防衛機制(取り入れ・同一視)とは?・・⑩ | 神経質逍遥(神経質礼賛ブログ)

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えーっ! まだ続くの? と、お嘆きのあなた。

大丈夫です。⑫までで終了予定です。もう少しですよ。さて、まだ登場していない防衛機制って、いったいなんでしょうねぇ。

さて、本日は「同一視(同一化)」「取り入れ(摂取)」を取り上げます。どちらもあまりなじみのないものですが、知っておく分には損はないと思いますよ。

まずは「同一視(同一化)」です。

「同一視」とは、「自分」と言う主体が、「相手」と言う他の主体が持っている特徴や外見をお手本として、自分を変化させていく心理過程の事です。または他人に自分を重ね合わせ、自己評価を高めること、とも言われています。

 

 

例えば赤ちゃんの場合、母親の「おっぱい」を飲むことで自分の栄養にしていきます。これはただ空腹を満たすだけではなく、母親の愛情のこもったミルクを取り入れることで、心も満たそうとしているのです。

赤ちゃんが成長していくと、この行為は「取り入れ」と呼ばれます。

例えば子供が親から「これしちゃダメですよ」と言う禁止を受け、それに従うのも、子供が「おままごと」や「ごっこ遊び」に興じるのも、大人の世界を取り入れているからにほかなりません。

つまり成長過程で大人の真似をしたり、親や先生から教わっていくことで、自分らしさを構築していくのです。

 

さらに成長して思春期を迎えるころになりますと、これまで「取り入れた」様々な価値観や考え方が自分のものになっていきます。それに従って行動もより適応的になってきます。この段階に到達すれば、すでに親との「同一視」が成し遂げられたことになるのです。

「同一視」が形成されると、自分の役割や人とのかかわり方など、抽象的なものがより具体的に取り入れられることになるので、心の中の『自分らしさ』がより鮮明になるのです。

 

 

具体例をいくつか紹介しましょう。

例えば、あこがれの人(アイドル、有名人等)と同じ服装をする。

憧れのスポーツ選手と同じフォームを練習する。

これらは目標となる対象に自分を重ね合わそうとしているのです。

あるいは尊敬する上司などの仕事を進め方をまねる。

これなどはスキルを学ぶ上で必要な過程ですね。

別の例では、例えば虐待されている子供は、親との境界があいまいになる。と言われています。これは親と同一視することで、危機を克服しようとしてると言われているのです。

 

続いて「取り入れ」です。

「取り入れ」とは、他者の価値観や感情などを自分のものにすること、真似ること。「取り入れ」はちょうど「投影」の反対の現象だと言われています。

「同一視」でも述べたように、人は外からものを取り入れ、自分づくりをしています。体の場合は食べ物や飲み物ですが、心の場合は自分にとって「重要な他者」が持っている要素を取り入れて、育っていくことになります。それを一般的には「真似る」と言います。

 

先の例のように「ごっこ遊び」などを通して、身近な大人の要素を取り入れるための練習にいそしんでいるのです。こうして子供は親の性格や態度に自然と似てくるのです。このような「取り入れ」の過程で、善悪の価値観などや社会的規範なども、自分の心のうちに育むのですね。

「取り入れ」は無意識に起きていることですが、人は「重要な他者」と似ることで、相手を身近に感じられ、お互いが共有する環境て適応しやすくなるのです。一方で「重要な他者」を失った場合には、相手に向けるべき愛情や怒りを自分に向けて、抑うつ的になることがあります。

 

 

ここでも具体例で考えて行きましょう。

一般的なのは、好きな人の行動をマネするというもの。

子供が、親などの重要な他者の行動をマネする。こうした「取り入れ」は正常な発達過程としてよく見られることですね。

大人になれば、尊敬する上司や先輩と同じキャリアをたどろうとします。ただし、真似する対象が見つからない場合、不適応を起こすこともあるそうです。

 

先生に叱られて苦痛を感じた生徒が、先生の攻撃性を取り入れて、攻撃的な生徒になってしまう。

一般に「取り入れ」は好ましい反応ととらえられますが、過剰になると自他の区別がつきにくくなり、例えば周りの成功をあたかも自分が成し遂げたかのように喜んで満足しまうといった、「自我拡大」傾向になってしまうことがあります。

 

ここで、「取り入れ」と「同一視」の違いについて述べておきます。

「取り入れ」は、主に未熟な発達段階で起こるものであり、他者を断片的に取り入れるものなんです。それに対して「同一視」は、他者と自分をそっくり重ね合わそうとすることです。

 

参考・・・「心の豆知識」、「カウンセリングの理論」