●「菅」対「菅」国会対決
「菅VS菅対決 元首相が予算委員会で現職にただした危機管理」(朝日新聞、2021/02/22)という記事があり、おやッと思った。
名前の通り、さぞや菅さんだけに、カンカンに怒って、「カンカン、がくがく(侃侃諤諤)」の論戦が繰り広げられるかと思いきや、どうやら舌鋒鋭い野党時代の菅元首相とは違って、すっかり好々爺になっている。(写真)
元首相は「イラ菅」と呼ばれ、東日本大震災の際に原発の作業員を怒鳴り散らした「瞬間湯沸かし器」だったが、現首相の記者会見の姿を眺めると、この性格だけは引き継がれているようだ。
予算委員会の記事の内容はこうだ。
(2月)22日午前の衆院予算委員会の集中質疑で、立憲民主党の菅直人元首相(74歳、写真左)が質問に立ち、菅義偉首相(72歳、写真右)との論戦を繰り広げた。
菅直人氏は冒頭で「菅総理とのこういう場での質疑は初めて。表記が漢字でいうと同じだから、かつてはときおり混同もされたが、今では『すが総理』が総理として活躍しているのでそういうことも少なくなっている」と語った。
その上で、菅直人氏は自身が首相だった10年前に東日本大震災に直面したことに言及。「福島第1原発の事故が起きたときに最初に頭に浮かんだのは日本沈没という本の状況だった」と振り返り、「コロナと原発は性格は違うが危機管理とか緊急事態という面でみると、共通の面もある。総理になって最悪の場合をどう想定して、どう対処するのか。総理の基本的な考え方を聞きたい」と尋ねた。
菅首相は「一国の総理として、そのような事態も含め、様々なことを想定をして、対策を検討することは当然だと思う」と答弁。「この新型コロナとの闘いが始まって約1年。手探りの部分もあったが常に国民の皆さんの命と暮らしを守るという強い決意のもとに最前線で取り組んできた」と語った。
ただ、菅直人氏は「Go To キャンペーンとかは経済対策であって、感染症そのものを抑制するという対策とはちょっと違うと思う」と疑問も呈した。
●菅首相に対する感想
安倍元首相の首相在位期間と並んで、官房長官の歴代最長在位期間を達成した菅首相だったが、自分は最初からこれはヤバイと思っていた。
“天敵”である東京新聞・望月衣塑子記者(写真)に対してはもう論外だが、いつもしれっとした記者会見の態度や、いかにも裏工作が得意で、裏表のありそうな、陰気さが苦手だった。
それは当たっていた。会見ではいつも官僚の書いた原稿を棒読みする(写真)という、熱意が感じられない姿勢や、自分に従う人物だけを寵愛し、気に入らない官僚はすぐに飛ばすという不寛容さが露呈している。
菅政権の誕生から5ヶ月、発足直後はご祝儀相場ということもあり、65%と高支持率だったが、新型コロナ対応や、首相自らが多人数でステーキ店で会食したことなどが批判され、昨年12月の世論調査では39%に急落。さらに、桜を見る会や、鶏卵業者から現金を受け取ったとして在宅起訴された吉川貴盛元農水省などの「政治とカネ」を巡る問題が相次ぎ、今年1月には33%まで下落した。野党が弱いことをいいことに、いまだに好き勝手なことを繰り広げているが、私見では支持率が一桁になってもおかしくない。普通だったら内閣総辞職するところだ。
振り返ってみると、民主党政権は現在とは真逆の政権で、前者が国民や弱者に重きを置き、後者は国や富裕層に重きを置く。前者は「決断力がなく決められない」、後者は「生煮えでも決める」。前者は結果的に「迷走」に終わったが、後者は「暴走」しているという違いだ。このままでは、政治責任を取らなかったということでも前政権とともに歴史に残るであろう。「政治責任が有効に機能しないところには民主主義が存在しない」という憲法学の杉原康雄・一橋大名誉教授の言葉の意味は重い。
民主党政権に対する期待が多かっただけに、その反動と言うか、落胆も大きかった。しかし、現在の政治の混迷と劣化ぶりを見ると、民主党政権がもっと頑張ってくれていたならと悔やまれてならない。日本が模範国として世界の尊敬を集めるチャンスを逃してしまった。
さて、本題である。
●「菅」姓のルーツは
自分のルーツを探す方法として、名字から考えてみるのが、NHKの「ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!」(画像)である。
「名字でわかる あなたのルーツ」(2017年、小学館、写真左)などの著書で有名で、同番組にコメンテーターで出演している姓氏研究家・森岡浩氏(59歳、写真左)によれば、名字の「読み方」で先祖の出身地がわかるという。
「菅」は前述の通り、「すが」とも「かん」とも呼ぶ。もちろん、現首相の菅義偉氏は「すが」、元首相の菅直人氏は「かん 」である。ちなみに、前者は秋田県・湯沢市(地図左)、後者は山口県・宇部市(地図右)の出身。
他にも、加計学園問題では渦中の人だった愛媛県・今治元市長の菅良二氏(かん りょうじ、77歳、写真)。今月4選を目指したが落選したようだ。この人の出身は同市の大三島町(地図)だ。
『名前由来net「菅さんの名字の由来や読み方…」』によると、左分布図の通り、全国的にみて、「菅」姓が圧倒的に多いのは愛媛県。特に今治市(大三島)、西条市、久万高原町、松山市に多いという。おおよその人数は右図の通り。
「菅」は、すが、かん、すげ、ずかという読み方があり、愛媛県では96%以上が「かん」さんである。山形県も90%以上が「かん」さん。そのため、全国の「かん」さんの半数以上は、この両県にいることになる。
ところが、菅首相の出身地である秋田県では99%以上が「すが」で、ほとんどの県で「すが」の方が多いという。
なお、「菅野」(かんの/すがの)については、「東風(こち)吹かば にほひよこせよ梅の花 主なしとして 春を忘るな」を詠み、梅鉢紋(画像左)を使用した、菅原道真公(別称:菅公)(903年、57歳で没、画像右)の末裔であるとの伝承がある。
関東以北が「かんの」、西日本では「すがの」が主流。全国を合計すると「かんの」が7割、「すがの」が3割、残りの3%程度は「すげの」と読むという。(日刊ゲンダイ2015/3/11号参照)
有名人では、女優の菅野美穂(かんの みほ、43歳、写真左)と、プロ野球選手の菅野智之(すがの ともゆき、31歳、写真右)がいる。前者の出身は埼玉県・坂戸市だが、両親は岩手県の出。岩手県では実に97%以上が「かんの」だそうだ。後者は相模原市出身。