盤ではピッチがあっていないため繋ぎが不自然でしたが、本盤ではバッチリです。
 また、この補てん後(CDタイム2分付近)、ステレオマスターに起因する音ヨレが左チャンネルで目立ちましたが、ここは左チャンネルにのみ音ヨレの目立つ数秒間にDynamite Studio盤をマトリクスし音ヨレを解消、適切な処理により驚くほど違和感なく鑑賞頂けます。エコーズ後半の補てんでは残念ながら、元々ステレオ・マスターとモノラル・マスターで演奏そのものがラップしないため、一旦フェードしてモノラル・マスターにチェンジする編集です。ラストに収録されたシンバラインは丸ごと Dynamite Studio盤からのリマスター収録。しかし、このシンバラインが結構くせ者で、演奏前に断片的に糸居五郎氏の MC「Pink Floyd!」が聞けますが、これはライブ冒頭で聞ける同氏のMCとは別物です。また、シンバライン演奏後には聞き取りづらいですが、同氏の「Pink Floyd!」というさらに別の3つめMCが確認できます。そうしますと、本公演では同氏の MC(登場場面)は 3度(またはそれ以上)あったのか(ライブ開始前・アンコール前・ライブ終演後の3回か?)、あるいはシンバラインそのものが翌日7日の演奏なのか、これらの事実がはっきりとしないところなのですが、現時点ではこれらを明確にする資料・手段が不足しており、断定できませんでしたので、ここでは Dynamite Studio盤の収録内容を踏襲し、そのまま収録しました。

 2枚目は、「APHRODITE」(Dynamite Studio/CD)のモノラル・マスターをメインに、欠落部分に関しては、ステレオ・マスターをモノラル化したうえで補填しました。
 バフィー・セントメリーの演奏部分に関しては元々モノラル・マスターは存在しないのですが、ここもステレオ・マスターをモノラル化し敢えて収録。メインに使用した Dynamite盤について補足しますと、90年代にリリースされたCDで、内容的には70年代にリリースされたと思われる激レア・幻LPブート「Live」(PEACE RECORD/LP)のダイレクトコピーと推測されます。この大元になった LPブート自体が超ウルトラ入手困難盤であり、実物は筆者も見かけた事のないブツ。幸いながら Dynamite盤はノイズリダクションやイコライジング処理とは無縁のナチュラルで低音域も伸びのる超高音質サウンドであり、これはこれでステレオ・マスターとは違う味わいがあり、総合的に見てもステレオ・マスターに決してひけを取らないもので、案外こちらの方が聞きやすいと思う方もいるのではないでしょうか。また過去にもこのモノラルマスターをメインにした編集アイテムは皆無でありましたので、本タイトルが初の試みとなります。
 1枚目ではステレオとモノラルとの混在でしたが、この2枚目ではモノラルに一貫したことで、違和感も少なくスムーズな編集を堪能頂けます。しかも Dynamite盤(とそのLP)では曲順も実際とは異なったものでしたので、より正しい曲順で聞くモノラル・バージョンは非常に新鮮に鑑賞頂けます。なお糸居氏の最初のMCはDynamite盤にも収録されておりますが、繋ぎ処理が増えることを考慮し、今回はそのままステレオ・マスターのモノラル化バージョンで通しております。
 現存する複数のオーディエンス録音を駆使した過去最長バージョンにて、現状ベストと言える2ヴァージョンを収録した箱根アフロディーテの決定盤。限定プレス CDで Sigmaレーベルより登場です!!』

Aphrodite 1971 (Sigma 117)
 
 Live At Hakone Aphrodite, Hakone, JAPAN 06th August 1971
 (2 Different Source)

 Disc 1:Stereo Master
  1. Buffy Sainte-Marie - The Circle Game
  2. Soundcheck / Announcement
  3. Atom Heart Mother
  4. Soundcheck
  5. Green Is The Colour
  6. Careful With That Axe, Eugene
  7. Soundcheck
  8. Echoes
  9. Cymbaline
  TOTAL TIME (72:08)

 Disc 2:Mono Master
  1. Buffy Sainte-Marie - The Circle Game
  2. Soundcheck / Announcement
  3. Atom Heart Mother
  4. Soundcheck
  5. Green Is The Colour
  6. Careful With That Axe, Eugene
  7. Soundcheck
  8. Echoes
  9. Cymbaline
  TOTAL TIME (72:08)

 Echoes (Disc 1 Track 8)
 
 Cymbaline (Disc 1 Track 9)
 
 Cymbaline (Disc 2 Track 9)
 


 本CDの初回ナンバー入りステッカー付きには,1988年に国内放送された「Aphrodite 1971:Best Hit USA Broadcast Version (Special Bonus DVDR)」が付属しています.
 実は,この「ベストヒット USA」のこの回を何気にリアルタイムに観ており,いきなり箱根アフロディーテの映像が流れたので,ヴィデオで録画しようと思ったのですが,放映された映像が短すぎて録画を開始した際には,プロモ部分しか収録できませんでした.(>_<)
 でも,画質が良かった事は,未だに記憶しています.

 1988年3月にはデイヴ・ギルモア率いるピンク・フロイドの来日があり,関東では日本武道館と代々木オリンピック・プールが会場となりました.ちなみにこの放送もメーカー情報にあるように,この来日に合わせた特集であり,私も 3月4日~6日の代々木オリンピック・プール公演に 3連続参戦しました.

 本ボーナスDVDRのジャケは,本当に格好良く,個人的に好きです.

 メーカー情報では
 『ファンには定番の1971年箱根アフロディーテの「原子心母」をテーマにしたドキュメンタリー映像の1988年国内放送版を収録。
 お馴染みの15分テイクをフィーチャーしたテレビ埼玉「サウンド・スーパー・シティ」版ではなく、よりレアで貴重なものと思われる、3月の来日を前に人気音楽番組「ベスト・ヒットUSA」にて放送されたヴァージョンです。
 この箱根映像は、番組後半に放送されたアーチスト特集の冒頭として流されたもので2分間と短めですが、驚かされるのはその画面クオリティ。
 アングラで出回っているロングヴァージョンとは雲泥の差の高画質で、流石にメジャーな音楽番組で放送されただけのことはあると思える、別格の画質でお馴染みの箱根公演映像を見ることができます。
 このクオリティで全編を観てみたかった!と思うファンの方達も多いと思いますが、当時、メジャーな民放音楽番組で延々と放送するのは流石に無理だったのでしょう。
 本音を言えば「鬱」や「ファイナルカット」のプロモを流されるよりも、時間枠いっぱいに箱根映像を放送してくれたほうが世界のファンにとっては(現在に至るまで)大変嬉しいことだったわけですが、ない物ねだりをしても仕方ありません。
 箱根映像の後、司会者が「当時のロックの風俗が判ったんじゃないかと思います。1970年、数日間に渡って箱根で行われましたロックフェスティバルからピンク・フロイドをご覧いただきました。その前の年の1969年にウッドストックがあって、その翌年ということで注目されたイベントであります。」と開催年を勘違いしての解説も御愛嬌。
 続いては On The Turning Away、Learning To Fly、そしてやや唐突に The Final Cut のクリップが流れますが、その間でのコメントがいかにもこの当時らしく、ほのぼのと聞き入ってしまいます。当時のエアチェックビデオからの映像を使用しているわけですが、とにかく画質も音声も素晴らしく、マニアは必見の1枚となっています。』

 Aphrodite 1971
        :Best Hit USA Broadcast Version (Special Bonus DVDR)

 
 Live At Hakone Aphrodite, Hakone, Japan August 1971
 Broadcast in 1988
 Pro-Shot Colour NTSC Approx. 20min.
 

  1. Atom Heart Mother
  2. On The Turning Away (Promo Clip) 
  3. Learning To Fly (Promo Clip) 
  4. The Final Cut (Promo Clip)

 収録されている映像の一部
 

 ちなみに 『Aphrodite 1971 (Sigma 117)』 は,2015年夏に 『Aphrodite 1971 (Sigma 133)』 として,ジャケット違いで,再リリースされています.


[参考]
 

Atom Heart Mother (Remastered Discovery Edition)




 

Meddle (Remastered Discovery Edition)




 Sigma 117のジャケット違いの再リリース盤
 Aphrodite 1971 (Sigma 133)
 

 Aphrodite (Siréne – 160)
 
 Memories Of The East (Sigma 24)
 
 Aphrodite (DS94J058)
 

[関連記事]
Memories Of The East (Sigma 24)
 
Unprocessed Osaka 1971 (Sigma 112)
 
Osaka 1971 (Sigma 67)
 Pink Floyd - Osaka 1971 (Sigma 67)