世界中で日本の人気が高まっている。日本の礼賛記事も多い。日本はいい国だと思っているので、それはそれでとても嬉しいことだ。
●日本の人気
日本の人気が高いのは、こんな資料でも明らかだ。
■訪れたい国第一位
コロナ収束後に訪れたい国「1位は日本」。選ばれたその理由(Forbes JAPAN、
2022/02/19)
■移住したい国第二位
さらに、移住したい国、日本は2位に。日本を選んだ13カ国はどこ?【ランキング】(海外送金サービス会社「Remitly」の公式サイトより)
「世界平和度指数で最も安全な場所の1つとして目立つように取り上げられ、失業率が低く、移民の選択肢が多いことを誇っているカナダが世界の他の地域よりも頭と肩を上回っていることは間違いなく当然のことです。それに加えて、そのフレンドリーな地元の人々と美しい景色があり、国がとても魅力的であることは驚くことではありません。
しかし、カナダ人自身は、素晴らしい景色、安全性、そして膨大な数の雇用機会で知られるさらに別の国である2位の日本への移動を切望していることがわかりました。他の人気のあるオプションには、ヨーロッパ内のスペインとドイツ、アジアのカタールが含まれていました」
とある。
以下に色分けされた地図では、世界のさまざまな地域で最も人気のある国を一目で確認できる。日本を選んだ国は、カナダ、アメリカ、モンテネグロ、ジョージアと、ネパール、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、インドネシア、フィリピン、台湾、オーストラリアとなっている。大体予想できる国々だ。一方、当の日本が世界で一番移住したい国は、イギリスだという。
●YouTubeの日本礼賛(らいさん)記事
YouTubeを見ると、日本に住んでいる外国人による礼賛記事が多い。
日本人だから、日本のことを褒められると素直に嬉しい。そして我が国を再発見することが多い。
褒められる点を集約するとこんなことだ。
■安全・安心…落とし物が返ってくる。女性が夜を独り歩きしてもほとんど大丈夫。
■綺麗・清潔…町がきれい。トイレがたくさんあって、しかも清潔で、きれい。
■食文化…どこに行っても平均点以上の味の店がある。
■文化・歴史…他国では見られない文化や史跡が、いたるところにある。
■便利…24時間営業で、日常品が何でも揃うコンビニが近くにある。
■親切・思いやり・礼儀正しさ…サービス精神が旺盛。相手の気を遣う。
■接客サービス…丁寧な挨拶と笑顔で客を迎えてくれる。
■時間に正確…電車の時間が狂わない。
他国のことはよく知らないが、本当にそうだろうと思う。
いくつも日本在住の外国人の記事を覗いているが、ウクライナ美人のアンナ・ミッツェルさん(42歳、写真)は最も多いうちの一つだ。話す日本語が流暢で、おっとりした話し方に癒される。
この人の見方は面白い。
■習い事が多い。
■行列をする仕組みが面白い。
●台湾の日本人気
■哈日族(ハーリーズー)
「哈日族」という言葉があるほど親日国である台湾だが、「哈」という言葉は元々英語の「Hot」で台湾語に「哈」(ハー)に変換し、「ある物事に感情を持つほど求める、好きでたまらない」の意味をつけてことから来ている。
元は、台湾の女性漫画家・哈日杏子(日本語では「はにち・きょうこ、ハーリー・シンズ」としている、本名・陳桂杏)(写真左)の造語であり、1996年、4コマ漫画集「早安日本」(写真右)の中で、「哈日症(=日本が大好き病)」の言葉を創作し、台湾全土に広めた。訪日歴は100回以上、日本滞在日数は約2000日に及ぶという。
■オレンジ旋風
ところで、日本ではほとんど報道されていないが、今年の台湾の双十節(10月10日)に、外国人として初めて招待された「オレンジの悪魔」こと、京都橘高等学校の吹奏楽部88名の演奏が大旋風を巻き起こしたことをご存じだろうか。(写真)
YouTubeの記事は無数にアップされており、どれを見たらいいか迷ってしまう。1ヶ月経った今でもその余波は続き、さらに記事が増殖しているほど。その中で、自分はこの動画が一番好きだ。なお、これは祭英文総統の前で演奏したものではない。
●日本礼賛テレビ
以前より減ったが、日本のテレビでは、外国人に「日本は素晴らしい!」と言わせる番組が多い。過去には「こんなものいらない」(写真左)とか、「ここがヘンだよ日本人」(写真右)とかの、日本のことをボロクソに言う番組があったが、ここのところ皆無と言っていい。
今、ほとんど必ず見ていると言っていいほどの日本礼賛の番組はこの3つだ。
■世界!日本に行きたい人応援団(テレビ東京)
■ワタシが日本に住む理由(BSテレビ東京)
■COOL JAPAN~発掘!かっこいいニッポン~(NHKBS)
後の2つの番組は、日本を礼賛するばかりではなく、例えば「ワタシが日本に住む理由」では最後に、司会の高橋克典が「あえて日本にモノを申すとすれば何ですか」と問いかけるコーナーがあるのがいいところだ。日本人もあまり天狗になってはいけない。
番組の終盤に出てくる「日本の好きな風景」というシーンが大好きだ。
Charles Szczepanek/映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」よりフォレスト・ガンプ組曲(1994年)
●日本礼賛について
これほど日本礼賛のメディアに夢中といっても、実は日本の全てが素晴らしいと思っているほど単純ではない。欠点はわきまえて居るつもりだ。
「日本人論」再考(2003年、NHK出版、写真左)の著者で東大名誉教授(文化人類学)の船曳建夫氏(現在74歳、写真右)は、こういうブームが起こるのは「不安」の空気が流れているときだ、と看破していた。
明治維新以来、国が苦境にある時も右肩上がりの時にも、日本人論は日本人がアイデンティティーに不安を抱えた時代に流行し、不安を癒やす「安定剤」の役目を果たしてきた。
「日本人論ブーム」として3期があったが、今回のブームは第2期に似ているのだという。
第1期:日清・日露戦争の富国強兵の時期の「武士道」(新渡戸稲造著)や「代表的日本人」(内村鑑三著)など。西洋の先進国と比較し、日本をポジティブに評価しようとした外向きの時代。
第2期:1929年世界恐慌から開戦ごろまで。九鬼周造の「『いき』の構造」など「日本は非西洋である」を前提に、日本の伝統に価値を求めた内向的な時代。
第3期:敗戦から経済復興までの半世紀。『菊と刀』から『ジャパン・アズ・ナンバーワン』まで、右肩上がりでも『これでいいのか』という不安を背景に、長く日本人論が読まれてきた。
ところが、第2期の不安の相手は西洋だったが、今は中国や韓国を意識している点が特徴。人口減など将来に不安を抱えた日本人が未来に明るいものが見えないゆえに、古来の伝統や西洋人からの評価に価値や癒やしを求め、日本人、ひいては自分自身のアイデンティティーを守ろうとしているのでは...。
船曳氏からはこんな一言も。「適度なお国自慢は望ましいが、『いいことだらけ』とか『世界で一番』とか、他国を見下すところまで行くと、排他的になり、社会は劣化する。自国の首を絞めます。日本を礼賛し過ぎて、自国の足を引っ張ったのでは笑えない」
日本人は、その謙虚さが世界から尊敬されている。日本はいい国だとは思っているが、それは、その昔から教育を重視したこと、平和の時代が長く続いたこと。「ワビ・サビ」や「無常」の精神など、先人たちの努力や、四季の変化など自然環境の賜物である。決して奢ってはいけない。
それでも、日本に生まれ育ったことには感謝している。
ルイ・アームストロング/この素晴らしい世界(1967年)
ポール・モーリア/Wonderful World