「買ってください」

と選書してきた彼が

その少し前のある日の休み時間

ブッカーかけに勤しむ私のところに

友達と2人でやって来た

 

「図書の先生になるには

 どんな資格が必要ですか?」

と聞いて来たのは友達の方

ちょっと内気な委員長は

友達の発言に乗っかるように

目を輝かせて私を見つめてくる

 

無資格でも無試験で

採用されてしまうこともある

という事実を知る私だが

いたいけな子どもたちの

将来の夢を壊したくなくて

「図書館司書の資格は必要かなあ」

と言いながら考える

 

「うん、図書館司書の資格ね!」

とやる気を出す彼らに

「教員免許もあったほうがいいかも」

と、彼らと同じ夢を叶えるために

学生時代の私が取得した資格を話してみた

 

「よしっ!教員免許、取ろう!」

「うんっ!」

言うが早いかダッシュで去っていく2人

 

でも、教員免許なんて取ったら

きっと図書の先生なんて

落ち落ちやっていられなくなるだろう

そう思うと

とても後ろめたかったのだが

 

どんな資格でも、あったほうがいいし

いろんな経験をするのはとても大切なこと

彼らが就職するのは10年ほど先だから

今と同じとは限らない

そんな言い訳を心の中で呟いた

 

希望も込めて

彼らの背中を見送ったのだが

その彼らが

高校を卒業するであろうこの春

教員不足は深刻化し

司書の非正規化は加速している

 

中学校の入学式の後

友人たちと一緒に

学生服姿を見せに来てくれた彼らが

今も図書の先生に

憧れてくれていることを祈る