1971年に初来日を果たしたピンク・フロイドは,箱根アフロディーテを皮切りに 3公演を行います.本CD「Unprocessed Osaka 1971 (Sigma 112) 」は,最終公演となる 8月9日の大阪フェスティバル・ホール公演を収録したもので,昨年末にリリースされ大阪公演の決定盤と言われた「Osaka 1971:A New Tape Transfer (Sigma 106)」(過去ブログ「Osaka 1971 A New Tape Transfer」参照)のアッパー版です.

 ちなみに「Osaka 1971:A New Tape Transfer (Sigma 106)」リリース前は「Osaka 1971 (Sigma 67)」(過去ブログ「Osaka 1971 (Sigma 67)」参照)が 決定盤と言われており "Cymbaline" と "Fat Old Sun" のみを収録している「Osaka Triple (Sigma 44)」(過去ブログ「Osaka Triple (Sigma 44)」参照)も含めると,この大阪公演だけでも今回のリリースを含めて Sigmaレーベルから 4商品リリースされている事になります.

 メーカー情報にもあるように「Osaka 1971:A New Tape Transfer (Sigma 106)」は,3rd Gen の最良版を使用,今回の「Unprocessed Osaka 1971 (Sigma 112) 」は 2nd Gen の最良版を使用との事で,ヘッド・フォンで聴くと,音の差が判ります.今回のものは非常にクリアで,ナチュラルな音です.

 第一部は,ロジャー・ウォーターズの MC の後に "Green Is A Colour" ~ "Careful With That Axe, Eugene" が,メドレー形式で演奏され,牧歌的な前者と,破壊的な後者のメドレー形式の組合せは,ある意味劇的でもあります.それに続いて,デイブのギターソロと,スリリングなリックとデイブとのインタープレイをフューチャーし,スタジオ録音より大幅に長く演奏される "Fat Old Sun",そして 4人編成での18分に及ぶ "Atom Heart Mother" で第一部が幕を閉じます.
 観客は前年10月に発売されたオフィシャル・アルバム「Atom Heart Mother (原子心母)」に収録されたものと大幅に異なる "Fat Old Sun" や "Atom Heart Mother" を聴いて,どのように思ったのでしょうか.
 第二部は,"Echoes" で開始されますが,この時点でオフィシャル・アルバム「Meddle (:おせっかい)」は未発表であり,こちらも観客はどの様に感じたのでしょうか."Echoes" は,演奏され出した初期は "Return Of The Sons Of Nothing" というタイトルとして,紹介されていましたが,ここでは正規なタイトルでロジャー・ウォーターズが紹介しています.しかし未だオフィシャル・アルバムに収録されている "Echoes" とは,歌詞の一部が異なっています.
 "Cymbaline" は,中間部に登場する足音の SE(:Sound Effects)部分で,聴衆は非常に静かに聴いており、よりメロディックな曲の一つに仕上がっています.
 アンコールは "A Saucerful Of Secrets" が演奏されます.20分を超える演奏で,これも盛り上がりが凄いですね.個人的にも,この日の "A Saucerful Of Secrets" は非常に好きで,特に13分台後半~14分台前半の低音部を強調した不気味な感じから,リックライトの静かなハモンド・オルガンに遷移していく部分は,本当に素晴らしいです.

 メーカー情報では
 『疑いの余地なき、1971年8月9日の大阪公演のベスト・ヴァージョンが登場!!ロック史上に輝く1971年大阪の最終決定盤が遂に登場です。
 「え~!また大阪かよ・・・」と言うことなかれ。先日リリースされ好評だった「OSAKA 1971: A NEW TAPE TRANSFER」の鮮度の良いクリアーでナチュラルなサウンドも素晴らしかったのですが、ここまで音が澄んでいて、ダイレクトな音像の大阪71は史上初です。
 「OSAKA 1971: A NEW TAPE TRANSFER」はマスターテープからの 3rd Gen テープの最良版を収録していましたが、本盤は 2nd Gen テープの最良版と言えるものです。提供者の説明ですと、2nd Gen テープのDATコピーをデジタル化したものとのことですが、まさに「UNPROCESSED」というフレコミも決して大げさではない今回の本タイトル、これまでの 2nd Gen の既発ベスト「Osaka 1971」(Sigma 67)よりも、それぞれのディスク頭から長く収録されており(と言っても大元テープのアナログ再生時の頭の部分が聞ける、といった具体ですが。ちなみに A Saucerful Of Secrets エンドでも既発未収のテープの走行ノイズが約5秒間、聞けます。)、更に、音質は一聴して判るほどに大幅ににアップグレードしています。既発に比べヒスノイズは若干少なく、しかも高域の劣化が一切感じられず、それでいてイコライズ感も全くなし。「大阪71のマスターテープは、こんな音だったんだ・・・」と昔からのファンは感動の思いで聞き入ってしまうこと間違いありません。
 ここまで凄いテイク、凄いタイトルにこまごまとした説明は一切不要!!マスターテープを、未加工のまま「UNPROCESSED」な状態で、ダイレクトに音盤化した本作は、フロイド・ファンはもちろん、世界中のクラシック・ロック・ファン必聴と言っても過言ではありません。よくぞ、この時代に、ここまでの音で録ってくれた!と聞いていて、会ったことのない、いや、これからも会うことはないでろう屈指のテーパーに感謝の念を覚えること間違いなしの大傑作音源の最終決定盤(ファイナル・カット!)。これは、まさに大事件と言えるリリースです!!

 ★beatleg誌 vol.7 に 1971年大阪公演のレビューが掲載されています。素晴らしい解説ですのでここで紹介させて下さい。

 通常使用している機材が全て投入されたことで、本公演は彼ら本来のステージングをたっぷりと楽しめる。ウォーターズの MC の後、フォーキーな「Green Is The Colour」から演奏が始まる珍しいステージ構成で、箱根アフロディーテでの名演と遜色ない演奏を披露する。メドレーで続く「Careful With That Axe, Eugene」はアフロディーテでの演奏とまるで雰囲気が異なり、音を丹念に繋ぎ合わせて、万華鏡のようなきらびやかな独特の世界を造り出しながらも、ウォーターズの強力なスクリーミングがそれを粉砕する様は圧巻。「Fat Old Sun」はギルモアの美しい歌声と歌心に溢れるギターソロに導かれて warm な演奏となっている。間奏部のジャムも迫力の演奏だ。「Atom Heart Mother」は4人による安定した演奏ではあるが、自然を味方につけたアフロディーテでの神がかった演奏程ではない。
 休憩を挟んで披露された新曲「Echoes」は通常よりスローテンポで演奏されており、歌詞が持つ神秘的かつ神聖な雰囲気を十分に表現している。なお本公演でもコーダに戻らずに終わる短縮版となっている。「Set The Controls For The Heart Of The Sun」は囁くようなウォーターズのボーカルで厳かに始まるが、間奏部に至る部分でのマレットを使用したメイソンのタムの連打、ギルモアのワウを使用して不安感を煽るフレーズ、そしてウォーターズによる攻撃的なドラの連打で観客を極度の緊張感に落としいれた後に待っているのがライトによる癒しの世界。非の打ちどころのない完璧な演奏だ。「Cymbaline」は彼らが使用する特殊装置の威力が最も発揮される曲で、間奏部ではテープによる足音のSEが会場内を駆け巡る効果を演出している。アンコールの「A Saucerful Of Secrets」はライトによるピアノの打楽器的奏法やギルモアのエフェクト処理されたギターが先の装置によって会場内を轟音となって渦巻き、また鬼の形相でウォーターズがドラを叩きまくる演出が視覚的な効果を高めている。』
との事.

Unprocessed Osaka 1971 (Sigma 112)
 
 Live At Festival Hall,Osaka,Japan 09th August 1971

 Disc 1
  1. Green Is The Colour
  2. Careful With That Axe, Eugene
  3. Fat Old Sun
  4. Atom Heart Mother
  TOTAL TIME (50:18)

 Disc 2
  1. Echoes
  2. Set The Controls For The Heart Of The Sun
  3. Cymbaline
  4. A Saucerful Of Secrets
  TOTAL TIME (74:13)

 Echoes 
 
 Cymbaline 
 
 A Saucerful Of Secrets 
 

 本商品「Unprocessed Osaka 1971 (Sigma 112)」の初回限定のナンバー入りステッカー付きには,1971年11月の「Meddle (おせっかい)」リリースに伴い,10月15日~11月20日の 1ヶ月弱の間プロモーションとして行われた北米ツアーから,ツアー中盤に当たる11月5日のニューヨークはハンター・カレッジ公演をオーディエンス録音で収録した「Hunter College 1971 (Special Bonus CDR)」が付属しています.

 音質的には多少の歪み,元のマスター・テープに起因するテープよれ的な部分等もありますが,録音された年代を考えると高音質なオーディエンス録音です.
 オープニングを飾る "The Embryo" は,メーカー情報にあるように 4分20秒過ぎから機器トラブルにより先ずキーボードが,そしてベースが聴こえなくなります.トラブルは 9分40秒後半に回復し,通常の演奏に戻りますが,その間のドラムとギターのインストルメンタルは興味深く,そしてこの北米ツアーを最後にセットリストから外れる "The Embryo","Fat Old Sun","Cymbaline" の最終形を聴く事ができるので,貴重です.
 ちなみに本北米ツアー最終日である11月20日のオハイオ州シンシナティ公演(過去ブログ「The Growing Embryo (Sirene-031)」参照)では,オープニングを飾る "The Embryo" は,28分弱演奏されています.

 メーカー情報では
 『1971年「Meddle」発売後のプロモーションのための北米ツアーより、11月5日のニューヨークはハンター・カレッジ公演を過去最良と断言できる、高音質オーディエンス録音で 2時間35分に渡って完全収録。
 コアなマニアならご存じ「Marbal」なる人物により録音された好音源。数年前に流通した24ビット、48khzのマスターを今回CD用にデジタル・リマスターを施しCD化。
 一曲目の The Embryo で4分30秒辺りで、機材トラブルが発生し、以降、キーボードとベースが全く聞こえなくなってしまいます。そこでギルモアはボトルネック奏法を多用したジャム演奏をメイソンと延々とプレイ。アルバム『雲の影』に収録された Childhood's End をもかすかに(あくまでも、かすかにです。。)彷彿とさせる、非常に興味深い聴きどころを生々しいサウンドで楽しむことができます。9分目あたりから歓声とともに、ロジャーとリックの音が復活、4人のブルース風ジャムからThe Embryoのテーマに戻る辺りは、なかなかのドラマチックな演奏を楽しむことが出来ます。11分台からは子供の声を使用したSEが流れます。後半のフリーフォームな演奏では、Interstellar Overdrive の奏法も飛び出します。まさに創造性に溢れたフロイドのライヴ絶頂期の優秀な演奏を楽しむことができます。以降は機材トラブルもなく、この時期のベストライヴトラックスの数々を安定した鮮度の良いサウンドで堪能することができます。音そのものは 2nd Master Tape を使用しているわけですが、自然で劣化の少ない優秀なクリアーなサウンドで、ショウの全貌をたっぷりと楽しむことができます。曲間のチューニングやサウンドチェックも生々しいサウンドで収録。全編を通じて、ダイレクト感に満ちた、安定した質の高いサウンドで収録されており、ボーナスディスクでのリリースがもったいないのではと思えるほど、クオリティの高い大傑作ライヴ音源です。これは本当に素晴らしい。原音では高かったピッチも全て正確に補正。本来なら、プレスCDでのリリースが相応しい傑作音源です。』


Hunter College 1971 (Special Bonus CDR)
 
 Live At Assembly Hall, Hunter College,New York,USA 05th November 1971
 
 Disc 1
  1. The Embryo
  2. Fat Old Sun
  3. Set The Controls For The Heart Of The Sun
  4. Atom Heart Mother
  TOTAL TIME (79:58)

 Disc 2
  1. Careful With That Axe, Eugene
  2. Cymbaline
  3. Echose
  4. A Saucerful Of Secrets
  TOTAL TIME (75:23)

 The Embryo 
 
 Careful With That Axe, Eugene 
 
 Cymbaline 
 

 [参考]
 Osaka 1971:A New Tape Transfer (Sigma 106)
 PF Osaka 1972 New Tape Transfer
 Osaka 1971 (Sigma 67)
 Pink Floyd - Osaka 1971 (Sigma 67)
 Osaka Triple (Sigma 44)
 Pink Floyd - Osaka Triple(Sigma )

 大阪公演 チケット (ネット上から借用)
 $cinnamonの音楽ときどき競馬予想-Pink Floyd 大阪 チケット

1971 Japan Tour Dates
 August
  06 Hakone Aphrodite '71,Seikei Gakuen Jofundai,Hakone,JAPAN
  07 Hakone Aphrodite '71,Seikei Gakuen Jofundai,Hakone,JAPAN
  09 Festival Hall,Osaka,JAPAN

        

1971 North American Tour Dates
 October
  15 Winterland Auditorium,San Francisco,CA,USA
  16 Civic Auditorium,Santa Monica,CA,USA
  17 Convention Hall,Community Concourse,San Diego,CA,USA
  19 National Guard Armory,Eugene,OR,USA
  21 Willamette University,Salem,OR,USA
  22 Paramount Theater,Seattle,WA,USA
  23 Gardens Arena,Vancouver,B.C.,CANADA
  26 Eastown Theater,Detroit,MI,USA
  27 Auditorium Theater,Chicago,IL,USA
  28 Hill Auditorium,University Of Michigan,Ann Arbor,MI,USA
  30 Taft Auditorium,Cincinnati,OH,USA
      [Rescheduled To 20 November]
  31 Fieldhouse,University Of Toledo,Toledo,OH,USA

 November
  02 McCarter Theatre,Princeton University,Princeton,NJ,USA
  03 Central Theatre,Passaic,NJ,USA
  04 Music Hall,Boston,MA,USA
      [Rescheduled to 11 November]
  04 Lowes Theatre,Providence,RI,USA
  05 Lowes Theatre,Providence,RI,USA
      [Rescheduled To 4 November]
  05 Assembly Hall,Hunter College,Columbia University Of New York,New York City,NY,USA
  06 Emerson Gymnasium,Case Western Reserve University,Cleveland,OH,USA
  08 Peace Bridge Exhibition Center,Buffalo,NY,USA
  09 Centre Sportif,Université de Montréal,Montréal,Québec,CANADA
  10 Pavillion de la Jeunesse,Québec City,Québec,CANADA
  11 Music Hall,Boston,MA,USA
  12 Irvine Auditorium,University Of Pennsylvania,Philadelphia,PA,USA
  13 Chapin Hall,Williams College,Williamstown,MA,USA
  14 The Gymnasium,State University Of New York,Stony Brook,Long Island,NY,USA
  15 Main Hall,Carnegie Hall,New York City,NY,USA
  16 Lisner Auditorium,George Washington University,Washington D.C.,USA
  19 Syria Mosque Theater,Pittsburgh,PA, USA  
  20 Taft Auditorium,Cincinnati,OH,USA

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