1974年11月4日スコットランドはエディンバラにあるアッシャーホールを皮切りに,同年12月14日ブリストルのヒッポドロームまで行われた,ブリティッシュ・ウィンター・ツアー(通称:British Winter Tour 1974)時の音源で,2夜連続で行われたマンチェスターのザ・パレス・シアター公演から,初日の12月9日を収録したもので,2008年7月に Simgaレーベルより「Creative Intelligence (Sigma 19)」のタイトルでリリースされたものです.このツアーのプログラムは「SUPER ALL-ACTION OFFICIAL MUSIC PROGRAMME FOR BOYS AND GIRLS!」と副題されたコミック調のもので,CDタイトルの「Creative Intelligence」も,表紙のエイリアンらしき者の言葉(吹きだし)の中の「What Is It ? Could There Be Any From Of Creative Intelligence Out There」からきています.

 本CDに使用されている音源に関しては,音像は少し遠めではあるものの,各楽器のバランス,音のクリアさは素晴らしく,非常に高音質な音源を使用しています.またテープも,世代的に若い世代を使用しているのは明らかです.収録も,"Raving And Drooling" と "You’ve Got To Be Crazy" の後の数秒程度のチューニング部分を除き,アンコール前の "Audience" を含めて,粗完全に収録されています.

 同公演の音源は Shout To The Topレーベルから「Manchester Day (STTP 146/147)」や,ローカルに出回った「Kings Of The Palace (No Label)」がありますが,これらは強引に,CD 2枚組とした関係から "The Dark Side Of The Moon” が分断され,1枚目には "On The Run" まで,2枚目には "Time" からというような状況でした.
 Sigmaレーベルは,2枚組とせず 3枚組とする事で "The Dark Side Of The Moon” をストレスなく,聴くことができるようにしています.この点もアドバンテージでしょう.

 セットリストは,第一部が 1974年6月18日フランス・ツアーから披露された新曲 "Shine On You Crazy Diamond","Raving And Drooling" に,同年11月4日のブリティッシュ・ウィンター・ツアーから披露された "You've Gotta Be Crazy" の 3曲,第二部が前年3月にリリースされた「The Dark Side Of The Moon (狂気)」,アンコールが "Echoes" であり,ツアー中に演奏される曲が変更される事はありませんでした.
 ただツアー開始時には "Shine On You Crazy Diamond","Raving And Drooling","You've Gotta Be Crazy" の順番で演奏されていた第一部ですが,11月17日ロンドンはウェンブリーのエンパイアー・プール公演(4連続公演の最終日)以降は "Raving And Drooling","You've Gotta Be Crazy","Shine On You Crazy Diamond" の順番での演奏に変更されています.

 翌年の第一次北米ツアーのセットリストから "Shine On You Crazy Diamond" は 1ピースで演奏されず "Have A Cigar" を挟んで,前半の "Parts 1-5" と,後半の "Parts 6-9" の2ピースでの演奏となるので,本ツアーが 1ピースで演奏される最後のツアーとなります.

 "Shine On You Crazy Diamond" 導入部では,リック・ライトがシンセサイザーで非常に珍しい独特の音階の短いイントロを弾いていますが,これはこの時期特有のもので,完成度が高くなるに従って,なくなってしまいます.また,この "Shine On You Crazy Diamond" のヴォーカル最終部の10分21秒から歌詞を忘れたのか,ヴォーカルを取るのを止めてしまいます.特筆すべきは "Time" における,デヴィッド・ギルモアのヴォーカル,"Money","Any Colour You Like" 等でのギター・ソロ....この辺が,同公演が名演とされている所以でしょう.

 ちなみに,このツアーからは,11月16日ロンドンはウェンブリーのエンパイアー・プール公演や,11月19日ストーク・オン・トレントのトレンザム・ガーデン公演のブートがリリースされ,15万枚以上売れたということです.この数はブートの販売数としては考えられない数です.過去のブログにも記載しているように,このブートにより,ピンク・フロイドは大きな打撃を受けることになります.
 
 メーカー情報では
 『マニア間でも「奇跡の名演」と評される1974年UKツアー17日目の12月9日のマンチェスター公演を、初のマスター・クオリティの極上オーディエンス 録音で3枚組で完全収録(収録時間140分)。
 ヒスノイズの多かった既発盤に比べて、ジェネレーションの差は明らかで、豊かで高品質な音像から、既発とは 比較になら無い程の音の鮮度の良さを感じることができます。(勿論、アナログ録音なのでうっすらとヒスは聞えますが、含有量がまるで違います。)また既発 にあったパチパチとデジタルノイズなどは一切無いです。テープカットがどこにも無いのも驚異的です。速かったピッチも正確に収録されており、同じ くマニア間でも「屈指の名演」と言われる「狂気」が、ディスク2でノンカット(既発ではTimeで分断されていた)で聴けるというアドヴァンテージも用意されています。
 ベースがストレートで存在感あるサウンドで収録されていますが、こもった感じは一切無く、この時代のイギリスでのオーディエンス録音としては大別格のサウンドで収録されています。この音で聴ける Raving And Drooling や You've Got To Be Crazy のグルーブ溢れる演奏は本当に魅力的です。ギルモアがソロ、ボーカル共に素晴らしく安定したパフォーマンスを聴かせてくれます。全体のクリエイティヴィティに満ちたアンサンブルも本当に見事で語りつくせ無い程に素晴らしい音のドラマの数々を体感できます。
 Shine On You Crazy Diamond も、ファイナルには無い味わい深いシンセイントロ、オリジナルなメロディと躍動感に満ちた抜群のギターソロ、ロジャーの味わい深いボーカル が実に素晴らしく、後半のサックスソロの代わりにギルモアが天空を舞うような見事なスライド・ギターを披露し、リックのキーボードと絶妙な絡みを聴かせます。
 とにかくこの第一部の3曲は、それぞれが74年冬でなければ味わえない独特の魅力と色彩感に満ち溢れており、ファンには堪らない演奏を最良のサウンドで楽しむことがができます。「狂気」は驚くほどにリリカルにそして見事な配分と統制力で演奏され、一体この日は何があったのか?と思えるほどに、殆ど全てのパートで最高の名演を聴く事ができます。
 On The Run なども音の良さもあって凄い迫力です。ショウ前半同様に、とにかくギルモアの絶好調ぶりが各所で確認でき、最高の名演に浸ることができます。 Money のロングソロ、Any Colour You Like など本当に素晴らしく、まさに屈指の名演パートと言えるでしょう。そして、既発では Brain Damage の途中で切れてしまっていましたが、本盤では完全収録で最後の鐘の音は勿論、40秒近い観客の歓声までしっかりと収録しています。これは最大のアドバンテージでしょう!!
 アンコールの Echoes の前に初登場の2分間の歓声を収録。18:27のマスターに起因するアナログノイズ、歌の3番でリックのマイクが不調になり、ギルモアのソロ・ボーカルになってしまうところが残念ですが、演奏は実に素晴らしく、安定感抜群のサウンドでこの大曲を聴き入る事ができます。
 
 ★beatleg誌 vol.99(2008年10月号)のレビュー要約です。ご参考まで。
 1974年冬の英国ツアー、通称「British Winter Tour」から Manchester 公演初日の模様を収録。
 本公演を収録した音源は古くからファンの間に流通しており、また、その音源を使用したブートCDも数種類リリースされている。音質は良好ではあったものの、世代不明の音源だった。今回のリリースでは、最近流通し始めた、オリジナルマスターをコピーした 1st gen.と推測される音源が使用されている。
 本公演の音源は1種類しか確認されていないものの、別音源のように感じさせるほど、これまで流通していた音源との明確な音質の差異がある。具体的には、立体的で奥行きを感じるさせる音像が特徴であると言っていいだろう。「British Winter Tour」に共通することだが、演奏内容は非常にドライで、機械的に淡々と展開される。観客もそれに呼応したかのように静まり返り、冬のイギリスを思わせる荒涼とした印象を感じさせる。とはいえ、このイギリス公演において、本公演はマストアイテムなので、未聴の方は140分のコンサートをじっくり堪能してほしい。』
との事.

Creative Intelligence (Sigma 19)
 
 Live At The Palace Theatre,Manchester,UK December 09th 1974

 Disc 1
  1. Raving And Drooling
  2. You’ve Got To Be Crazy
  3. Shine On You Crazy Diamond

 Disc 2
  1. Speak To Me
  2. Breathe
  3. On The Run
  4. Time
  5. Breathe (Reprise)
  6. The Great Gig In The Sky
  7. Money
  8. Us And Them
  9. Any Colour You Like
  10. Brain Damage
  11. Eclipse

 Disc 3
  1. Audience
  2. Echoes

 David Gilmour:Guitar, Vocals
 Roger Waters:Bass, Vocals
 Richard Wright:Keyboards, Vocals
 Nick Mason:Drums

 with
 Dick Parry:Saxophone
 The Blackberries
   Venetta Fields:Backing Vocals
   Carlena Williams:Backing Vocals

 Shine On You Crazy Diamond
 
 On The Run
 
 Time
 
 Money
 
 Any Colour You Like
 

狂気(コレクターズ・ボックス)(DVD付)



炎(コレクターズ・ボックス)(DVD付)




[参考]
 Manchester Day (STTP 146/147)
 PF-Manchester Day
 Kings Of The Palace (No Label)
 PF-Kings Of Palace

British Winter Tour 1974
 November
  4 Usher Hall, Edinburgh, Scotland
  5 Usher Hall, Edinburgh, Scotland
  8 Odeon, Newcastle-upon-Tyne, England
  9 Odeon, Newcastle-upon-Tyne, England
  14 Empire Pool, Wembley, London, England
  15 Empire Pool, Wembley, London, England
  16 Empire Pool, Wembley, London, England
    (Alan Freeman Show, BBC Radio 1, Broadcast 11th January 1975)
  17 Empire Pool, Wembley, London, England
  19 Trentham Gardens, Stoke-on-Trent, England
  22 Sophia Gardens Pavilion, Cardiff, Wales
  28 Empire Theatre, Liverpool, England
  29 Empire Theatre, Liverpool, England
  30 Empire Theatre, Liverpool, England

 December
  3 The Hippodrome, Birmingham, England
  4 The Hippodrome, Birmingham, England
  5 The Hippodrome, Birmingham, England
  9 The Palace Theatre, Manchester, England
  10 The Palace Theatre, Manchester, England
  13 The Hippodrome, Bristol, England
  14 The Hippodrome, Bristol, England

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