エマーソン・レイク&パーマーは,1971年 3度の北米ツアーを行います.
 4月21日ペンシルバニア州グリーンビルのティール・カレッジ公演を皮切りに行う第一次,欧州ツアーを挟んで,7月17日カリフォルニア州サンディエゴのスポーツ・アリーナ公演からの第二次,休みを挟んで11月12日マサチューセッツ州ボストンのボストン・ミュージック・ホール公演からの第三次ツアーです.
 
 本音源は,第三次北米ツアーの初日である11月12日マサチューセッツ州ボストンのボストン・ミュージック・ホール公演をオーディエンスで収録したものです.当時の録音としては非常に高音質,且つバランスが良いものです.

 メーカー情報にもあるように,既発では Ayanamiレーベルから「Down To Boston (Ayanami 103)」として2001年にリリースされていましたが,2007年11月によりマスターに近いカセットテープ音源を変換したものがネット上に出回り,それを元に今回のものが製作されています.今回のものは収録時間も長く,より音がクリアになり,音質向上がハッキリと分かります.ちなみに既発では,1枚のCDR に収めていました.

 "Intro." 部分でのハモンドとベース,ドラムのサウンド・チェックも生々しく,小さなカットがあって,キース・エマーソンの「我々は英国で新しいアルバムをレコーディングしていて,その中の一曲 "Hoedown"です」とのアナウンスから,"Hoedown" の演奏を開始しますが,この時点では "Hoedown" は未だ演奏がこなれておらず,少し硬い感じがするのと,演奏速度も,1973年頃の演奏と比較すると遅いのは,致し方ないかも知れません.
 続く "Tarkus" ですが,何といっても,この中の "Stone Of Years" でのハモンドの音源トラブルは最大の見せ場では無いでしょうか.5分40秒からハモンドの電源が落ち,ベースとドラムだけで,6分26秒まで演奏し中断します.その後,キースは落ち着きはらって「オルガンの電源が落ちたようだ...」と観客と笑いながらやりとりして余裕があります.長いツアーの中では色々なことがあるのでしょうね.(笑)
 そして電源復帰後,何事もなかったかのように,中断点から再開(7分25秒)するのは流石であり,この中断を含めて30分に及ぶ "Tarkus" は圧巻です.

 続く "Take A Pebble" ですが,第三次北米ツアー初日の関係のサービスでしょうか,グレッグ・レイクのパートの前に,キース・エマーソンの "Jeremy Bender" 風の伴奏をバックに,フォスターの "Oh Susana" の一節をグレグ・レイクが歌っているのも興味深いです.
 "Knife Edge" の 6分32秒に,マスターに起因すると思われるドロップ・アウトがあり,続く "Rondo" に関してもところどころで発生しています."Rondo" は,11分強のカール・パーマーのドラム・ソロをはさんで,再度メイン・テーマである "Rondo (Reprise)"へと.
 残念ながら "Rondo (Reprise)" の1分41秒~1分48秒のところに,何故か "Knife Edge" のエンディングが現れます.テープチェンジ等によるカット部分を修復しようとして誤ったのでしょうか.

 メーカー情報では
 『1971年11月に2週間ほど行った北米ツアー初日、11月12日のボストン・ミュージック・ホール公演を極上オーディエンス録音で収録。
 この時代の客席録音としては別格の音質で収録されており、そのパフォーマンスの素晴らしさ同様に、音質クオリティに実に驚かされます。この音源は「DOWN TO BOSTON」というタイトルで音盤化されていましたが、今回は既発を上回る鮮度抜群のサウンドで収録されており、おまけに3分ほど長く収録されています。既発に比べ、冒頭からして30秒長く収録されており、その間、緊張感あふれる生々しいドラム、オルガン、ベースの試し弾きを聴く事ができます。
 「次の新作から」というMCで披露される Hoedown は、まだライブでこなれていない様子で、アルバム同様のスピードで演奏されています。中間奏のムーグプレイもまだ手探りの様子で、その初々しい演奏が新鮮に響きます。
 Tarkus も、同じくこの時期らしい、飛ばしすぎず、丁寧でがっちりした演奏で聴き手を魅了しますが、見事なオルガンソロを聞かせる Stone Of Years の後のボーカル・パートで、突如オルガンの電源がオフになってしまいます(5:40)。ひとしきりベースとドラムだけで演奏したあと、演奏がストップ(6:26)。キースは特に動じた様子もなく「電源が落ちたみたいだ・・・おっ、パワーランプがついたね。キーボードを押してみよう、大丈夫だと思うよ。(音が出て)Yeah Good!」と余裕のMC。7:25でちょうどストップした場所から演奏を再スタートするという珍しいシーンを聴くこともできます。アクシデントで水を差されたものの、それを忘れさせるようなダイナミックな演奏を聴かせるバンドの力量に感動します。13分台の狂乱のリボン・コントローラーのプレイも迫力満点。
 Take A Pebble のピアノソロ4分台ではBitches Crystalのピアノリフ、Jeremy Benderの編曲のようなプレイ(ボーカル入り)も飛び出します。キースの優雅なピアノソロが炸裂するPiano Improvisations では初期から Ladies & Gentlemen への橋渡しのような、この時期特有の荒々しさと後期のスケールの大きな洗練されたプレイがミックスされたような素晴らしい演奏を聴く事ができます。グレッグのボーカルも70年代初頭らしい瑞々しさが実に最高です。
 Knife Edgeではカールが果敢に様々なドラム・アクセントを行い、荒っぽいながらも曲に活力を加えています。4:20のシンセの立ちっぷりは見事。
 この時期らしい暴力的なエンディングから Rondo に雪崩れ込む瞬間も最高の一言。オルガンを揺らして、機関車のようなサウンド・ギミックをかましたイントロも、鍵盤を豪快にひっかくグリッサンドも、誰も真似できないオルガンとの格闘プレイも、後期ELPのお定まりプレイとは無縁の、真に迫力ある演奏を聴く事ができます。11分に及ぶカールのドラムソロも、長いキャリアの中で、最も重くハードヒットする渾身のプレイを披露しており、絶頂期の凄まじさを体感させてくれます。既発同様に Rondo(Reprise) の1:40で音切れがありますが(おそらくテープチェンジ)、それ以外はコンサートの全貌を収録。音質・演奏の素晴らしさともにトップクラスで、ELPのライブCDとしては大別格と言えるでしょう。

★beatleg誌 vol.92(2008年3月号)のレビュー要約です。ご参考まで。

1971年11月に行われた北米ツアー初日のボストン公演を収録。既発盤に使用されていた音源はマスターから若干の世代を経ていたが、今回は録音者自身のリールテープからダイレクトにデジタル化された音源を使用し、更に3分ほど長い収録となった。音質は全体的に素晴らしいが、テープ劣化が原因と思われる箇所も幾つか存在する。オープニングはHoedown。アレンジは程完成しているが、ドラムがブレイクするタイミングなど、細かい部分で粗さが残る。TarkusのStones Of Yearsの途中ではパワーロスのため、エマーソンのオルガンが出なくなるが、エマーソンの短いMCを挟んで、演奏が再開される。Take A Pebbleのピアノソロではエマーソンのフレーズに反応したグレッグが、「Oh Suzanna」のサビの部分を口ずさむシーンは非常にレアだ。アンコールはRondo。途中のドラムソロにおいて、カールは観客とのコール&レスポンスを楽しみ、耳馴染みの無い様々なパターンのソロを披露しながら盛り上げ、後半のエマーソンのソロに繋げる。なお、ボーナスディスク「DETROIT 1971」が添付されいるが、ボストン公演3日目後のデトロイト公演を収録しており、低音が効いた良好なオーディエンス録音である。本公演のオープニングはイエスが務めていたが、ELPではアンコールのRondoがカットされ、A Time And A Placeが演奏されている。サビの部分ではレイクの大絶叫が聴ける。』
との事.


Boston 1971 (Virtuoso 010/011)
 $cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-ELP Boston 1971
 Live At Boston Music Hall, Boston, USA 12th November 1971

 Disc 1
  1. Intro.
  2. Hoedown
  3. Tarkus
  4. Take A Pebble
  5. Piano Improvisations
  6. Take A Pebble(Reprise)

 Disc 2
  1. Knife Edge
  2. Rondo
  3. Drum Solo
  4. Rondo (Reprise)

 Intro.
 
 Hoedown
 
 Tarkus (Part 1)
 
 Tarkus (Part 2)
 
 Tarkus (Part 3)
 
 Take A Pebble
 
 Knife Edge
 
 Rondo
 
 Rondo (Reprise)
 


 初回プレス分には,本編のボストン公演3日後の11月15日、
 デトロイトはイーストタウン・シアター公演を高音質オーディエンス録音で収録したボーナスCDR が付属しています.

 Detroit 1971 (Bonus CDR)
 $cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-ELP - Detroit 1971


[参考]
 Down To Boston (Ayanami 103)
 $cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-ELP - Down To Boston (Ayanami 103)

 1971 2nd & 3rd U.S. Tour Dates
  July
   17 Sports Arena,San Siego,CA,USA
   18 Berkley Community Center,Berkley,CA,USA
   19 Hollywood Bowl,Los Angeles,CA,USA
      (with Edgar Winter and Humble Pie)
   22 Place de Nation,Montreal,CANADA
   23 Argadone,Vancouver,CANADA
   24 Paramount Theatre,Seattle,WA,USA
   25 Paramount Theatre,Portland,OR,USAn
   30 Music Hall,Houston,TX,USA
   31 Municipal Auditorium,San Antonio,TX,USA

  August
   04 Municipal Auditorium,Atlanta,GA,USA
   06 Pirates World,Dania,FL,USA
   07 Pirates World,Dania,FL,USA
   09 Hollywood Sportatorium,Miami,FL,USA
   10 Hollywood Sportatorium,Miami,FL,USA
   12 Stanley Park Stadium,Toronto,CANADA
   13 Place des Nations,Montreal,CANADA
   14 NJ Convention Hall,Asbury Park,NJ,USA
   18 Syracuse Auditorium, Syracuse,NewYork,USA
      (Featuring ELP & Edgar Winter's White Trash)
   19 Peace Bridge Center,Buffalo,NY,USA
   20 Dayton Hara Arena,Dayton,OH,USA
   21 Transit Auditorium,Chicago,IL,USA
   22 Stanley Theate (not Syria Mosque),Pittsburgh,PA,USA
   24 Wonderland Gardens,London,Ontario,CANADA
   25 The Opera, National Arts Center,Ottawa,CANADA
   28 Public Auditorium,Cleveland,OH,USA
   30 Bushnell Auditorium,Hartford,CT,USA
   31 Alexandria Roller Rink,Alexandria,VA,USA

  September
   01 Gaelic Park,Riverdale,NY,USA

  November
   12 Music Hall,Boston,MA,USA
      (free concert)
   13 Philadelphia. Spectrum,Philadelphia,PA,USA
      (with YES)
   14 Transit Auditorium,Chicago,IL,USA
   15 Eastown Theatre,Detroit,MI,USA
   20 The Warehouse, New Orleans,LA,USA  
   20 Municipal Auditorium,Atlanta,GA,USA
   25 Madison Square Garden,NYC,NY,USA
      (with J GEILS BAND)
   26 Civic Arena,Pittsburgh,PA,USA
   29 Lyric Theater,Baltimore,MD,USA