♀「ねえ、愛してる?」
♂「愛してるよ」
♀「ほんとに愛してる?」
♂「愛してるってば!」
♀「ほらっ! やっぱり愛してないんだ!」
男は論理、女は感情と言いますが、日本人に関しては男も女も「感情が先行」するようです。
カウンセラーがクライアントのために「良かれ」と思って説得するのですが、相手はいまいち納得しません。
「あんたの言うことはわかるけれど、いまいち納得できねぇんだなぁ」
と言われます。論理的にはわかるんだけど、感情が納得できない。と言うジレンマを表しているのでしょう。
日本人は特に「感情が先行」するために、このような「ドツボ」にはまってしまうケースが多いのです。不慣れなカウンセラーは何とか理解してもらおうと、なだめたりすかしたりして、説得を続けようとしますが、相手はますます意固地になってしまいます。
こんな時は、どうすればよいのでしょう。
それは、説得をやめる以外にありません。このような場合、クライアントは「教えて欲しい」のではなく、「解かってほしい」のです。
特に自分の気持ちや感情を理解してほしいと思っています。だから昨日もチラッと言いましたけれど、まずは相手の「感情を拾ってあげる」ことなんです。
一言で言うと、「共感」です。
そこで日本人向けの「奥の手」があるのです。
それは「説得より納得」です。「納得」とは「腑に落ちる」ことです。よほど優秀なカウンセラーなら、もしかすると説得や助言で、相手の心にすとんと入るような素晴らしいカウンセリングが出来るかもしれませんが、私たちにはまず無理です。
では、どうしたらよいのでしょう。
それは、こちらが相手の質問に答えるのではなく、相手に答えさせるための質問をしていくことなんです。
ちょっと蛇足になりますが、以前、カウンセリングとコンサルティングの違いを説明しました。コンサルティングは相手の質問に適切に答えること。カウンセリングは、相手が答えを見つけやすいように、適切な質問を投げかけること。です。もちろん共感しながらですよ。
まずは感情を拾ってあげます。
「つらかったでしょうね。」
「良くここまで頑張ってこられましたね。」
「差し支えなかったら、ここまで頑張ってこられた理由をお話しくださいませんか?」
こんな感じで質問をします。こうして相手の気持ちに寄り添いながら、共感と質問を繰り返していくうち、相手の心の中が整理されてきます。
そして、こんなことを言い出します。
「・・やはり、私にも至らない点があったのですよね。自分を棚に上げて、相手を否定し続けていたんです。」
ここで「はい、その通り! よくわかりましたね!」
なんて言ってはいけませんよ。引き続き共感と受容、そして質問を繰り返していくと、相手の中で何かが引き出されてきます。
それが「相手の見つけた答」です。誰かに説得されたり、世論などに惑わされたものではなく、自分自身で考え、練り上げられた「答え」です。
だから「腑に落ちない」わけはありません。クライアントは自分から見つけた答に対し、初めて心から「納得」できるのです。
蛇足になりますが、カウンセラーが陥りやすい「罠」を一つ紹介します。それは「心の物差し」です。だれでも「心の物差し」を持っています。それは仕方がないのですが、カウンセラーの場合、自分の「物差し」はいったん棚に上げて、クライアントの「物差し」で考え、共感し、受容していくことが大切です。
カウンセラーの条件の一つに「自己一致」と言うのがあります。それは言っていることと心の中が一致していることです。口先でいくら「共感」していても、心の中で「何言ってやんでぇ」などと思っていたら、それはノンバーバルな部分に必ず現れます。そして心が弱っているクライアントは、それでなくても感受性豊かになっているので、そのような嘘はてきめんにばれるのです。
これでいくら「適切な質問」をしても、クライアントは答えを見つけることは出来ません。
「心の物差し」については、また次回触れます。
参考・・・『人は一人一人大切な存在です。カウンセリングの基本となる人間関係を学びましょう』