1970年9月26日から開始された北米ツアーを終了したフロイドは,1970年11月06日のオランダ,アムステルダム公演を皮切りに欧州・北欧ツアーを開始します.本CDは,その欧州ツアーの中盤で 2日連続で行われたスイス,モントルー公演から,2日目の1970年11月22日の公演を収録しています.

 初日に当たる1970年11月21日は,LIGHTHOUSEでのギフトCDR「Montreux 1970 Day 1」として配布された後,9ヶ月程度してSigmaレーベルから「Victor's Montreux (Sigma 60)」がリリースされ,その後の2010年11月21日にHarvestedレーベルから「Too Late For Mind Expanding (HRV CDR 036)」が発表され,その後,その音源を使用したと思われる,LIGHTHOUSEのギフトアイテムで完全版のCDR「Too Late For Mind Expanding」,その直後にプレス化された「Too Late For Mind Expanding (No Label)」が発売されています.このLIGHTHOUSEのギフトCDを保持しているので,未だにプレスCD「Too Late For Mind Expanding (No Label)」は購入していません(笑).

 今回もHarvestedレーベルによる「Too Early For A Gig (HRV CDR 037)」が発表され,今回のプレスに繋がったのでしょう.

 メーカー情報では
 『今回は翌日のモントルー2日目公演の最高音質決定盤です.バンドがこの日,ステージに登場したのは午後2時30分ということで,今回「Too Early For A Gig」とタイトルリングされたとのことです.この2日間の記録は,ヴィクターなる人物によって Uher 4200 と Sennheiser MD-421 を使用して,サウンドボード録音(それ以上?)に匹敵する超高音質マイク録音で収録されたのは周知の事実.「Too Late For Mind Expanding」は,2009年に登場したヴィクターの「Raw Master」のリストアヴァージョンを収録し,最良の初日ライブ盤を作り上げていましたが,本盤は,現存する3音源を組み合わせ,2日目のベスト・ヴァージョンを 2時間19分に渡って収録しています.ディスク1の Astronomy Domine から Atom Heart Mother までは,1995年に「Smoking Blues」としてリリースされた,ヴィクター録音による最高音質テイクを収録.音質はこれ以上は無い程でまさにパーフェクトなサウンドです.これはマスターの 1st Gen か 2nd Gen と言われていますが,ピッチの調整は勿論,リマスターにより音質は向上しており,左右のバランスもアジャストされており,原音に比べて,格段にブラッシュアップされた印象を受けます.右チャンネルのラウドパートにおける歪みも緩和されています.
 The Embryo から A Saucerful Of Secrets までは,ヴィクターとは別の録音者によるディフ・マスターより収録しています.通称「Reeling On Pink Floyd - Tape 24」と呼ばれる音源で,マスター・リールから直にDATにコピーしたテイクです.ヒスノイズを含むものの音の鮮度は申し分なく,公式版かと錯覚させるヴィクター音源ほどの高音質ではないものの,この時代としては,相当高レベルな録音であり,全体の安定度も含め,聴き応えは十分です.ピッチも正確にアジャストされており,全体の音像も適度に整えられています.ハーヴェステッドも発表している通り,この音源の弱点はヒスノイズにありますが,ヒスを緩和することで,楽音の音色そのものが変化してしまうので,私たちも,明確なアナログノイズは緩和しましたが,ヒスノイズはそのままにしました.現行では,これが最良のヴァージョンであることは間違いありません.ラストの Interstellar Overdrive は2009年に登場したヴィクターの「Raw Transfer」テイクです.こちらもテープ特有のヒスノイズはありますが,澄み切ったようなクリアーなサウンドで壮絶なライブを堪能できます.最後の5分間はヴィクター版では欠落していたので,この部分は「Reeling Tape 24」で繋いでおり,15分に及ぶ同曲の完全収録を実現しています.現状,考え得るベストなソースと技術で再現する伝説の1970年モントルー公演2日目のベスト・ヴァージョンを収録した決定盤』
との事です.


 この公演はメーカー情報にも記載されているように,午後2時30分に開始になったようで,「Astronomy Domine」の前にウォーターズが観衆に向けて,皮肉っぽく "Good Morning" と言っているのを聴くことができます.MCに続いて「Astronomy Domine」が演奏されますが,流石ヴィクター録音です,本当に素晴らしい音で,サウンドボードと言われても判りません.「Astronomy Domine」と「Fat Old Sun」間のサウンドチェックもそのままとらえています.「Fat Old Sun」冒頭部のギルモアのギターも生々しく収録され,9分18秒からのライトのキーボードも綺麗に収録されています.「Cymbaline」ではレコーダー側のリミッターがかかるのか,少しコーラス部分で音像が遠めになる部分があります.7分弱から定番の足音とドア開閉のSE(:Sound Effect)が始まりますが,これがまたステレオで綺麗に収録されています. 9分49秒から再びテーマに戻りますが,テーマに戻った後の,10分15秒から10分55秒にかけて何故かノイズがのっており,また "And Suddenly It Strikes You That They're Moving Into Range" の歌詞を歌う際にギルモアが一瞬吹き出しそうになります.その後,4人編成での「Atom Heart Mother」が開始されます.やはり「Cymbaline」同様にバンド演奏が割りと大きな音量になる部分では残念ながら音が歪みます.「The Embryo」~「A Saucerful Of Secrets」までは,メーカー情報にもあるように, ヴィクター録音ではない関係から,それまでの曲と比較すると,音像が少し遠く,篭った感もありますが,こちらも相応に良い音質なので,聴いていくうちに慣れてきます.「Careful With That Axe, Eugene」では,ウォーターズがスクリームする 5分19秒から案の定,音割れします.ヴィクター音源でも歪む部分があり,両方の音源で頻繁に歪みが発生するという事はかなりの大音量で演奏されたのでしょうか.最後の「Interstellar Overdrive」は,前日の音源を収録した「Victor's Montreux (Sigma 60)」にもボーナスとして入っていたもので,今回は終盤部分の欠落を補填されています.
 Harvestedレーベルの今回の「Too Early For A Gig (HRV CDR 037)」が,2012年3月の発表で,その直前は「Too Late For Mind Expanding (HRV CDR 036)」で,2010年11月の発表なので,期間だけみると,粗 1年間以上費やしているようにみえます.それにしても Harvestedレーベルの技術は凄いですね.関心してしまいます.

「Cymbaline」中のノイズは非常に残念ですが,全体を通して,素晴らしい音質であり,コアなファンでなくとも充分に楽しめますし,必聴の価値があります.


Too Early For A Gig (No Label)
 cinnamonの音楽ときどき競馬予想-PF Too Early For A Gig
 Live at Altes Casino, Montreux, Switzerland 22nd November 1970

 Disc 1
  1. Astronomy Domine
  2. Fat Old Sun
  3. Cymbaline
  4. Atom Heart Mother
  5. Embryo

 Disc 2
  1. Soundcheck
  2. Green Is The Colour
  3. Careful With That Axe, Eugene
  4. Set The Controls For The Heart Of The Sun
  5. A Saucerful Of Secrets
  6. Interstellar Overdrive


 Astronomy Domine
 

 Fat Old Sun
 

 Green Is The Colour
 

 A Saucerful Of Secrets
 



[参考]
 1970 2nd European Tour
  November
   06 Concertgebouw, Amsterdam, The Netherlands
   07 Grote Zaal, De Doelen, Rotterdam, The Netherlands
   11 Konserthuset, Gothenburg, Sweden
   12 Falkoner Teater, Copenhagen, Denmark (Two Shows)
   13 Vejlby Risskov Hallen, Arhus, Denmark
   14 Ernst-Merck Halle, Hamburg, West Germany
   19 Civic Arena, Pittsburgh, PA, USA (Rescheduled To Syria Mosque)
   21 Super Pop '70 VII, Casino de Montreaux,
             Altes Casino, Montreux, Switzerland
   22 Super Pop '70 VII, Casino de Montreaux,
             Altes Casino, Montreux, Switzerland
   23 Grosser Konzerthaussaal, Wiener Konzerthaus, Vienna, Austria (Rescheduled To 29 November)
   25 Friedrich Ebert Halle, Ludwigshafen, West Germany
   26 Killesberg Halle 14, Stuttgart, West Germany
   27 Neidersachsenhalle, Hannover, West Germany
   28 Saarlandhalle, Saarbrucken, West Germany
   29 Grosser Konzerthaussaal, Wiener Konzerthaus, Vienna, Austria (Cancelled)
   29 Circus Krone, Munich, West Germany

  December
   05 ORTF TV Studios, Buttes Chaumont, Paris, France (Volumes, ORTF2, Broadcast 27 May 1971)
   11 Big Apple, Regent Theatre, Brighton, England
   12 The Roundhouse Public House, Dagenham, England
   18 Town Hall, Birmingham, England
   20 Colston Hall, Bristol, England
   21 Free Trade Hall, Manchester, England
   22 City (Oval) Hall, Sheffield, England



 Montreux 1970 Day 1 (LIGHTHOUSE Gift)
 $cinnamonの音楽ときどき競馬予想-PF Montreux 1970 Day1

 Victor's Montreux (Sigma 60)
 cinnamonの音楽ときどき競馬予想-PF Victor's Montreux

 Too Late For Mind Expanding (HRV CDR 036)
 $cinnamonの音楽ときどき競馬予想-PF Too Late

 Too Late For Mind Expanding (LIGHTHOUSE Gift)
 cinnamonの音楽ときどき競馬予想-PF Too Late For Mind Expanding

 Too Late For Mind Expanding (No Label)
 cinnamonの音楽ときどき競馬予想-PF Too Late For Mind Expanding

 Too Early For A Gig (HRV CDR 037)
 $cinnamonの音楽ときどき競馬予想-Too Early For A Gig (HRV CDR 037)


[関連記事]
Victor's Montreux (Sigma 60)
 $cinnamonの音楽ときどき競馬予想-PF Victor's Montreux