飲み込みの悪い話② | 神経質逍遥(神経質礼賛ブログ)

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『誤嚥』は、個人の問題ばかりではありません。介護の現場でも食事介助時の誤嚥に対しては、特に注意を払っています。咀嚼しやすい食材の使用、調理によりやわらかくする、場合によっては隠し包丁を入れたり、食材をミキサーですりつぶしたりします。さらに嚥下障害の程度により、食材にとろみをつけたりします。

一応基本的なことですが、かといって柔かいものばかり提供していると、咀嚼力そのものが低下してくるので、加減が必要になってきます。

 

 

さらに食事介助時の大原則があります。基本は利用者の目線に合わせること。一対一で介助すること。車椅子の利用者や、ベット上で食事をされる方には特に、"前かがみ姿勢"を保持するように見守るか、あるいは介助をします。

皆さんもご飯を食べるときは、自然と前傾姿勢になりますよね。ためしにそっくり返って食べて御覧なさい。たちまち噎るから(笑)。

 

以上述べたことは基本中の基本です。マナーとか規則とか言うものではなく、介護技術の問題です。もし介助者が面倒くさいからと、立ったまま食事介助を行おうとすれば、座っている利用者は上を向くことになり、誤嚥リスクを高めてしまいます。

けれども実際の介護現場では、人手不足を理由に立ったまま食事介助をしている光景を垣間見ることがあります。教育はされているはずですから、単に職員の配慮が足らないだけなのでしょうか。

 

これは私の独断ですが、食事介助と言うものを考えるとき、『いかに上手に食べさせることが出来るか』と言った支援者側、つまり職員側からの考察にとどまり、肝心の当事者で有る利用者の視点、つまり食べさせられる側の視点、と言うべきものが欠落しているように思えてならないのです。

 

 

さきほど私たちの食事姿勢を問いかける質問をしました。それは普段無意識にしている食事の姿勢を思い出したもらいたかったからなんです。おそらくほとんどの方が前傾姿勢で、咀嚼済みの食べ物を飲み込んでいるはずです。これが一番噎せにくい姿勢だからです。

ところが立ったまま食事介助をしてしまうと、利用者はどうしても後傾姿勢になります。この状態で飲み込んでしまうと、確実に噎せてしまうでしょう。これは健康な人でも同様です。

 

忙しいのは解ります。人手が足りないのも解ります。けれどそんなあわただしい中だからこそ、利用者と一緒に椅子に座って食事介助をしてもらいたいんです。そして利用者と介助者が同じ目線になるようにするのです。皆さんもそうですよね。皆ばたばたしている中自分ひとりが座って食事している状況よりも、一緒に座って食事をともにしてくれる人がいた方が、落ち着いて食べられますよね。

たったそれだけのことですが、利用者の満足度は確実に上がると思いますよ。

 

さて、せっかく嚥下の話しをしていますので、うちの職場でもやっているお口の嚥下体操をご紹介します。

題して『パ、タ、カ、ラ 体操』と言います。

やり方は簡単です。食事の前などに「パパパパ」、「タタタタ」、「カカカカ」、「ララララ」と言う風に続けて発音するだけなんです。

ではなぜ「パタカラ」なのか、ご説明します。

 

『パ』は、口をしっかり閉じないと発音できません。口を閉じる筋肉を鍛えることで、食べこぼしを防ぎます。

『タ』は、舌を上あごに打ち付けて発音します。咀嚼時に舌で食物を上あごにしっかり押し付けることが出来ます。

『カ』は、のどの奥で発音します。のどの奥の感覚を意識することで、食塊の飲み込みをスムーズにします。

『ラ』は、舌を丸めて発音します。のどに食塊を送りこむために、滑らかな舌の動きを養成します。

 

 

勿論『パタカラ』だけをやっても効果的ですが、時間に余裕が有る場合は、一緒に身体全体での『嚥下体操』(上図参照)も付け加えますと、さらに効果的になります。

やり方は多少異なっても結構ですので、リラックスして無理しない範囲で、行ってもらえれば一番理想的かと思います。

『嚥下障害』は、そのままにしておきますといつかは『誤嚥性肺炎』を引き起こすことになります。『誤嚥』は一つ間違えば死亡事故にもつながりかねないことを良く認識し、健康なうちから『誤嚥予防』に努めていただきたいと思うのです。