この数年間、感染症流行のこともあり、人が少ない所にしか行かないようにしていた。人があんまりいかない所にも、見るべきところはたくさんある。
□伊崎寺(姨倚耶山)
長命寺のご近所にある小さなお寺。湖面に突き出た棹の先から修行僧の方が琵琶湖に飛び込む行事が有名である。阿闍梨さんが住職をされていることでも知られる。2020年の寒い時期に訪れた。駐車場から20分ほど砂利で整えられた参道を歩くと、本堂と棹飛び堂からなる小さな伽藍が眼に入ってくる。湖からの風が寒くて強い。棹飛び堂から棹をのぞき込むと棹は予想以上に長く、湖面からの高さもかなりあった。棹の先まで落ちずにいくだけでも大変そうだ。すこしはなれた場所にある山門と昔の船着き場が階段でつながっている。長命寺と同様、以前は船でやってきて参拝していたようである。
□新薬師寺(日輪山)
奈良の春日大社近くにある新薬師寺。こちらは2021年冬の訪問。奈良にいくたびに行ってみたいリストに入っていたのだが、だいたい東大寺周辺だけで時間切れになってしまっていた。今回は満を持しての訪問。もともと静かなお寺ではあるが、冬の午後なので人影もなく、まさに「しーん」としていた。境内にはいるとなんだか別世界にきたような感じがする。国宝の本堂は簡素な外観だが、不思議な安定感がある。本尊の薬師如来像を囲む有名な十二神将像は、配置と照明がマッチして非常に見ごたえがあった。新薬師寺の建物は秋篠寺に似ているように思うのだが、秋篠寺は樹木に囲まれているのに対して、新薬師寺は樹木が少なく空間が広がっている印象をもった。その意味で新薬師寺の方が王朝的な雰囲気がした。
□笠置寺(鹿鷺山)
こちらは2020年秋の訪問。本尊の弥勒菩薩が摩崖仏という珍しい山寺である。京都、奈良、伊賀の中間にあり、後醍醐天皇が身を寄せたことでも知られる。自動車で笠置山の中腹までいけるが、その後少し石段をのぼらなければならない。立派な石垣に守られた門が見えてくると、山寺というよりも山城に来たような気分になる。実際、後醍醐天皇が一時期隠れたりして軍事的な意味も持っていたようである。山頂からは、木津川の流れと周囲の深い山並を一望にすることができる。山並が雲のようにずっとつながっていて、昔の人と同じ景色をみているような気になった。帰り道に麓で食べたキジ鍋がおいしかったこと、ナビでものすごく細い山道に誘導されて冷や汗をかいたのがよい思い出になった。
今回はここまで。それにしても、自動車がない時代に、歩いたり、船だったりで参拝していた昔の人はすごい。そして人々をその気にさせる神仏や自然もまたすごい。


