小説「冷血」 | 小川村塾ブログ

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 冷血(上・下)高村薫著を読んだ。
 

 終始、話は淡々と進んでいく。
 言い換えれば、山あり谷あり、という感じではない。
 ワクワクドキドキ感はない。

 上巻で歯科医一家4人殺人事件について、犯人2人も捕まってしまう。
 事件終結が犯人逮捕と考えると物語は終わりということになる。

 犯人逮捕にトリックがあったわけでもなく、ドラマチックでもなく、犯人は逮捕される。

「えーっ」
「レディ・ジョーカー」がとても面白かったので、それと同様の物語を期待して読んでいるのに、期待は大きく外された感じがしてくる。

 何も驚きがないまま上巻が終わってしまう。

 まだ、下巻で何かどんでん返しがあるのではないか、「エーッ。そうだったのか。」
 なんてことになるのではないか、と下巻のはじめ頃は期待しながら読んでいくが、それも期待外れとなる。

 下巻は犯人2人の殺人動機究明など犯人の人物像に迫る何かを犯人の供述より探る展開が続く。
 
 下巻の最後の方では読んでいて少し気持ちは高まってくるが、何かモヤモヤしたままで終わってしまう。

 村上春樹作品のように答えが見つからないまま何かモヤモヤしたままで終わってしまっても、読後感が爽やかでモヤモヤも爽やか、というのならよいが、そのような爽やかさは読後にはない。

 そもそもタイトルの「冷血」とは何なのだ。

 しっかりとこれだという答えが読んでいて自分には分からない。
 下巻でその答えが読み取れるのだろうが、自分には分からなかった。

 下巻で「冷血」という言葉が初めて判事の話で出てくるので、ここから本質に突入か、という思いで読んでいっても読み取れなかった。

 下巻で「冷血」という言葉は4回ほど出てくるが、これだという答えには結びつかなかった。

 ありきたりの人間は薄情で冷血なものなのだ。
 などという結論ではないと思うので、余計分からないままで終わってしまった。

「冷血」、これが意味しているものは何だったのだろうか。